第十九話 聖女争奪戦 part5
いよいよ終結です。決着は如何に。
森の最奥、切り立った崖を背にした行き止まり。
エドワードは、ついに追い詰められた。
「ひ、ひぃ……! なぜだ、なぜ死なない! 呪いか? 貴様こそ悪魔ではないのか!」
満身創痍でありながら、鬼神のような迫力で近づいてくるアルフレッドに、エドワードは失禁しそうなほどの恐怖を感じていた。
「……悪魔でも構わない。彼女を救えるならな」
アルフレッドが地を蹴った。
エドワードは反射的に、縛り付けられたリリアの胸元へ剣を突き出そうとした。だが、その腕が動くより先に、アルフレッドの放った衝撃波がエドワードの両腕の骨を粉砕した。
グシャリ、という生々しい音。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
エドワードが地面を転げ回る。アルフレッドは冷徹に彼を見下ろし、その喉元に剣を突き立てた。
「殺さないで……とは言わないが、君には死よりも惨めな末路が似合っている。……お前の国はもう、お前を王子とは認めていない。民に石を投げられながら、一生を終えるがいい」
アルフレッドは、もはや虫の息のエドワードをラグナートの騎士たちに引き渡すと、すぐさまリリアの元へ駆け寄り、彼女を縛り付けていた鎖を素手で引きちぎった。
「……リリア! すまない、本当に……すまない……!」
鎖から解放されたリリアの体は、糸の切れた人形のようにアルフレッドの腕の中へ崩れ落ちた。
「アルフレッド、様……? ああ……本当、に……きてくださった……」
リリアの目から、堰を切ったように涙が溢れ出した。
エドワードに殴られた腫れ、首筋の切り傷、恐怖に震え続けた心。
それらすべてが、アルフレッドの温かい胸に触れた瞬間、一気に爆発した。
「……う、うわぁぁぁん……! 怖かった……っ、もう二度と会えないかと……!」
リリアは子供のように泣きじゃくり、アルフレッドの血に汚れた鎧に、必死ですがりついた。
「ここにいる。私はここにいるよ、リリア。もう誰にも、君の指一本触れさせない」
アルフレッドは彼女の頭を優しく抱き込み、その震えが止まるまで、何度も何度も「大丈夫だ」と囁き続けた。
やがて、安心しきったのか、あるいは激しい疲労に耐えかねたのか。リリアは泣きながら、彼の腕の中で深い、深い眠りに落ちていった。
夜が明け、森に柔らかな光が差し込む。
アルフレッドは眠るリリアを横抱きにすると、彼女の額にそっと、誓いの口づけを落とした。
「……帰ろう、私たちの国へ」
こうして、王国による聖女拉致事件は、アルフレッドの圧倒的な愛と怒りによって終結した。
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