第十七話 聖女争奪戦 part3
リリアーヌの運命はどうなるのでしょうか...
「……っ、やめて……ください……!」
冷たい床に倒れ込んだリリアの髪を、エドワードが乱暴に掴み上げる。
「うるさい! 偽物の分際で、この俺に口を出すなと言っただろう!」
エドワードの拳が、リリアの細い腹部を殴りつけた。
「カハッ……!」
酸素が肺から追い出され、リリアは激しく咳き込む。視界が火花を散らし、意識が遠のきそうになるが、エドワードの執拗な暴力は止まらない。
「お前のせいで、俺の国の評価はガタ落ちだ! 全てお前が完璧に隠れて魔力を出さなかったのが悪いんだろうが! さあ、今すぐ魔力を出せ! この杖を輝かせろ!」
エドワードは石化した聖女の杖をリリアの額に押し当てた。
「できないなら……その綺麗な顔を、二度と誰にも見せられないようにしてやる……!」
エドワードが腰の短剣を引き抜き、リリアの頬に刃を当てた、その時――。
――ドォォォォォン!!!
天幕が、爆風とともに消し飛んだ。
立ち込める土煙を切り裂いて現れたのは、全身から青白い雷光を放つ、一人の男。
「……リリアから、その手を離せと言ったはずだ」
地獄の底から響くような声。
そこにいたのは、鎧を返り血で赤く染め、瞳を怒りで深紅に変えたアルフレッドだった。
「ア……アルフレッド……様……」
リリアの掠れた声が届いた瞬間、アルフレッドの殺気が、周囲の空間を物理的に歪ませた。
「なっ、なんだ貴様は!? 護衛はどうした! 闇ギルドの連中は何をやっている!」
エドワードが狼狽えながら叫ぶが、答えはない。
アルフレッドの背後には、彼が単騎で突破してきた道筋に、動かなくなった王国兵や闇ギルドの者たちが累々と横たわっていた。
「貴様……よくも、私のリリアを……」
アルフレッドが一歩踏み出す。その足元から地面がクモの巣状に割れた。
「貴様の指を、腕を、その卑劣な魂ごと細切れにしても……私の怒りは収まらないだろうな」
「ひっ、来るな! 撃て! 魔法を放て!」
エドワードがミスティや周囲の魔導師たちに命令する。
放たれた闇の弾丸。だが、アルフレッドはそれを避けることさえせず、ただ剣を一閃させた。
シュンッ――!
魔法が霧散し、アルフレッドは瞬時にエドワードの懐に潜り込む。
「がはっ……!?」
アルフレッドの剣の柄がエドワードの腹部にめり込み、そのまま彼を数十メートル後方へと吹き飛ばした。
アルフレッドは、吹き飛んだエドワードには目もくれず、すぐにリリアの元へ駆け寄り、彼女を抱き起こした。
「……リリア。すまない。遅くなった……本当に、すまない」
その声は、先ほどまでの「鬼」のものとは思えないほど、震えていた。
彼はリリアの頬にある小さな傷跡を見つけると、悲痛な表情でそこに唇を寄せ、自身の魔力を注ぎ込んで治癒していく。
「……アルフレッド、様……信じて、いました……」
リリアは、彼の温かな胸の中で、ようやく本当の眠りに落ちるように意識を失った。
アルフレッドは、愛おしそうに彼女を抱きしめた後、ゆっくりと顔を上げた。
その視線の先には、這いつくばって逃げようとするエドワードと、震え上がるミスティがいた。
「……ここから先は、掃除の時間だ。ラグナートの騎士たちよ!」
「はっ!!」
周囲を取り囲んでいたラグナートの精鋭たちが、一斉に唱和する。
「王国(ゴミ溜め)の者たちを、一匹残らず制圧しろ。……抵抗する者は、殺して構わん」
聖女奪還を巡る死闘は、今、ラグナートの圧倒的な逆襲へと転じた。
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