第十五話 聖女争奪戦 part1
ついに聖女をかけた戦いが始まりました!
闇ギルドの襲撃から数日。王宮の空気は、肌を刺すような緊張感に包まれていた。
アルフレッド様は、もはや私を一歩も外へ出そうとはしなかった。執務室、食堂、さらには移動の間も、彼は私の手を決して離さない。その体温だけが、私の唯一の救いだった。
だが、その平穏を切り裂くように、王宮の正門へと「使者」が訪れた。
それは隣国の使節ではなく、エドワード殿下が直属で動かしている、王国の『黒鷲騎士団』だった。
「――我が国の第一聖女、リリアーヌ様を不当に拘束しているラグナート王国に対し、身柄の即時返還を要求する!」
王宮の広間に、高圧的な要求が響き渡る。
アルフレッド様は、私を自分の背後に隠すように立たせ、冷淡な笑みを浮かべて返した。
「不当な拘束? 笑わせるな。彼女は自らの意思でここにいる。君たちの国の『偽聖女』という不当な評価から、私が保護したのだ」
「問答無用! 返還に応じぬというのであれば、こちらは『聖女奪還』という大義名分のもと、実力行使も辞さない構えだ!」
使者が合図を送った瞬間、王宮の周囲に潜伏していた数百の影が動いた。
それは騎士とは名ばかりの、暗殺術と闇魔法に長けた王国最悪の部隊。さらにはエドワードが巨額の資金で雇い入れた、大陸中の闇ギルドの混成部隊だった。
「……リリア、私の側から離れるな」
アルフレッド様が、腰の蒼い剣を抜く。
「ガウェイン! 正門を封鎖しろ! 一歩も入れるな!」
「はっ! 全員、女神様をお守りしろ!」
ガギィィィン!!
凄まじい金属音が響き、乱入してきた王国の暗殺騎士と、ラグナートの精鋭騎士たちが衝突した。
王宮は瞬く間に、血と火花が散る戦場へと変貌した。
◇
戦火の中、私はアルフレッド様に守られながら廊下を駆けていた。
だが、前方から現れた人影に、私は息を呑んだ。
「おやおや、お姉様。こんな男の影に隠れて、情けないですわねぇ」
そこにいたのは、豪華なドレスの裾を血で汚しながら、不気味に笑うミスティだった。彼女の傍らには、闇ギルドの中でも指折りの術師たちが、どす黒い魔力を練りながら控えている。
「ミスティ……! あなた、どうしてここに……」
「殿下からの伝言ですわ。『お前が戻らないなら、この美しい王宮を灰にする』と。さあ、大人しくこちらへ来てくださいな。そうすれば、この王子様の命だけは助けてあげてもいいですわよ?」
「断る」
アルフレッド様が、ミスティの言葉を冷たく一蹴した。
「君のような醜い心を持つ女に、彼女は一歩も渡さない」
「……ふん、強気ですわね。殺しちゃいなさい!」
ミスティの号令と共に、闇術師たちが一斉に影の刃を放つ。
アルフレッド様は私を抱き寄せながら、剣一振りでその魔力を切り裂いた。
「リリア、目を閉じていろ」
アルフレッド様の低い声が、私の耳元で響く。
激しさを増す、騎士と闇ギルド、そして王子たちのプライドを懸けた死闘。
聖女リリアを奪い合う、戦いが今、始まった。
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