第十三話 闇ギルドの刺客
リリアに魔の手が忍び寄ります。
襲撃事件を受けて、アルフレッド様は王宮内の侍女や使用人、さらには文官の家系までを徹底的に再調査させた。
しかし、王国側の魔の手は、正面からの力押しではなく、もっと陰湿な形で忍び寄っていた。
「リリア。当面の間、君の食事は私と同じもの、あるいは私の目の前で用意させたもの以外は口にしないでくれ」
アルフレッド様の顔はかつてないほど険しかった。
「……そこまで、ひどい状況なのですか?」
「ああ。昨夜、君の部屋に運ばれようとしていたお茶から、遅効性の麻痺毒が検出された。……死なせるためではない。抵抗力を奪い、君を『運び出す』ための毒だ」
私は背筋が凍るのを感じた。前の王国は、私を「一人の人間」としてではなく、いつでも取り替えのきく、しかし手元に置くべき「高価な道具」としか見ていない。
「……私のために、この国の平穏が壊れてしまうのが怖いです」
「馬鹿を言うな。君こそが、この国の平穏そのものだ」
アルフレッド様は私の手を取り、その指先にそっと触れた。
「スパイも、暗殺者も、拉致者も……私の国に足を踏み入れたことを後悔させてやる」
◇
一方、元の王国。
エドワード王子は、執務室に招き入れた「闇ギルド」の男たちに、金貨の詰まった袋を投げ与えていた。
「いいか。隣国と戦争をする必要はない。ただ、あの女を連れ戻せばいいのだ。生きてさえいれば、手足の骨の一本や二本、折れていても構わん」
エドワードの言葉に、隣にいたミスティもクスクスと笑う。
「そうですわね。お姉様は大人しく地下室でお祈りだけしていればいいんですもの。……ああ、でもお顔に傷がついたら、身代わりをさせる時に困りますわぁ」
エドワードは歪んだ笑みを浮かべ、机に広げた隣国の地図をナイフで突き刺した。
「リリアーヌは、自分が自由になったと勘違いしているようだが……。あいつの首輪は、一生俺が握っているのだということを思い出させてやる」
エドワードが送り込んだのは、腕利きの拉致専門家たち。彼らは「影魔法」を使い、音もなく、光すら遮断して対象を奪い去るという。
◇
その夜、リリアは不思議な胸騒ぎで目を覚ました。
アルフレッド様の配慮で、彼の寝室のすぐ隣の部屋を与えられていたが、窓の外の影が、不自然に揺れた気がしたのだ。
(……誰か、いるの?)
声を上げようとした瞬間、部屋の明かりがすべて消え、足元からドロリとした漆黒の影が這い上がってきた。
「なっ……!?」
「静かにしていただこう、女神様。……あんたの『飼い主』がお待ちだ」
闇の中から伸びてきた無数の手が、リリアの自由を奪おうとまとわりつく。v
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