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無能でいろと言ったのはあなたでしょう? 〜「偽聖女」と追放された私ですが、隣国で女神として幸せをつかみます!〜  作者: 甘い肉うどん
第一章 隣国で女神として幸せをつかみます!

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第十二話 王国の追跡

王国の陰謀とアルフレッドがついに対峙します。

ラグナート王国の王都は、近々行われる「女神降臨祭」の準備で沸き立っていた。

 主役はもちろん、リリアだ。

 アルフレッド様は、私が「侍女」という低い身分のままでいることをよしとせず、この祭りを機に、私を正式な『国聖女』……あるいは、それ以上の地位に据えようと考えてくださっているらしい。


「リリア、今日は祭りの衣装合わせだ。職人たちが待っている。あまり無理をせず、楽しんでおいで」

「はい、アルフレッド様。……あ、あの、殿下も一緒には……」

「ああ、行きたいのは山々だが、あいにく他国からの使者が来ていてね。……すぐに追いかけるから、先に行っていなさい」


アルフレッド様は名残惜しそうに私の指先に口づけをして、会議室へと向かわれた。

 私は護衛の騎士たち数人を伴い、王宮内にある別館へと足を運んだ。



別館へと続く、静かな渡り廊下。

 ふと、背筋に寒いものが走った。


「……リリア様、どうかされましたか?」

 護衛の騎士が異変に気づき、声をかける。

「いえ……少し、懐かしいような、嫌な気配がした気がして……」


それは、前の王国で私を縛り付けていた、あのドロドロとした執着の匂いだった。

 その直後。

 廊下の天井から、数人の黒装束の男たちが音もなく舞い降りた。


「なっ、何奴だ!?」

 騎士たちが即座に剣を抜く。だが、黒装束の男たちは迷いなく、懐から煙玉を取り出し、床へ叩きつけた。


「ゴホッ、ゴホッ……! 聖女様、後ろへ!」

 視界が真っ白な煙に覆われる。その混乱の中で、私の耳元に、忌々しい声が直接届いた。


「――見つけたぞ、リリアーヌ様。いや、今は『女神様』だったか?」


ゾッとした。その声は、エドワード殿下の側近であり、私を「便利な魔力タンク」と呼んで蔑んでいた騎士のものだった。

「……あなたたちは……どうしてここに」

「殿下がお怒りだ。無能を演じて逃げ出し、隣国の王子に媚を売るとはな。……お前の帰る場所は、あの中のない地下牢だけだ」


強引に腕を掴まれ、引きずられそうになる。

 前の私なら、逆らうこともできずに絶望していただろう。

 けれど、今の私は違う。

 ここで守ってくれた人々、信じてくれたアルフレッド様の顔が脳裏をよぎる。


「……離して。私はもう、あなたの国の所有物ではありません!」

 私は全身の聖力を一気に解放した。

 眩い衝撃波が円状に広がり、私を掴んでいた男たちの腕を弾き飛ばす。


「ぐわぁぁっ!? な、なんだこの魔力は……!」

「無能……? 嘘だ、これほどの出力、以前の十倍以上……!」


男たちが狼狽えた瞬間、廊下の奥から爆発的な殺気が押し寄せた。


「――私のリリアから、その汚い手を離せと言ったはずだ」


床を砕くほどの勢いで現れたのは、銀髪を逆立て、瞳を怒りで燃え上がらせたアルフレッド様だった。

 彼の持つ聖剣が、一振りで煙を切り裂き、刺客の一人を壁まで吹き飛ばす。


「アルフレッド様……!」

 彼は私を片腕で抱き寄せ、冷徹なまでの眼差しで残りの刺客を見据えた。


「エドワードの飼い犬共か。……命惜しくば、あるじに伝えておけ。これ以上リリアに触れるなら、お前の国ごと踏み潰してやるとな」


アルフレッド様の放つ威圧感に、刺客たちは腰を抜かし、逃げるように闇へと消えていった。

 静寂が戻った廊下で、アルフレッド様はゆっくりと私の肩を掴み、その震えを止めるように抱きしめた。


「怖かっただろう、リリア。……すまない、私が目を離したばかりに」

「……いいえ、大丈夫です。殿下が、来てくださったから」


私は彼の胸に顔を埋めながら、確信していた。

 もう、あの地獄には戻らない。戻らせない。

 けれど、王国の追跡が始まったことで、私の平穏な日々は終わりを告げようとしていた。

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