表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能でいろと言ったのはあなたでしょう? 〜「偽聖女」と追放された私ですが、隣国で女神として幸せをつかみます!〜  作者: 甘い肉うどん
第一章 隣国で女神として幸せをつかみます!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/29

第十話 王妃教育

ご要望、こ意見ありましたら気軽に感想で教えてください。

アルザス地方から帰還したリリアを待っていたのは、以前とは比較にならないほどの厚遇だった。

 侍女という名目こそ変わらないが、与えられた部屋は王宮の最上階に近い日当たりの良い一室になり、身につける制服も上質なシルクが使われた特注品に変わっている。


「……あの、アルフレッド様。いくらなんでも、この部屋は広すぎますわ。私はただの侍女なのに、なぜ宝石付きの髪飾りまで……」

「リリア、それは君の働きに対する正当な対価だ。それに、その髪飾りは魔力伝導率がいい。君の力を安定させるための魔道具としての側面もあるんだ。……似合っているよ」


そう言って、アルフレッド様は当然のように私の髪に指を通し、飾りを整えてくれる。

 距離が近い。吐息が触れそうな距離で、彼の蒼い瞳がじっと私を見つめる。

 心臓がうるさいけれど、彼はあくまで「有能な部下を労っている」という落ち着いた態度なので、私が意識しすぎているだけなのだと自分に言い聞かせた。



その日の昼食時、食堂へ向かう途中で私は文官たちの話し声を耳にした。


「聞いたか? アルフレッド殿下が、執務室に他人が入るのを極端に嫌うようになったらしい」

「ああ。特に、女性の文官が資料を届けに行くと、入り口で追い返されるんだとか。でも、リリア嬢だけは常に中にいるんだろう?」

「殿下は『リリアがいなければ仕事にならない』と公言されているからな。……あれはもう、侍女というより、実質的な王妃教育でも始めているんじゃないか?」


「……っ!」

 私は壁の陰で顔を赤くして立ち尽くした。

 王妃教育? そんな、滅相もない。私はただ、殿下の仕事が少しでも早く終わるように、隣で書類を整理しているだけだ。

 でも、確かに最近のアルフレッド様は、私が少し席を外すだけで「どこへ行くんだ?」と寂しそうな顔をしたり、戻ってくると安堵したように私の手を握ったりする。


(きっと、私の『事務能力』を頼りにしてくださっているだけよね。変な期待をしたら、また前の時みたいに傷つくわ……)


前の王国での「偽物」という言葉が、時折、私の心をチクリと刺す。

 だから私は、もっと頑張らなければいけない。彼に必要とされるために、魔力も、知恵も、すべてを注ごうと心に決めていた。



その日の午後。執務室に戻ると、アルフレッド様が珍しく机に突っ伏して眠っていた。

 連日の遠征と、溜まっていた政務が重なったせいだろう。

 私は物音を立てないように近づき、彼の肩にそっとブランケットを掛けようとした。


「……ん……リリア……?」

 寝ぼけた声で、アルフレッド様が私の手首を掴んだ。

「あ、申し訳ありません。起こしてしまいましたか?」

「いや……行かないでくれ……ここに、いてくれ……」


彼は私の手を自分の頬に寄せ、そのまま再び目を閉じた。

 彼の熱い体温が、手のひらを通じて伝わってくる。

「アルフレッド、様……」


寝顔は、普段の「冷徹な王子」の面影はなく、どこか幼い子供のような無防備さがあった。

 私は彼の手を振り払うことができず、そのまま彼が目を覚ますまでの間、赤くなった顔を伏せて隣に座り続けた。


彼が私に向ける感情が、信頼なのか、それとも別の何かなのか。

 答えを出すには、私はまだ、自分に自信が持てずにいた。



一方、元の王国。

「……リリアーヌが、隣国で聖女として崇められているだと!?」

 報告を受けたエドワード王子は、持っていたワイングラスを床に叩きつけた。

 隣国ラグナートから流れてきた「アルザスの奇跡」の噂。そこに描かれていた聖女の特徴は、あまりにもリリアーヌそのものだった。


「馬鹿な……! あいつは『無能』だ! 俺がそう決めたんだ! 本物の聖女はこのミスティだというのに……なぜミスティには大地を癒やすことができない!」


「ひどいわ、殿下ぁ! 私、頑張ってるのに!」

 ミスティが泣きべそをかくが、その手元にあるはずの聖女の杖は、すでに石のように変色し、輝きを失っていた。


「……あいつを、連れ戻せ。手段は選ぶな。あいつは我が国の『所有物』だ。隣国などに渡してなるものか!」


歪んだ独占欲と焦りが、エドワードを狂わせ始めていた。

 リリアの居場所が暴かれるまで、あと、わずか。

よければ評価、ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ