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トラブルマグネットな悪役令嬢  作者: 如月いさみ


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8/21

第8話 当人同士の歓談? でございましょうか

 爽やかな風が流れる正午。

 私はラピスお嬢さまとアレキサンダー第二王子との穏やかな? 歓談を庭の片隅で聞いております。


 もう少しすればロドリゲス公爵と公爵夫人と4人での会食となります。それまでの間の言わば『当人同士のお見合いの場』と言う状況でしょうか。


 風に庭園の木々や花はユラユラと揺れ白銀のお嬢さまの髪も眩く輝いております。


「松田の言うことは分かった。つまり、俺たちは元々この世界のこの身体の持ち主で何者かの魔法で魂だけ地球に飛ばされそれぞれの身体に入っていたってことだな?」


「そう言うことだ。誰が何の目的でそうしたのかは分からない。一応、わかる範囲だが入れ替わっていた人間のリストは作っている」


「そうか。ならば、そこから捜査だな。ただ、俺の方は今ちょっとした問題を抱えていてな。このロドリゲス領地内でのことだ」


「何だ?」


「魔力のある子供に王都の魔法学校に入れてやると嘘をついて誘拐しているっていう詐欺と誘拐と……俺は人身売買でもあると思っている」


 ……お見合いの場での歓談とは程遠いお話になっております。

 しかし、お二人がそれで良いのなら、私、ナナリ・ブラウンはもうそれでよいと思っております。


 「確かに放置できないな。それも詳しく聞きたいが」


 そう言ってアレキサンダー第二王子がすっと視線を館の方へと向けられました。

 ああ、会食のお時間でございますね。

 従者が姿を見せてお二人の間で一礼しました。


「会食のご準備が整いました」


 お嬢さまとアレキサンダー第二王子はスッと立ち上がりました。その立ち上がり方が良く似ております。お勇ましいというか。


 お嬢さまとアレキサンダー第二王子が従者の案内で会食を行うダイニングへ向かうのに私も付き添いました。給仕担当はお庭のテーブルの後片付けがございますが、私はお嬢さま付きでございますので会食会場で控えるというのが仕事でございます。


 ロドリゲス公爵、ご安心ください。ラピスお嬢さまとアレキサンダー第二王子のお見合いは上手く行っております。

 少々違う方向へ向かっておりますが、と私は笑みを浮かべてダイニングに入ると壁に沿うように立ちました。


 お嬢さまとアレキサンダー第二王子は給仕担当の案内を受けてそれぞれの席に座られました。

 公爵、公爵夫人。そして向かい合うようにアレキサンダー第二王子とラピスお嬢さま。

 そういう席の並びとなっております。


 食事は粛々と始まり、落ち着いた静けさの中で終わりました。

 直後にアレキサンダー第二王子が唇を開かれました。


「ロドリゲス公爵、ラピス嬢は素晴らしい見識の持ち主で警察という治安を守る憲兵隊についても興味を持ちました。これからもラピス嬢とお会いしたいと思っております」


 公爵、顎が落ちております。落ち着ていください!!


「そ、それ、それは公爵家としても嬉しく思います。ラピスは少々言動に夢想が入っておりますが、考え方は領地領民の安寧を思い何処へ出しても恥ずかしくないと思っております」


 直ぐに立ち直られたようで安心しました。

 ラピスお嬢さまも笑みを浮かべられております。そうでしょう。お嬢さまのいう『鳥飼翔』の『相棒』とかいうご関係のお方のようなので色々安心されておられるのでしょう。

 

 私はその辺り奇々怪々で良く分かりませんが、お嬢さまが嬉しいことが何よりもうれしゅうございます。


 お嬢さまも笑みを浮かべこれからの後押しをされました。

「それでお父さま、アレキサンダー王子にこれから警察隊を見ていただこうと思います」


「おぉぉおおお、お、お父さまと……」


 TPOを弁えた見事な切り替えでございます。お嬢さま! 公爵、ここは落ち着いてください。


「わかった、お前の才を見ていただきなさい」

「お二人が直ぐに仲睦まじくなるなんて、すごく嬉しいことですわ」


 お嬢さまは緩やかに立ち上がり丁寧に礼をされてアレキサンダー第二王子と共に館を出られました。

 廊下でフローラお嬢さまと会われてご挨拶とお話をされましたが……兄二人に可愛がられる妹に見えるという奇々怪々な情景が私の目に映りました。


 お二人が館を出て馬車へ乗り込もうとされた時に通信石から緊急連絡が入りました。


 連絡を入れてきたのは南地区を巡回していたチャール・アンダーソン隊長でございました。


「ベイリー伯爵の船が停泊しラピス様とロドリゲス公爵のご指示通りに荷物の検査を行うと申したところ船員が騒ぎ始めました。現在、捕えているのですが船に乗り込めない術が掛かっているようで」


 つまり乗り込めないという事でございましょう。これは厄介なことになりました。


 お嬢さまは私を見られました。

「ナナリは親父にこのことを直ぐに連絡するように、俺と松田は直ぐに現地に向かう」

「急ごう、鳥飼」

「ああ」


 もう隠すことを忘れておられる二人でございます。

 私は踵を返して大急ぎで公爵さまの執務室へと向かいました。


 何やら、イヤな予感がいたします。

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