第6話 本格的……警察機構ではなく令嬢教育のはじまり
お久しぶりでございます。
ラピス・ローズ・ロドリゲスお嬢さま付き侍女のリリナ・ブラウンでございます。
側におらずお勤めをしていなかったと思われる方がいるかもしれませんが、侍女としてのお勤めをきっちりこなしておりました。はい、ストーリーの流れ上、私の視点ではなかったというだけの事でございます。
ええ。
お勤めを果たさなければクビでございます。
という事で、もとい。
ロドリゲス公爵さまの指示がありラピスお嬢さまは警察隊の運用と共に淑女教育を受けなければならなくなりました。
その為、警察隊の指示はラピスお嬢さまのお部屋で5小隊に増えた小隊の隊長が早朝に集まり会議となりました。
ラピスお嬢さまの周りに5人の騎士が輪になって集っております。それも警察機構立ち上げ式から見慣れたモノでございます。
但し今回は……白銀の長い髪を今日は丁寧に結い上げて華やかなドレス姿での会議でございます。この会議が終わり朝食後に魔法の勉強と礼儀作法の勉強が待っているからでございます。
隊長たちも日頃にない美しいお嬢さまのご様子に全員が顔を僅かに紅潮させておられます。まるで王女に忠誠を誓う騎士団のような様相でございます。
しかし、見とれてばかりおらずしっかりなさってくださいませ!
お嬢さまはさほど気にしている様子はありません。
「ラサールは今日からシャールの里の方の捜査に行くんだったな」
「はい、シャールを同行させてボブとトムの行方も調べる予定でございます」
お嬢さまはそれに頷くと
「暫く会うことは出来ないが通信石での報告は忘れないようにしてくれ。それと必ず聞いた話は録音……いや、記録石に残しておくように、証拠となるからな」
と指示を出されました。
まるで王都の憲兵長の様でございます。
本当に凛凛しゅうございます。
お嬢さまはアーサー・ラサールから他の4小隊の隊長に目を向けられ何時ものように指示を出されました。
「今日はウィルソンの隊が東区画でディヴィスが西でアンダーソンが南でジョンソンが北だったな。必ず二人一組で回ること。また、指定の区域の住人には顔を見せて話を聞くように」
……何かあれば即座に通信石で報告をするように……
それに全員が「「「「はい!」」」」と強い意志を込めた声で返事をされました。
同時にスクッと立ち上がり一礼をされて立ち去られました。
ロドリゲス公爵領の警察隊は今日も正常運用でございます。
お嬢さまも隊長の皆様が立ち去ると食堂へ向かわれました。
かつてはお一人でのお食事が多かったのですが、今は公爵さまにエリザベートさま、そして、フローラさまの4人でお食事を取るようになりました。
フローラさまはラピスお嬢さまがダイニングに入られるとパァと明るく笑みを浮かべられます。
「ラピスお姉さま、今日はとても綺麗なドレスで良く似合ってます!」
私も皆様のお邪魔にならないように壁に沿うように立ちながら「そうでございましょう」と心で頷きました。
「そうか? フローラの方が可愛いと思うけどな。フローラは何を着ても可愛いな」
整った容貌に優しく綺麗な笑みを浮かべラピスお嬢さまは何時もそうやってフローラさまを褒められます。本当に仲睦まじい姿でございます。
見ているだけで微笑ましい。ですが、背を張り黙って立っておかなければなりません。
フローラさまは金糸の髪に白い肌をして瞳はクリッと丸く空の青色をしております。とても愛らしいお嬢さまでございます。
私が僭越ながら表現させていただくとすればラピスさまは女神、フローラさまは妖精と言った具合でございましょうか。
どちらもお美しい。
以前は暗い表情で悩み多き後妻夫人だったエリザベートさまも最近は富みに笑みが多くなられました。
「ああ、二人があんなに仲良く……涙が……」という具合に時々微笑まれながら涙をハンカチで拭っておられるのを私はそっと見ておりました。
しかし。
だが、しかし。
全てがオールOKではございません。
一人深い悩みの縁に立っているのが食事後に淑女教育をなさる教育担当のテイラー夫人でございます。魔法の勉強の方は向上心が旺盛で何でも熟し評価が高いのでございますが……ああ、今日もラピスお嬢さまのお部屋でテイラー夫人のお声が響いております。
「ラピスお嬢さま! 足は揃えて!! ドレスだから見えないと思ってはなりません!!」
「あー、はい」
「あーは必要ございません!!」
「はい!」
警察隊への指示。勉強。そして、家族や領地の人々との交流は正に満点なのに……淑女教育だけは赤点の様でございます。
頭に本を乗せて歩くのに10歩で本が落ちております。座り方はドカッと勢いよく。淑やかに座らなければならないのに……ドカッでございます。
テイラー夫人の嘆きは私にはよくわかります。
ですが私は口を出しません。
じっと見守るだけでございます。
「淑女難しー!」
お嬢さま、ファイトでございます。
そんなまだ淑女としてはスタート地点にすら立っていないお嬢さまに一人の男性をロドリゲス公爵が連れてこられたのでございます。
公爵家の娘でございます。
所謂、生まれる前からの許嫁というものがちゃんと存在するのでございます。
ラピスお嬢さまの許嫁はフェッツランド王国の第二王子アレクサンダー・フェリックス・フェッツランドさまでございます。
公爵家の娘ですので当然と言えば当然でございます。
その実、この教育は許嫁の王子との対面があったからでございます。




