決戦 3
瘴気が城から溢れていた。
チャール・アンダーソンは馬を操りつつ
「大丈夫だろうか」
と心配したが、ラピスの聖なる魔力で瘴気が避けていることに気付くと
「ラピス様、廊下も馬で駆け抜けます」
と告げた。
ラピスは頷くと
「ああ、非常事態だ。かまわん」
と答えた。
まだ瘴気だけで魔法陣が発動している波動は感じない。
何故か?
「何を考えている。三嶋」
そう呟いた。
松田貢だったアレキサンダー第二王子の通信石から聞こえてきた内容からキャンベル公爵令嬢が王城を乗っ取っていることが分かった。
フィオレンティーナ・ザンドラ・キャンベル。
だが、皮肉なことに彼女は地球で東京都庁を破壊し多くの被害を出した主犯の三島慎也であった。
最後に奴を逮捕した。
その直後に死んで自分はラピス・ローズ・ロドリゲスに戻ったのだが。
その因縁か。
「こんな形でまた再会するとはな」
ラピスは真っ直ぐ見つめ玉座の間の前に来ると馬から降り扉を押し開けて中へと入った。
そこにアレキサンダーとフィオレンティーナが向かい合うように立っていた。
「漸く来てくれましたね。かなり待たされましたよ。あのクズのような父親をいつまで騙せるか心配しておりました」
それにラピスもアレキサンダーも驚いて目を見開いた。
彼女は正に聖女と言わんばかりの笑みを浮かべ
「私はあの男の欲の為に三島慎也に転生しました。ああ、そうそう……松田巡査と鳥飼探偵もね」
と言い
「三嶋の両親は善良でした。フィオレンティーナだったらきっと得ることが出来なかった愛と正義を教えてくれました。その死で私に報復と憎しみも教えてくれましたが」
と告げた。
「だから、フィオレンティーナとしての私の憎悪の相手はこの国の国民でも貴方がたでもない。そう、私は元々正義や悪と言う概念が何処かおかしいのでしょう。私の大切なモノを害するものが悪で、害しないモノは悪でないという考え方しかないようです」
ラピスは笑むと
「実にシンプルだな。確かにそれは間違いない。だが、俺は警察官だ。国民を法を守ることが役割だと思っている! 法を蔑ろにすればそれはもう弱肉強食の世界だ。どんなに綺麗な御託を並べてもな」
と告げた。
「もちろん、法は万全じゃない。だが、法を守りながら過ちは修正していけばいい。それが人類の知恵って奴だと俺は思っている」
そう言ってラピスは足を進めた。
確信があった。
あの最期の時に言葉を交わしたからこそ確信があった。
「今は、協力者だ。力になってくれ。フィオレンティーナ・サンドラ・キャンベル。恐らく黒魔法を使って王宮を破壊し何か恐ろしいことをしようとしていると俺は考えている。王宮破壊はその最初の一手だと」
アレキサンダーもチャール・アンダーソンも息を飲み立ち尽くした。
その時、ナナリ・ブラウンとアーサー・ラサールが扉を開けて立ち向かってくる正教会の番兵たちと戦い始めたのである。
サティス・ロバート・キャンベルがしびれを切らしたという事である。




