決戦 1
サティス・ロバート・キャンベルは正教会の大聖堂の地下で静かな笑みを浮かべていた。
「全く、ロドリゲスが余計なことをしなければ間違いなく王政は崩れ、この正教会が全ての頂点に立てたのに……だが、まあいいだろう。王宮を破壊し貴族どもが慌てふためいている内にこの大聖堂に魔王が復活する」
隣に立つアベル・ジェームズ・ベイリーは厳かに跪き
「漸くでございますね。我々の永遠なる栄光がすぐそこに」
と告げた。
「それで、王宮の方は」
サティス・ロバート・キャンベルは頷くと大聖堂の真下の地下空間に描いた魔王の召喚魔法陣を前に唇を開いた。
「我が娘のフィオレンティーナが魔法陣を発動させるために行っておる。アレが生まれた時はまさか聖魔力を持っていたとは思わなかったが反対にそれが良かったようだ。アレも役目が終わったらこの魔王召喚の起点として役に立ってもらう」
そう言って彼らを取り巻くように集まる正教会の会員と魔力注入の為に集められた子供たちが黒魔法陣を描かれながら立っていた。
子供たちの多くは泣きながら震えていた。
まさに地獄絵図であった。
つまりは、後手になっているという事でございました。
私、ナナリ・ブラウンはラピスお嬢さまたちと一緒にその危機的状況をアレキサンダー第二王子の通信石からの連絡で知り、大急ぎで準備を整えて王宮へと向かいました。
チャール・アンダーソン隊とラピスお嬢さまとメアリ・ネーベルトさまと馬車で急行でございます。
ラピスお嬢さまは両手を組み合わせ
「間に合え。今度こそ、間に合ってくれ」
と祈っております。
私はそっとお嬢さまの手を掴みました。
「大丈夫でございます。絶対に間に合います」
それにお嬢さまは笑みを浮かべると
「ナナリ、そうだな。絶対に子供たちも王宮も助けてみせる」
と仰いました。
メアリ・ネーベルトさまは何時になく厳しい表情でラピスお嬢さまを見られ
「ラピス様、正直に言ってお嬢さまの現在のお力では対処できないかも知れません。ですが、お嬢さまのお力は本来は底が見えないほどのモノでございました」
そう仰られ
「この魔法陣はわが師である大魔導士ローランからいただいたモノでございます。これを利用すれば黒魔法を破壊することが出来ます。但し、かなりの聖魔力を必要とするので使えるのは一度だけだと思います」
と魔法陣を描いた紙を渡されました。
「下手をすればラピスさまのお命に関わりますからご注意ください」
そう魔法陣を発動させるには魔力が必要でございます。そして、その魔力を放出し過ぎた場合に意識不明、下手をすれば死に至ってしまうのでございます。
ラピスお嬢さまは微笑み
「わかった、メアリ・ネーベルト先生。感謝する」
と紙を受け取り胸元へと仕舞われました。
そして、視線の先の王都の中心では黒い霧が城を覆い人々が門から逃げようとワラワラとあふれ出しておりました。




