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とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


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とこしえの森の日常04

みんなと楽しくおしゃべりをしながら青空の下でお弁当を食べる。

ゴーシュはその大きな口で器用に卵焼きをつまみ、チェスカはいかにも猫らしく「はぐはぐ」と卵焼きを頬張っていた。

シータは美味しそうにお米をついばみ、リタはゆっくり味わうようにしておにぎりを口にする。

神獣のみんなに食事は必要無いものらしいが、マスターがこの地にやってきたのをきっかけに人間の生活に興味を持ち、食べてみる気になったのだそだ。

そんな話を思い出しながら、

「戻ってきたらもっと豪勢な料理をいっタルト作ってくるから、その時はみんなでピクニックをしましょう」

と提案してみた。

すると、まっさきにリタが、

「あら。いいわね。人間の世界のお話もたくさん聞きたいし、またユリエラが得意だったあのタルトが食べたいわ」

と師匠が一番得意にしていたクルミのタルトが食べたいというリクエストを出してくる。

それに私が、

「ああ。クルミのタルトね。わかったわ。でも、私はマスターみたいに美味しく焼けないからそこは勘弁してね」

と少し苦笑いしながらそう答えると、リタは優しく微笑んで、

「うふふ。大丈夫。ナッシュが作ったタルトも大好きよ」

と言ってくれた。

その言葉に続いてチェスカが、

「うん。あれって中のクルミがすっごく甘くしてあるから私も大好き!」

と私に期待するような眼差しを送ってくる。

私はそんな眼差しを笑顔で受け止めつつ、

「ありがとう。じゃぁ、とびっきり美味しいタルトになるように美味しいミルクやバターをたっぷり仕入れてこないとね」

と、やる気のこもった返事をした。

「えへへ。楽しみ!」

とチェスカが笑う。

その明るい声にみんなも微笑み、楽しいお弁当の時間は平和に過ぎていった。


食後。

私は満腹になり私の膝の上でゴロンとなったチッチを撫でてやりながらお茶を飲む。

みんなもそれぞれに満足げな表情でゆったりと体を休めていた。

そんな中、ゴーシュが、

「気を付けて行ってこいよ」

と気づかわしげな言葉を掛けてくる。

私は微笑んで、

「ええ。大丈夫よ」

と答えるがゴーシュは、まだ心配そうな表情で、

「聞けば人間の世界というのはある意味恐ろしいところだ。武力だけではどうにもならないことがたくさんあるのだろう? そういう事態に巻き込まれてしまったらすぐに帰ってこい」

と言ってきてくれた。

「ありがとう。そうね。人間が嫌になったらすぐに帰ってくるわ」

と少し冗談めかして答える私にゴーシュは、

「人間とは不思議な生き物だな」

と言って苦笑いを浮かべる。

そんな言葉に私も、なんとも言えない感じで、

「ええ。本当に不思議な生き物だわ」

と苦笑いを浮かべながらそう返した。

やがて、太陽がやや西に傾きかけたのを見て、

「じゃあ、帰るわね。戻ってきたらすぐに顔を出すから楽しみにしていて」

と声を掛け、みんなとそれぞれに抱擁を交わす。

チッチも名残惜しそうにみんなと挨拶を交わしていた。

再びチッチを胸元に入れ、杖に跨る。

「じゃあ。またね!」

と、なるべく明るく声を掛け、私は再び空へと舞い上がっていった。


夕暮れの中を飛び、無事家に辿り着く。

私の胸の中ですっかり眠ってしまっていたチッチを起こさないようにそっと抱き上げ、ベッドに寝かせてあげると、私は防具を外し楽な格好に着替えた。

軽くお茶を飲んでひと息吐き、手早く夕食の支度を整える。

献立は少し悩んだが、ちょっとがっつりした物が食べたい気分だったので少し厚めに切ったステーキとたっぷりのサラダを作った。

肉が焼き上がり、食卓にサラダを置いているところへチッチがやってくる。

「チチッ!」

という声はいつも通り元気だ。

きっと、たくさん寝て元気を取り戻したんだろう。

そんなチッチに微笑みながら、

「おはよう」

と冗談を言うと、チッチが、

「チチッ!」

と、おかしそうな声を上げて、今日も楽しい夕食の時間が始まった。


たっぷりのお肉でいっぱいになったお腹を軽くさすりながら食後のお茶を飲む。

(いくらなんでも量が多過ぎたかしら?)

と多少反省しつつ、

(そう言えば、私って食べ過ぎたらやっぱり太るのかしら? ていうか、そもそも私の体の中ってどうなってるの?)

と自分ではどうにも確認できない自分の体の不思議を思い少し思案気な顔になってしまった。

するとそれを見ていたチッチが、

「チチッ?」

と不思議そうに小首をかしげる。

そんなチッチを見て、私は、

「うふふ。チッチもあんまり食べ過ぎたらぽっちゃりさんになっちゃうのかな?」

と笑いながらチッチの顎を優しく撫でてあげた。

チッチは気持ちよさそうに、

「チチッ!」

と鳴きながら私に甘えるような素振りを見せてくる。

私はそれを可愛らしく思いながら、

「うふふ。お腹が休まったらお風呂に入りましょう。今日はたくさん飛んで疲れちゃったから、きっとお風呂が気持ちいいわよ」

と言って、チッチを抱き上げ、お風呂場へと向かっていった。


「はぁ……」

と息を漏らしながら、どっぷりとお湯に浸かる。

(明日は旅行中の行動食の準備をして、それから家の掃除もしっかりしておかなくちゃ。腐る可能性のある物は納屋の収納の魔道具に移しておかなきゃいけないし、結界の魔道具にも魔力を注入しておく必要があるわね……。なんだかんだで大忙しだわ)

と苦笑いを浮かべて何も無いお風呂場の天井を眺める。

私の横で湯桶に浸かっていたチッチが、

「チチィ……」

と気持ちよさそうな声を上げた。

「うふふ。気持ちいい?」

「チチッ!」

「ゆっくり肩まで浸かるのよ?」

「チチッ!」

と会話を交わしてゆったりとお湯を堪能する。

ふとお風呂場の窓から外を眺めると、くっきりとした満月が悠然とした姿で空に浮かんでいた。

「いい夜ね……」

と、つぶやくとチッチがいかにも同感という風に、

「チチィ……」

と鳴いた。

そのなんとも言えないおじさん臭さに、

「ふふっ」

と思わず笑みをこぼす。

そしてチッチを湯桶の中から抱き上げると、そっと支えてあげながら一緒に湯船に浸かり、窓の外に浮かぶ月をぼんやりと眺めた。


翌朝。

いつもより少し早起きをして旅の準備を始める。

行動食のショートブレッドを大量に焼き、家中の掃除をして、バタバタと動きまわっていると、あっと言う間に夕暮れが迫ってきた。

少し慌てて結界の魔道具に魔力を注入しにいく。

結界の魔道具はマスターの自信作で一度魔力を込めれば十年は持つように設計されていた。

もちろん今回そんなに長いこと旅に出る予定はないが、念には念を入れて、魔力を満タンにしておく。

裏庭に設置されている結界の魔道具に魔力を注ぎ終えると、けっこうな魔力を消費したこともあって軽く疲れが滲んできた。

(自分で言うのもなんだけど、私の魔力をこれだけ持っていく魔道具ってそうとうよね)

と思い、軽く腰を叩きながら勝手口をくぐる。

するとすぐにチッチが駆け寄ってきて、

「チチッ!」

と、ご飯の催促をしてきた。

「はいはい。ちょっと待っててね」

と苦笑いで応えてさっそく調理に取り掛かる。

今日は疲れていることもあって、お肉と野菜がたっぷり入った具沢山のスープと今朝たっぷり焼いたパンで簡単に済ませることにした。

そんな簡単な夕食でも美味しそうに食べてくれるチッチの姿を嬉しく思いながら私もゆっくりと食事を味わう。

(明日から旅の空ね……)

と思うと楽しみな反面、どこか寂しいような気持ちにもなった。

そんな食事が終わり、お風呂を使ってベッドに入る。

ほんのりと芯まで温まった体をベッドに横たえると、私は思っていたよりもすぐにぐっすりとした眠りに落ちてしまった。


翌朝。

装備を整えて玄関を出る。

施錠の魔法をしっかりかけて、庭に出ると、庭の中心に植えてあるネーブルオレンジの木のもとへと向かった。

「いってきます。マスター」

と声を掛けてその木の幹に手を振れる。

その木はもちろんなにも応えてくれないけれど、私の胸には、

「うふふ。気を付けていってらっしゃい」

というマスターの優しい声がはっきりと聞こえてきた。

再び、

「いってきます」

と声を掛けてその場を離れる。

そして、

「チチッ!」

というチッチの声を合図にして私は空へと浮かび上がっていった。

朝日にさんざめく森を眺めてその眩しさに少し目を細める。

そして、私はもう一度、心の中で、

(いってきます)

と、みんなの顔を思い浮かべながらそう言うと、杖を持つ手にきゅっと力を入れ、朝日を背にまだ見ぬどこかへと向けて旅立っていった。


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