表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/33

海03

翌朝。

林の中でだるい体を何とか起こす。

(思ってた以上に魔力を消費しちゃったわね……)

と思いながらもなんとか行動食をかじり、街道に出た。

西に少し進み、昨日通り過ぎた町に入る。

私はそこでその後のことの成り行きを見守るのも兼ねて、しばらく体を休めることにした。

その日は一日宿でのんびり過ごし、翌日。

とりあえずイビルオークの魔石を持ってギルドに行くと、ギルドは思っていたよりもたくさんの人で賑わっていた。

人込みをかき分けなんとか受付にたどり着く。

そこで、

「なにかあったの?」

と素知らぬふりをして聞くと、ギルドの受付嬢は、

「はい。なんでもシーサーペントが誰かに討伐されたらしいんです。それで、軍から解体と運搬の手伝いの依頼が来てて……」

と、なんだか信じられないが、というような表情をしつつそう事情を説明してくれた。

「……そんなことがあったのね。で、そのシーサーペントってのはこの町に運ばれてくるの?」

と聞くと、受付嬢は、私が依頼を受けたいと考えていると思ってくれたのだろう、

「いえ。隣のトレスタの町に運ばれるそうですよ。ですから、依頼を受けるのであればトレスタの町に

移動してもらうことになりますね。あ、でももう結構な数の冒険者さんが依頼を受けてますから、早い者勝ちですよ? 解体の経験があるなら日当は大銀貨二枚です。急いで依頼票を持ってきてくださいね」

と微笑みながら依頼の詳細を教えてくれた。

「そう。ありがとう。とりあえず、これを換金してくれる?」

と軽く礼を言いつつイビルオークの魔石を二つ受付嬢に差し出す。

「あ。はい。少々お待ちください」

と言いつついそいそと奥に下がっていく受付嬢の背中を見送りながら私は、心の中でひと言、

(よかった)

と安堵の言葉述べ、微笑みながら我先にと依頼票に群がる冒険者たちの喧騒を眺めた。


その後、魔石の代金を受け取り、ギルドを後にする。

私は商店街に寄ってこの辺りの名物だというホタテに似たセビルという貝の串焼きを二本買い、ぶらぶらと町を散策しつつ海の方へと向かっていった。

やがて浜辺に着き、適当な流木に腰掛ける。

するとチッチが、私の肩から飛び降り、

「チチッ!」

と鳴きながら波打ち際へと走っていった。

「あ。危ないわよ」

と声を掛けつつ立ち上がってチッチの後を追いかける。

チッチは波打ち際まで着くと、

「チチッ!」

と楽しそうに鳴きながら波と追いかけっこを始めた。

「水に入っちゃだめよ」

と、にこやかに注意しつつ、私もチッチと一緒になって波と追いかけっこを始める。

「ははは! なんか知らないけど楽しいね!」

「チチッ!」

と、はしゃぎながらしばらく波と戯れ、その後は砂遊びに貝殻拾いという定番の海遊びをした。

散々遊び、寝落ちしてしまったチッチを優しく抱き上げ、懐に入れてあげる。

(砂のトンネルくぐりがそうとう楽しかったみたいね。あんなに興奮してるチッチなかなか見られないもの。帰ったらアスレチックみたいな遊び場を作ってあげようかしら?)

と微笑ましく思いながら懐の中のチッチを軽く撫で、私は再び町へと戻っていった。


宿に着き、チッチを起こして銭湯に向かう。

塩と砂でベトベト、ザラザラした髪や体を綺麗に洗ってからどっぷりと体をお湯に浸した。

「チチィ……」

と湯船に浮かべた桶の中で気持ちよさそうな声を上げるチッチを見て、見知らぬおばさんが、

「あら。可愛いわね。イタチ……にしては変わってるけど、なんていう動物なの?」

と声を掛けてくる。

「はい。ユキリスっていうオコジョに近い仲間です。ちゃんと人慣れしてますから、安心してください」

と言うと、そのおばさんは、にっこり笑って、

「うふふ。可愛らしいわね」

と言ってチッチの頭を軽く撫でてくれた。

そこからそのおばさんと軽く世間話をすると、どうやらシーサーペントが討伐されたおかげで明日からどの港からも船が出せるようになるだろうとのこと。

そんな話を聞いた私は、

(そっか。よかったわ……。ああ、それならせっかくだしニルスに会いにトレスタの町に戻ろうかしら? きっと美味しいお店を紹介してくれるわ)

と思い付き、明日はトレスタの町を目指して戻っていくことに決めた。


翌朝。

さっさと歩いてトレスタの町を目指す。

夕方前にはトレスタの町に着いたが、手頃な宿はすべて冒険者で埋まっていたので、仕方なく町で一番高いという宿に向かった。

そこもかなり混雑していたが、それでも一番狭い部屋がひとつ空いているというので、なんとかそこに滑り込む。

そして料金が高かった割には狭い風呂でとりあえず汗を流すと、さっそく夜の町へと繰り出していった。


適当な居酒屋に入り、とりあえずエールを注文しながら店員におススメを聞く。

すると、新鮮な魚介類はまだ明日まで手に入らないだろうということだったので、普通に貝類の干物を使ったスープパスタとイワシに似た小魚の油漬けが乗ったサラダを食べてさっさと店を後にした。


翌日。

収納の魔道具から引っ張り出したベーコンとチーズを片手にさっそく町の中心にあるという教会を目指す。

その教会は宿からほど近く、十分とかからずに辿り着いた。

教会に入り、庭掃除をしていた若いシスターと思われる女性に、

「こんにちは」

と声を掛ける。

するとそのシスターは、

「こんにちは。お祈りですか?」

と、にこやかに応じてくれた。

「いえ。ここにニルスっていう子が住んでるって聞いたんで訪ねてきました。あ、私は冒険者のナッシュといってつい何日か前、旅先でニルスと一緒になった者です」

「まぁ。そうだったんですね。ええ、聞いておりますよ。なんでも帰りの荷馬車に乗ってくださったんだそうですね。その節はありがとうございました」

「いえ。こちらこそお世話になりました。で、ニルスはいますか?」

「ええ。今妹たちの勉強を見てやっていると思いますから、ご案内いたしますね」

「ありがとうございます」

と軽く礼を言って教会の庭を通り、裏に回る。

するとそこには小さな家があって、中から「きゃっきゃ」とはしゃぐような声が聞こえてきた。

「あらあら。お勉強しなさいっていったのに……」

とシスターが困ったような笑顔でつぶやく。

その言葉に私も軽く苦笑いを浮かべ、

「狭い所ですが、どうぞお上がりください」

と言ってくれるシスターに、

「失礼します」

と言いその家の玄関をくぐった。


「ニルス。お客様よ」

と言うシスターの声に家の中から、

「え? 客?」

というニルスの声が聞こえてくる。

その声を聞いた私が、

「ナッシュよ。約束通り町の案内を頼みにきたわ」

と少し大きな声でそう呼びかけると、中から少しドタバタという足音がして、

「ああ、ナッシュの姐さん。いらっしゃい!」

と小さな女の子を抱っこしたニルスが玄関にやってきた。

「なんだい。ずいぶん早かったな。魚はちゃんと食ったのかい?」

「いえ、まだよ。途中の町でシーサーペントが討伐されたっていう話を聞いたから戻ってきたの」

「そうなんだよ! どこのだれか知らねぇが、ありがてぇってもんだぜ。これでまたいつも通り商売が続けられるからな」

「ええ。世の中にはすごい人もいるものよね」

「ああ。それでナッシュの姐さんも解体の依頼できたのかい?」

「いいえ。私は本当に魚を食べにきただけよ。まぁ、機会があればシーサーペントって魔獣の姿くらいは見てみたいと思っているけど」

「ははは。明日には浜に揚げられるって話だから見にいってみるといいさ。おいらも妹たちを連れて見物に行こうと思ってたところだからな」

「あらそうなのね。じゃあ、私も見物に行こうかしら?」

「おう。そうしときねぇ。この機会を逃したら一生見られねぇかもしれねぇし、いい土産話になるぜ」

と会話を交わしていると、私の横にいたシスターが、

「ナッシュさん。立ち話もなんですから、どうぞお上がりくださいな」

と言ってくれた。

「おう。そうだな。すまねぇ。ささ、上がってくんな」

と言ってくれるニルスに、

「じゃあ、せっかくなんでお邪魔するわね」

と言って家に上がらせてもらう。

そして本当に小さなリビングに入ると、

ニルスの妹たちであろう女の子たちから、次々に、

「こんにちは!」

と元気よく挨拶された。

「こんにちは、ナッシュよ。突然お邪魔してごめんなさいね」

と挨拶をする私に一番年上だと思われる少女が、

「どうぞおかけください」

と言って椅子を勧めてきてくれる。

私はそれに、

「ありがとう」

と微笑んで返すと、私の向かい側に遠慮なく座ったニルスに、

「お土産よ。よかったらピザにでもしてちょうだい」

と言いつつ、大ぶりなベーコンとチーズが入った布包を差し出した。

それを受け取り、無造作に包を開けながら、

「お。すまねぇな……。ってこれ、肉じゃねぇか!? いいのかいこんなにもらっちまって?」

と驚きの表情を見せるニルスの言葉を聞いて、妹たちも押しかけるようにしてやってくる。

そして、キラキラとした目でベーコンとチーズを見つめる子供達に向かって私は、

「おススメはやっぱりピザね。ああ、もちろんパスタでもいいわよ。おススメはケチャップ味ね」

と少しドヤ顔でそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ