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とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


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旅は道連れ03

ギルドの酒場で乾杯し、ぬるいエールを飲みながらまた訓練の話に戻る。

私は紙とペンを借り、魔法陣を効率化するコツを伝授したり、瞑想の他にも、

「たとえば、風魔法なら掌からそよ風程度の魔法を出し続けて、魔法を制御する癖をつける訓練なんかもあるのよ。慣れてきたらそこに火魔法を加えて温度を少しだけ高くするの。お風呂上がりに髪を乾かすのに便利だからやってみるといいわ」

と基本的な魔法を日常に取り入れる訓練法などを三人に紹介した。

「あはは。なんだか便利なうえに訓練にもなるなんて面白いですね!」

と笑うユーカに、

「ええ。火魔法を極限まで小さく制御してそこに風魔法を加えると、パンに乗せたチーズを炙るのに便利だったりするのよ。他にも工夫次第で便利な使い方があるから、いろいろ探してみるといいわ」

と笑いながら私が自分で考え出した便利魔法を紹介する。

(うふふ。そう言えば、私も最初にドライヤーの魔法を使った時けっこう感動したな。バーナーの魔法もそう。野営中でもとろとろにとろけたチーズドッグとかチーズドリアが作れるようになって快適さが増したのよね)

と懐かしい記憶を思い出しながら、私たちはその日も楽しくお酒を酌み交わした。


翌日。

王都方面へと向かう駅馬車にみんなして乗り込む。

のんびりと進む馬車に揺られながらみんなと一緒に進む旅はこれまでとは違い、なんとも楽しいものだった。

(きっと修学旅行っていうのもこんな感じなのかしらね?)

と曖昧な前世の記憶を思い出しつつ、みんなと笑顔で旅を続ける。

そして、三日ほど進んだ村でいったん運動と魔法の稽古を兼ねて森に入ってみることにした。

この村のギルドの出張所で出されている依頼は、魔獣関連はイノシシ型のボア討伐の依頼がある程度でその他は薬草採取の依頼が主だった。

「ボアなら時々二、三頭の群れで出てくることがあるし、みんなの連携を試しつつ魔法の稽古をするにはちょうどいいじゃない?」

という私の提案にみんなもうなずいてその依頼を受け、森に入っていく。

冒険者らしく森の中を順調に進み、二日ほど歩いたところで、ボアの痕跡を見つけた。

「四、五頭いるかしら?」

「そうですね。この程度なら問題ないと思うんで任せてもらっていいですか?」

「ええ。わかったわ。でも、油断しないでね?」

「了解です」

とユーカと軽く言葉を交わしてその痕跡を追っていく。

すると間もなくして林の中で休んでいるボアの群れを見つけた。

数は四。

連携を試すにはちょうどいい数と言えるだろう。

「じゃあ、まずニーナが矢で牽制してこっちに注意を向けてちょうだい。そしたらエレナが前線に出て。私は隙をついて斬っていくから」

「「おう」」

と素早く作戦を決めて三人が身構える。

私も一応剣を抜き、いつでも飛び出せるよう身構えた。

「いくよ」

と小さくつぶやいてニーナが矢を放つ。

すると、それが手前にいた一頭に当たり、

「ブギャァッ!」

と悲鳴を上げさせた。

その悲鳴を聞いたボアがいきり立ち、こちらに突っ込んで来ようとする。

そこへすかさずエレナが突っ込み先頭で突っ込んできた一頭の突進を止めた。

(うん。ほんの少しだけど、コツをつかみかけてるわね……)

と感心しながら見ているとユーカがエレナの脇を抜け素早く足を止められたボアを斬る。

そして、ニーナがまた魔法の矢を放ち、こちらに誘い込んでは同じようにエレナとユーカが仕留めるということを繰り返した。

やがて戦闘が終わり、三人がこちらに視線を送って来る。

私は三人に向かってにっこりと微笑みながら軽くうなずき、

「ほんのちょっとだけど、コツをつかんだみたいね。その調子でこれからも頑張ってね」

と声を掛けた。

後はさっさと解体して持てるだけの肉と魔石を取る。

(こういう時収納の魔道具の偉大さを思い知るわね……。やっぱりマスターって稀代の天才だったんだわ)

と改めてマスターの偉大さを感じつつ、私も手伝って、かなりの量の肉を剥ぎ取った。

かなり重たくなった荷物を背負って歩くことまた二日。

ようやく村にたどり着く。

すぐにギルドへ向かい肉と魔石を卸すと、私たちはそのまま銭湯に直行した。

湯船に浸かった瞬間、

「ふいー……」

と、おじさんのような声を出すエレナをみんなでからかったりしながら、冒険の疲れを癒す。

そして、その日もまた宿の食堂でみんな一緒にお酒を飲み、楽しい時間を過ごした。


(みんなと一緒だとついつい食べ過ぎちゃうわね……)

と、いかにも冒険者らしいヘビーな食事が詰め込まれてもたれ気味のお腹をさすりながらベッドに腰掛ける。

チッチもたくさん食べて苦しくなってしまったのか、枕元まで這っていくと、お腹を天上に向けて「デロン」と横になった。

「うふふ。お腹を冷やすと良くないわよ」

と言いながらチッチに軽く布団を掛けてあげる。

チッチは満足そうに、

「チチィ……」

と鳴くとすぐに気持ちよさそうな寝息を立て始めた。

(うふふ。可愛いものね)

と思いながらチッチを軽く撫でてから、「よっこらせ」と立ち上がり寝る支度を始める。

満腹になったお腹はすぐにでも横になれと私に要求してきたが、なんとか頑張って最低限の支度を整えた。

支度を終えてベッドにゴロンと横になる。

(なんだか楽しい旅になったわね。ほんと、旅は道連れだわ……)

と思いながら自然と頬を緩める。

しかし、それと同時に、自分は普通の人間とは相いれない存在だということを思い出し、

(ここでもまた一期一会ね……)

と少し寂しいような気持ちになった。


翌日からも楽しい旅が続く。

そして、ついに私たちは王都の隣、街道が分岐する町へと到着してしまった。

盛大な別れの宴会をした翌日。

「ありがとう。楽しかったわ」

と、にこやかに微笑みながらみんなと握手を交わす。

ユーカとエレナはにこやかに手を握り返してくれたが、なぜかニーナが泣き出してしまった。

「ちょっと、どうしたの?」

と慌てる私に、ニーナが、

「……うぅ……だって……」

と子供みたいな言葉にならない言葉を発する。

そんな様子にユーカは少し呆れたような、しかして少し寂しそうな笑顔を浮かべると、

「わがまま言わないの。大丈夫、きっとまたどこかで会えるわ」

と、いかにも姉らしい口調でニーナの背中を優しくさすりながらそんな言葉を掛けた。

「……うん」

と渋々ながらもニーナがうなずき、ユーカの胸に顔を埋める。

そんなニーナをユーカが優しくあやし、エレナも一緒になってニーナを慰め始めた。

そんな光景に泣きそうになるのをぐっとこらえながら、

「ええ。またきっとどこかで会いましょう。時間があればエルフォニア王国にも遊びに行くわ」

と言ってニーナの頭を軽く撫でてあげる。

するとニーナはユーカの胸を出て私の胸に顔を埋めてきた。

「あらあら。ニーナは甘えん坊さんね」

と苦笑いしながらニーナの背中を優しくさする。

そんな私たちの間にはどこまでも優しい空気が流れた。

断ちがたい思いを断ち切って、

「じゃあ、そろそろ行くね」

と別れを告げる。

ユーカとエレナはなるべく明るい顔で、

「はい。どうかお元気で」

「また会いましょう」

と言ってくれた。

涙を拭き終わったニーナが、

「ありがとうございました。また会えますよね? 約束ですよ?」

と私の顔を覗き込むようにして言ってくる。

私はそんなニーナの頭をまた軽く撫でてやりながら、

「ええ。きっとまた会いましょう」

と言うと後ろ髪を引かれつつも思い切って三人に背を向けた。

「またね!」

と子供のようなことを言ってくるニーナの声を受け、後ろ手に手を振る。

私の肩でチッチも寂しそうに、

「チチッ!」

と別れの挨拶を送った。

寂しさを振り切るようにいつもよりやや速足で歩く。

一歩進むごとに、切なさが込み上げてきた。

ほんの少しだけ滲んだ視界の先にはどこまでも続く長閑な街道が続いている。

私は、そんな街道の先を見つめながら、

(また会えるといいわね……)

と心の中でつぶやき、一歩一歩踏みしめるようにして南へと進んでいった。


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