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とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


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旅は道連れ02

翌朝。

「精霊の矛」の三人と連れ立って森の入り口を目指す。

ニーナはずいぶんと痛みがなくなったと言っていたが、無理をさせないようにゆっくりとした歩調で確実に前へと進んでいった。

そして、夕方になって森の出口に到着する。

そこで簡易の宿に入り、みんなで雑魚寝して久しぶりの睡眠を堪能すると、翌朝の馬車に乗って私たちは辺境の町へと戻っていった。

馬車の中でなんとなく今回の成果の話になる。

「精霊の矛」の三人は全部で九十ほどのヨックを倒したのだそうだ。

「これで次の町に行く路銀が稼げました」

と嬉しそうに言うユーカに次の目的地を聞くと、三人はいったん、私も滞在し、ジャックと出会ったルクセリア王国の王都ニクセンの町を目指すそうだ。

そこで観光を楽しんだあと、再び拠点にしているエルフの国、エルフォニア王国に戻るという。

「そっか。楽しそうでいいわね」

と微笑みながら言うとエレナが、

「じゃあ、ナッシュさんも一緒にきませんか? きっと楽しいですよ?」

と、ちょっとだけ魅力的な言葉を掛けてきた。

(女子旅か。それはそれで楽しそうね……)

と思いつつも、自分はあまりこの世界の人たちと深くかかわるべきではないという変な遠慮が顔を出し、

「うーん。実はつい最近までニクセンの町にいたの。こっちに来たのは果物が美味しいって聞いたからなんとなくって寄ってみたって感じだし、次は魚を食べに南の海を目指そうと思っていたから……」

と苦笑いやんわりと断りを入れる。

しかし、エレナはそれでもあきらめずに、

「じゃあ、街道の分岐点の村までは一緒に行きましょうよ。きっと楽しいですよ!」

と誘ってきた。

私はまた苦笑いで、

「じゃあ、分岐点までね」

と言ってその誘いを受ける。

すると誘ってきたエレナだけでなく、ユーカとニーナも、

「やった!」

と言って無邪気にハイタッチを交わした。

(何が、そんなに嬉しかったのかしら?)

と疑問に思いながら苦笑いを浮かべていると、ニーナが、

「うふふ。やっぱり旅は道連れですよね!」

と楽しそうな顔でそう言った。

そこからはお互いの経験や冒険者になった経緯なんかの話になる。

もちろん私の場合は所々誤魔化しながらの話になってしまったけど、三人は興味津々といった感じで聞いてくれた。

その話の中で私がいくつかの魔法を使えるという話になる。

すると、ユーカとニーナが、

「私は剣に魔法を乗せて使うんですけど、最近行き詰まりみたいものを感じていて……」

「そうそう。私ももっと効率よく魔法を扱って魔法の矢をたくさん出せるようにしたいんですけど、なかなか上手くいかないんですよね……」

と最近魔法で悩んでいることを伝えてきた。

エレナも、

「私も身体強化と防御魔法をもっと強化できないかって思ってるんですけど、なにかコツってありますか?」

と質問してくる。

私は、いったいどう伝えたものかと思いながら、

「みんな魔法陣はどんなものを使っているの?」

という質問からみんなの現状を聞いていくことにした。

みんなの話によると、基本形の汎用魔法陣を少しだけ自分の使いやすいように変えて使っているという。

しかし、聞けばその変更というのも汎用魔法陣の域を出ておらず、独自の魔法陣を使っているというわけではなさそうだった。

「なるほど……。みんなの場合はまず、自分の魔力の性質と魔法の特性をきちんと見つめ直すことが必要じゃないかしら? 実際に見てみないと詳しいことは言えないけど、たぶん解決の鍵はそこにあるはずよ。汎用の魔法陣を自分の使いやすい言語や想像しやすい配列に直していくだけで、全然効率が変わってくるから、その辺りを意識して練習してみるといいわ」

と、なんだか先生になったような気分でそう助言すると、ユーカが、

「あの。もしよかったらなんですけど、辺境の町に着いたらギルドの訓練場で練習を見てもらうことはできますか? 一回でいいんで是非お願いします」

と真剣な目でそう言ってきた。

断る理由もないので、

「わかった。いいわよ。ああ、でもニーナの足の状態がきちんと治ってるのを確認してからね」

と微笑みながら答える。

すると三人はまた、

「やった!」

と喜び、ハイタッチを交わし始めた。


やがて辺境の町に着き、ギルドに向かう。

まずは魔石を買い取りのカウンターに持って行き、金貨十枚と大銀貨二枚を受け取った。

「ひ、ひとりでそんなに倒したんですか……」

と驚く「精霊の矛」の三人に、

「運よく立て続けに出くわしたのよ。ひとつひとつの群れはたいした数じゃなかったわ」

と、また軽く嘘の説明をする。

(本当はもっとあるんだけど、さすがにワイバーンとかゲネルのやつは見せられないわね……)

と心の中で思いながらなんとなく苦笑いをしていると、「精霊の矛」の三人は、

「それでもすごいです!」

「ええ。一人で冒険してるってだけでもすごいのに……」

「尊敬しちゃいます!」

とキラキラとした目で私を見つめながら少し恥ずかしいセリフを言ってきた。

そんな視線に照れながらギルドを後にする。

私たちはなんとなく連れ立って適当な風呂無しの宿をとると、さっそく荷物を置き、連れ立って銭湯に行くことにした。


「ナッシュさん、綺麗……」

「そんなことないわ。ニーナの方が綺麗じゃない」

「私はぺちゃんこだから……」

「あはは。大丈夫、そういう需要もあるから!」

「なによ、エレナ! 自分がちょっと大きいからって……」

「もう。二人とも恥ずかしいでしょ? 公共の場で変なこと言わないの!」

と、いかにも女子らしい会話をして楽しくお風呂の時間を過ごす。

そして、みんなお酒が飲めるということだったので、私たちは連れ立って町の居酒屋にいくことにした。


「乾杯!」

と声を揃えてエールの入った大きめのジョッキを傾ける。

ひと口飲むとみんな同様に、

「ぷはぁ……」

と息を漏らし、「うふふ」「あはは」と笑い合った。

から揚げにピザ、パスタにラードたっぷりでちょっとギトギトしたチャーハンと、カロリーの暴力のような夕食をみんなでワイワイやりながら食べる。

その日はまたいかにも女子らしく、服や髪型、ちょっとした恋の話なんかで盛り上がり、楽しく宿へと戻っていった。


翌日訓練場に向かう。

まずは、みんなの魔法を見せてもらうと、それぞれに課題が見えてきた。

まず、ユーカは魔力量がニーナと比べて少ない。

しかし、その分効率的に扱うことは得意なようで、無駄なく全身に配分できているようだ。

それを見て私は、

「ユーカの課題は少ない魔力で効率的に攻撃することね。一撃一撃の魔力消費を抑えるのと、ここぞという時の必殺の一撃のためにある程度魔力を温存する戦い方を覚えた方がいいわ。そのためにも魔法陣をもう少し工夫する必要がありそうね。具体的には剣に流す魔力の線を細かく網目状にする感じよ。そうすれば少ない魔力量でも今まで以上の斬撃が繰り出せるわ」

と助言する。

そして次にニーナを見ると、ニーナはユーカとは逆に魔力量は多いが、それをうまく制御できていないというのが課題だとわかった。

「ニーナの課題は効率ね。今の魔法陣だと消費する魔力の量が多すぎるの。だから、もっと魔力を絞れるような感じで魔法陣を改変して一撃一撃の魔力を抑える方向で練習するといいわ。そうすれば同時に撃つ魔法の数を増やしても負担が少なくなるはずよ」

と助言する。

二人はそれぞれ私の指摘を素直に受け止めてくれて、より効率的な魔法陣を構築するコツなどを質問してきた。

そんな二人の質問に答えてからエレナの魔法を見る。

エレナはエルフのニーナと比べてもそん色ないほどの魔力量を持っていた。

(あら。けっこうすごいわね……)

と感心しつつ、エレナと軽く手合わせをする。

そこでエレナの課題は魔力操作の基礎が出来ていないことだとわかった。

「ねぇ。エレナって瞑想の訓練はしてないの?」

と聞くとエレナは不思議そうな顔で、

「瞑想?」

と聞き返してきた。

どうやらこれまで魔力操作も魔法も自己流で誰かに習ったことがないらしい。

(なに? それってある意味天才じゃん)

と感心しつつ、瞑想の基礎を教える。

瞑想というのは集中して全身に魔力を巡らせる魔力操作の訓練の一環だ。

最初は私も手伝って、全身に魔力が巡る感覚を味わってもらった。

「すごい……。なんか体に力が漲る感じ……」

と感動するエレナに、

「この訓練を続けていればそのうち自然と全身に魔力を巡らせることができるようになるわ。きっともっと強くなれるわよ」

と微笑みながら伝える。

そんなエレナを見てユーカとニーナも瞑想の基礎を教えてくれと言い出した。

どうやら二人とも感覚的に魔力操作が出来ていたから、その辺りの基礎訓練を飛ばしてきたらしい。

私は、

「何事も基礎が大切よ。日常の習慣にするといいわ」

とマスターからの受け売りの言葉を伝えつつ授業を続ける。

結局その日は夕方まで訓練を続け、全員くたくたになってギルドの酒場へ向かった。


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