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とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


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ちょっとしたお掃除03

「はぁ……、はぁ……。ちょっと一服しましょうか……」

とチッチに声を掛け、その場に座り込む。

洞窟の奥にはどうやら動く気配がない。

ただ、濃い魔素の気配は相変わらず漂ってきているから、どうやら次の対処が必要だろう。

そう思いつつも私はとりあえず息を整えるべくその場でお茶を淹れ始めた。

チッチと一緒にリンゴをかじり、とりあえずひと息吐く。

そして、満足そうなチッチに向かい、

「じゃあ、チッチ。ちょっと疲れるかもしれないけど、一緒に頑張りましょうね」

と声を掛けた。

「チチッ!」

と元気な声が返ってくる。

私はそんなチッチを軽く撫でてやってから立ち上がると、さっさと荷物をまとめ、洞窟の奥へと歩いていった。


やがて、大きなホールのような空間に出る。

おそらくここが洞窟の最奥なのだろう。

私は、私の肩の上にいるチッチに、

「じゃあ、いくわよ」

と声を掛けると、チッチもやる気に満ちた感じで、

「チチッ!」

と返事をしてくれた。

杖を取り、魔力をじっくりと練り上げていく。

すると私の足元には青白く光る巨大な魔法陣が浮かび上がった。

そこに、

「チチッ!」

という声が響き、魔法陣がさらに輝きを増す。

そして、その眩い光は洞窟全体を覆いつくすと、次の瞬間、まるで水面を波紋が走り抜けるようにして一気に青白い魔法の光を解き放った。

壁や地面を突き抜けるようにして魔法の光が広がっていき、また暗闇が訪れる。

私は上がる息をなんとか整えながら、背嚢から灯りの魔道具を取り出し、小さな灯りをともした。

「チチィ……」

と鳴いてぐったりしているチッチをその場に寝かせてあげる。

そして、水筒を取り出し、まずは私がひと口飲むと、小さなコップに水を入れチッチのそばに近づけてあげた。

「さぁ。お飲み」

と言ってチッチを軽く起こしてあげるとチッチはいかにもきつそうな感じでちびちびと水を飲み始めた。

「ありがとう。よく頑張ったわね」

と言葉を掛けてあげると、チッチがまだ疲れた様子ながらも、

「チチッ」

と、どこか誇らしげに返事をしてくる。

私はそんなチッチを微笑ましく思いつつ、その頭を優しく撫でてあげた。


そうやって休息を取りながら、昔のことを思い出す。

あれはマスターと出会って二年ほどが経ったときのことだった。

「ずいぶん森にも慣れてきたようだし、そろそろ私のお友達を紹介するわね」

と言うマスターについて行き、私はそこで初めて世界樹の精霊、ユーシュ様に面会する。

そして、同時に世界樹の守護をしている神獣、フェンリルのゴーシュ、神鹿エイクのリタ、フェニックスのシータ、ケットシーのチェスカの四人を紹介された。

そこで聞いた話によると、神獣はとこしえの森に魔獣が増え過ぎることを抑え、魔素溜まりが大きくなり過ぎないよういわば浄化のようなことをして回っているという。

マスターもこのとこしえの森に住まう対価として時々その手伝いをしているのだそうだ。

そこで私もその手伝いをしてくれないかと頼まれた。

私は驚きながらもその依頼を受ける。

そして、その作業の相棒として、当時まだ生まれたばかりのチッチを紹介された。

チッチはまだほんの子供だったが、将来は世界樹の新たな守護精霊となる器があるという。

その日から私はチッチと組んで魔素溜まりの浄化作業をマスターから教わり始めた。

チッチはまだ魔獣に対することができるほどの大きな魔法を使うことはできない。

だから、私の任務はチッチが魔法に目覚めるまで傍にいて守ってあげることと、チッチが魔素溜まりに一人で対処できるようになるまで一緒に練習してあげることだ。

そうやって、今の私とチッチの関係が始まり、現在に至っている。

私は私の手の中で気持ちよさそうに眠ってしまったチッチを軽く撫でてやりながら、

(ゆっくりでもいいわ。でも、確実に大きくなってね)

と、まるで母親のようなことをつぶやきつつ目を細めた。

やがて、私もその場で眠りに就く。

洞窟の中はランタンの小さな灯りでは照らしきれないほどの漆黒の闇が広がっていたが、私は思いのほか落ち着いてぐっすりと眠ることが出来た。


かなりぐっすりと眠って目が覚めたところでとりあえず洞窟を出る。

すると、太陽はかなり高くなっていて、もうすぐ昼が近いことを示していた。

私は急いで杖に跨り山を下りる。

そして、夕闇が迫る頃。

やや開けた草原を見つけるとそこで野営の支度に取り掛かった。

ごろごろとした野菜や大ぶりな腸詰が入った温かいスープを作る。

寒い山の上にいたからだろうか、その温かいスープはいつも以上にお腹に沁みた。

同じくほっとした表情で満足げに寝転ぶチッチのお腹を撫でてやりながら、食後のお茶を飲む。

気が付けば私たちの頭上には満天の星が輝き、辺りを優しく照らしていた。

「きれいね……」

「チチッ……」

と、ぼんやり会話を交わしながらのんびり夜空を見上げる。

そしてなんとなく、私はチッチに向かって、

「ねぇ。チッチ。旅は楽しい?」

と聞いてみた。

「チチッ!」

と元気な声が返ってくる。

どうやらチッチは、

「ナッシュといっしょならどこでも楽しいよ」

と言ってくれたようだ。

そんな可愛いことを言ってくれるチッチに、

「私もチッチと一緒だからいつも楽しいわ」

と返すとチッチはまた嬉しそうな顔で、

「チチッ!」

と元気よく鳴き、私に甘えてきた。

そんなチッチを撫でてあげながら私も幸せな気分に浸る。

(チッチがいてくれて良かった……)

と思いながら、私は煌めく夜空に向かって、

(マスター。私は今日も楽しく生活してますよ)

と心の中でそっとつぶやいた。

すると不意に流れ星が流れる。

私は少し驚きつつも目を細め、もう一度心の中で、

(いつまでも見守っててくださいね)

と、つぶやいた。


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