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とこしえの森のナッシュ~魔導人形に転生した私の異世界冒険譚~  作者: タツダノキイチ


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12/33

ちょっとしたお掃除02

翌朝早く。

まだ、空が白み始めたかどうかという時間。

遠くから迫ってくる気配で目を覚ます。

(やっぱり来たわね……)

と思いながら立ち上がり、遠くの空を見ると、ワイバーンらしき影がいくつかこちらに迫って来ているのが見えた。

まだ寝ているチッチをブランケットの中に入れてあげ、そっとその場を離れる。

そして収納の魔道具から弓型の魔道具を取り出し、ゆっくりとその弓に魔力を注入し始めた。

おそらくその気配に気が付いたのだろう。

ワイバーンがさらに勢いを増してこちらに向かってくる。

私は冷静にそれを引き付けながら、まずは牽制のつもりで魔法の矢を放った。

青白く光る魔法の矢がワイバーンに向け飛んでいく。

魔法の矢は空中でパッと弾けて散弾銃のように広範囲に広がっていった。

ワイバーンの数は五。

そのワイバーンの群れがパッと分かれて広がる。

おそらく牽制に驚いてくれたのだろう。

私はその隙を逃さずまた魔法の矢を撃ち込んだ。

今度は一本の魔法の矢が飛んでいく。

その魔法の矢はものすごい勢いで直線的に飛び、一羽のワイバーンの翼を穿った。

「グギャアッ!」

という叫び声と共に、その矢を受けた一羽が地面に突っ込んでいく。

私は続けざまに矢を放つと、同じようにもう二羽、ワイバーンを落とした。

(残り二……)

と思ってまた弓を構える。

しかし、残りの二羽は先ほどの様子を見ていて何かを学んだのだろう。

二羽が左右に別れ、両側から同時に襲い掛かってきた。

私は素早く弓を置き、杖を取り出す。

そして、杖を地面に軽く突きたてると、足下に大きな魔法陣を展開させた。

そこへワイバーンが突っ込んでくる。

私は、心の中で、

(今っ!)

と気合のひと言を発すると、一気に魔法を発動しワイバーンに電撃を食らわせた。

「グギャアッ!」

という悲鳴と共に黒焦げになったワイバーンが地面に落ちる。

私はその黒焦げになった二羽をとりあえず放置して、まだ地面でバタバタしている残りの三羽の所へ飛んで向かった。

上空から電撃を食らわせてそれぞれを沈黙させていく。

そして、最後は綺麗に焼いて灰にするとその灰の中から拳より一回り大きな魔石を取り出して、チッチの待つ地点に戻っていった。

「チチッ!」

と挨拶をしてくるチッチに、

「おはよう。すぐご飯の支度をするわね」

と微笑みながら挨拶を返し、さっそく朝食作りを始める。

簡単なスープを作り、パンにはチッチが好きなピーナッツバターをたっぷり塗って出してあげた。

「チチッ!」

と美味しそうに小さくちぎったパンをかじるチッチの姿に癒されつつ私もその濃厚な甘さを噛みしめる。

(朝から甘い物を食べるとなんだか気持ちがシャキッとするわね)

と呑気なことを考えつつ、ゆっくりと朝食を済ませると、空はすっかり明るくなっていた。

「さて。今日は一気に奥まで行ってしまいましょうか」

とチッチに声を掛け、一応周りを確かめてから空に舞い上がる。

そうそう続けて出てくることはないだろうと思いながらも、念のためワイバーンに見つからないよう森の木々の上、すれすれのところを縫うように進んでいった。


やがて、山岳地帯に入ったところで、山の中腹にある開けた降り立つ。

どうやらここはすでに森林限界を超えているらしく、周りは一面の銀世界だった。

(夏には綺麗な高山植物で彩られるんでしょうね……)

と思いながら、眩しいくらい明るい雪原を歩いていく。

そして、しばらく行くとかなり大きな魔素が溢れ出している洞窟の入り口が見えてきた。

(遠くからも感じてたけど、近寄って見るとけっこうすごいわね。いつの間にかかなり大きな魔素溜まりが出来ちゃったって感じかしら。さて、中にはいったいなにがいることやら……)

と意外と気楽に考えつつ灯りの魔道具を取り出しさっさと洞窟の中に入っていく。

洞窟の中は思っていた以上に広く、意外と進みやすかった。

(これならドラゴンの一匹や二匹住み着いていてもおかしくないわね。いえ、この感じなら本当に昔ドラゴンが住み着いていたのかもしれないわ。そこが今になって魔素溜まりになっちゃったってところかしら?)

と、この場に大きな魔素溜まりが出来た理由をなんとなく考察しながら進んでいく。

魔素溜まりというのは謎の多い存在だ。

どこにいつどうやってできるのか全く予想がつかない。

ただし、魔素溜まりが出来るとそこには自然と強い魔獣が生まれることが知られていた。

それだけならまだしも魔素溜まりが発生すると徐々に周辺にいる魔獣の活動も活発化していく。

放置しておくと危険な存在だ。

魔素溜まりに対処する方法はいくつかあるが、一般にはそこに現れる魔獣を常に討伐することでその影響力が徐々に弱まるのを待つという方法がとられていた。

つまり、魔素溜まりが現れると冒険者業界が活性化するということになる。

ただし、今回のようにまだ誰もその存在に気付いておらず、また、こんなにも対処のしにくい場所にある場合は別だ。

おそらくこの魔素溜まりに本格的に対応しようと思えば国軍が動かなければならないだろう。

それも何年もの時間と多くの人命をかけてだ。

私はそんなことを思い、

(冒険者のみんなの食い扶持を減らすことになっちゃうかもしれないけど、ここはいくらなんでも危なすぎるから、対処させてもらうわね……)

と誰にともなく言い訳をしながら、気を引き締めて奥へと進んでいった。


やがて、大きな気配が近づいてくる。

どうやら先に気取られたらしい。

私はそこで覚悟を決め、戦う準備を整え始めた。

杖を取り出し、洞窟の天井付近で大きな灯りの魔法を発動させる。

すると奥から見たこともないまるで絵本でみる雪男のような怪物が十体ほどこちらに向かってくるのが見えた。

(え? なに? イエティ?)

と焦りつつ、マスターに教えてもらった知識を思い返す。

あれはたしか、ゲネルという魔獣だったはずだ。

珍しい魔獣だけに生態はよくわからず、マスター書いた本にもおおよその外形と生息地くらいしか情報が載っていなかった。

(こんなところで未知の敵って……)

と思いつつとりあえず牽制のつもりで風魔法を放つ。

すると、それを食らったゲネルが、

「グォォッ!」

と雄叫びを上げた。

(やったか?)

と思うが、ゲネルは怒ったような表情でこちらに突っ込んでくる。

(なっ!? 倒れないの?)

と思いつつ、少し焦って今度は炎の矢を叩き込んだ。

しかし、結果は同じで、ゲネルは倒れずこちらに突っ込んでくる。

私はそれから逃げるように走りつつ、

(火もダメ、風もダメなら……)

と思い、今度は氷の魔法を飛ばした。

しかし、またしても不発に終わる。

そこで私は、

(もしかして、こいつら、魔法に強い?)

という可能性に気が付いた。

意を決してこちらもゲネルに突っ込んでいく。

そして、相手がそれほど俊敏に動けないと見定めると思い切って懐に突っ込み、思いっきり胴を一閃した。

(……硬っ!)

と、ややつまったような感覚を覚えつつ剣を振り抜く。

すると、先ほどとは違い明らかに苦しそうな感じで、

「グギャァッ!」

という悲鳴が上がった。

(やっぱり)

と思いながら素早く振り返り今度は背中を斬りつける。

すると、今度は声もなくゲネルが倒れ、ようやくその一匹が沈黙してくれた。

そこからは乱戦になる。

俊敏ではないものの強烈な力で拳を振り下ろしたり石を投げつけてきたりするのをなんとかかわして斬りつけるという攻撃を繰り返す。

マスター特製の防御魔法が仕込まれたローブが無ければけっこうなケガを負っていたころだろう。

しかし、私はその乱戦をなんとか戦い抜き、最終的には息を切らしながらなんとかその戦いを終えた。


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