北沢 賢治 5月 20日 PM 5:00
パソコンのキーボードを打つ音だけが部屋に響く。
ここはDNCという会社の地下の研究室だ。
部屋にはたくさんのコンピューターや薬などが置いてある。
モニターに向かってひたすらキーボードを打っているひとりの男性、北沢賢治は一秒たりとも手を止めず、画面とにらめっこ状態だ。
急がなければ・・・・。
北沢はこころの中で呟いた。
今、作成しているプログラムが完成しないと人類にとって破滅を意味する。
しかも、これは単なるプログラムではないのだ。
北沢はデスクの上のファイルから一枚の紙を手にとる。
そこには女性の写真が2つと、細かい文字がびっしりかかれてあった。
この2人に投与し、あとは集人がうまくやってくれることを祈ろう。
それから数分たち、プログラムは完成した。
それから北沢はプログラムを2人にネットワークを介して投与し始めた。
本当はこのようなことは許されない。
しかし、そんなことを言っている場合ではないのだ。
数秒で投与は完了し、コンピューターのモニターにCompleteの文字が表示される。
北沢は一息つきデスクによりかかった。
私が犯してしまった罪は今までの歴史の中でも一番重いものかもしれない。
そう思うとこれから先が真っ暗になる。
しかし、すべてが終わってしまったわけではない。
集人があの二人を見つけ出して・・・・。
そう考えていたとき、研究室のドアの方で音がする。
誰かがセキュリティーを突破して来ようとしているのが瞬時にわかった。
北沢は急いで集人にメールで2人の顔写真と詳細データに、『この二人を探し出してくれ。』
っと文章を付け加え、送信した。
それからコンピューターのデータをあいつらに渡さないため、データを完全削除しようとする。
そのとき、
「うごくな!」
背後でドアが慌ただしくひらき、数人の男が入ってきた。
全員拳銃をもち、コンピューターの前に立っている北沢に銃口を向けていた。
北沢がゆっくりと振り返る。
モニターにはDelete all data?[Y]or[N](すべてのデータを削除しますか?)の文字。
「手をあげろ。コンピュータに触ったら撃つ」
銃を構えながらひとりが言うが、それに従うわけには行かない。
北沢はゆっくりと手を上げていった。
すると銃を構えていた男たちが少し銃口を下げたのを北沢は見逃さなかった。
とっさにキーボードのYをおそうとする、が、ひとりの男がそれに気づき銃を発泡した。
一瞬の出来事だった
右肩に激痛が入り、反動で体が煽る。
北沢はそれを利用して左の手でキーボードのYを押した。
モニターにはWhile removing(削除中)と表示され、次の瞬間にはモニターは北沢の血で赤く染まっていた。