ドキドキの? 事情聴取
「で、ここはどこなの?」
俺は目の前にいる羽虫、もとい、モネという小さな少女に問いかけた。
「謝罪を要求する」
「は? 何で?」
「モネは羽虫違う。立派なレディ」
ふんす、と怒ってるんだぞアピールをしてくる羽虫に、俺はうんざりする。
レディ? だから謝れと? おいおい、勘弁してくれよ。こちとら根っからの男女平等主義者だぞ。これまでの経験で、女性の権利だけは主張するくせに、いざとなったら庇護を乞うような輩を散々見てきた。きっと、幼い頃から可愛い可愛いと大事に育てられてきたのだろう。
この羽虫も例外ではなさそうだ。だったら、初めが肝心。ならば今後の為に、ガツンと言わなきゃならんでしょう。
「悪いが、謝罪はできない。なぜなら――」
「謝罪無し。残念。私、帰る」
「すいっませんでしたぁー! モネ様は立派なレディです! だから帰らないでください! 一人にしないで!」
「二度はない。心得よ」
ははぁ、と俺は恭しく土下座をした。
え? 男女平等主義はどうしたって? 権利の強い者に、男女の優劣なんてあるのかい? ここでは俺が劣っている、ただそれだけさ。
「それでモネ様、お話を伺いたいのですが」
「モネでいい。普通に話して。気持ち悪いから」
俺はにこやかな笑みを絶やさず、チッと心の中で舌打ちをした。
「じゃあ、普通に話すぞ。ここはどこなんだ?」
「私達の主が創った世界」
私達、ね。やっぱりここは、狂ったゲームの世界だったか。俺としては、一刻も早くその主とやらをボコボコにしたいのだか。
「元の世界に帰りたいんだけど」
「簡単。ゲームをクリアすればいい」
……おっと、いかんいかん。無意識に手が出そうになった。つーか、簡単って言いやがったか、この羽虫。いや、待てよ。羽虫のサポート付きなら簡単って意味なのか?
「クリアって簡単なのか?」
「主が言うには、生ぬるい、らしい」
「俺でもできる?」
おい! 何か言えよ! 視線を逸らすな!
「オジさん、ガンバ」
羽虫に励まされた。泣きたい。つーか、この羽虫、会話のやり取りがスムーズ過ぎるな。どんなAI積んでんだよ。
「何で俺がこんな目に合わなくちゃいけないんだよ」
「ツライのオジさんだけ、違う。他にも、いる」
「へぁ? 他にも? このクソゲーにプレイヤーがいるの?」
「オジさん含めて、十人ら、コホン、十人いる」
今、拉致って言いそうにならなかった? ねえ? 拉致だよね? ねえねえねえ?
「俺の他にもいるなんて、喜んでいいのか悲しめばいいのか」
「大丈夫。未成年いない」
じゃあ安心だね! ってなんねーよ? 成人した大人が泣く地獄絵図しか浮かばねーわ。
「大体さ、来るの遅くない? モネが現れるまでに、相当死んだよ?」
「それはこちらの問題。謝罪する」
羽虫がペコリと頭を下げた。水色のショートカットが、わずかに揺れる。
素直に謝った? あれれ? おかしいぞぉ? 何か隠してない?
「そちらの問題で被った被害は、こちらにある。理由を聞かせてもらおうか」
「オジさんのサポート要員、難航。誰も名乗り出ない。仕方なく、ジャンケン百番勝負」
「……それで、モネが負けちゃったのかい?」
こくり、と頷く羽虫。絶望する俺。
そんなにか。そんなに俺の所へ来るのが嫌だったのか。
俺がスライムに殺されている間にジャンケンをし、死神君に首を切られている間にもジャンケン、サイコジジイに拷問されてる間ももちろんジャンケンなわけだ。
……百番もいらなくね!? そう思ったのは俺だけだろうか。




