オッサンは粗大ゴミへ
モーニン。
あ〜よく寝た。しかし、気を失うように眠ったな。何があった?
あー、はいはい、クエストが増えてますわ。これが原因か。そりゃ、自暴自棄にもなりますよ。
しかし、今の俺の状態、壁を背もたれにしたテディベアみたいになってる。ごめん、可愛いように言い過ぎた。実際は電池が切れたオッサンみたいになってる。夜中の新橋でよく見られる光景だ。
なぜベッドで寝てないの? 歳も歳なんだから、腰を壊すよ? そう思ったが、ベッドではクソガキが眠っていた。その隣に羽虫が寝ている。
なんか、プリ◯ュアみたいだな。あれって、どういう設定? 魔法少女なの? それとも変身する特撮系? 知らんけど、羽虫みたいなマスコットキャラはいそう。
はぁ、これからどうしよう。正直、全部無視して逃げてしまいたい。だって、マフィア壊滅に加えて、今度は国の再興だよ? バカじゃないの? チートスキルを持っていたとしても、憂鬱になるレベルだよ。そして、チートどころかデバフ盛々の俺はと言うと、もはや無だね。虚無の無であり、無理の無であり、無神の無だ。ニーチェも言ってたよ、神は死んだって。
「ふわぁ、よく寝たぁ、眼鏡眼鏡っと。……うわっ!」
「んー、どうした? そんな大声出して」
「あ、モネさん、おはようございます。すみません、起こしてしまって。寝起きでタロウさんを見て、驚いちゃいました」
「あー、分かる。私も始めはそうだった。慣れてくると、粗大ゴミに見えるから安心して」
「そ、そうなんですね。その粗大ゴミさんが、ぶつぶつと独り言を呟いてるんですけど、あれも普通ですか?」
「まあ、割と普通。神に祈りを捧げてる感じ」
「……壊れてませんよね?」
「元から不良品。気にしない気にしない」
「誰が不良品だ! 丸聞こえなんだよ! つうかさ、レノアは何でベッドで寝てる訳? 宿泊料払った? お前のような人間がいるから、民泊事業は駄目になるんだよ」
「失礼ですね、払ったに決まってるじゃないですか! ……足りなかったので、ちょっと借りましたけど」
「借りた? 誰に?」
「モネさんに」
俺は視線を羽虫に移す。すると、羽虫は食って掛かるような表情で睨み返してきた。怖ぇよ、まだ何も言ってないじゃん。
「えっと、それは俺のバッグから?」
「異議あり。私たちのバッグ」
「待って、マジックバッグって、誰でも出し入れ出来るの?」
「へぇ、それマジックバッグなんですか。随分高価な物を持ってますね」
だろう? 普通、こういうのって特定の人物以外は取り扱い不可なんじゃないの? まさか、誰でも使えたりするの? 防犯対策ザルじゃん。
「もしかして、このバッグごと盗まれたりもあり得る?」
「あり得ますね。マジックバッグって分かれば、殺してでも奪おうとする輩はどこにでもいますよ」
マジか。便利アイテムが一気に呪われたアイテムに様変わりするぞ。
「皆、この事は黙秘を貫いてくれ」
「僕たちは大丈夫ですけど、そもそもどうやって手に入れたんですか?」
「領主に貰った」
「馬鹿にしてますか? そんな高価な物を貰える訳ないでしょ」
「いや、マジだから。何なら、仲間に領主の身内がいるし」
「レノア、これは本当」
「モネさんが言うなら、本当のようですね」
お前の羽虫に対する異常なまでの評価は何なの? 最早、盲信と言っても過言じゃないレベルなんだが。
「タロウ、今日は防具を揃えに行く」
「いきなりどうした? 防具? モネがいるんだから、必要なくない?」
「私はレノアに付く。だから、自分の身は自分で守って」
「何で!? 俺のレベル15だよ? レノアなんて82もあるじゃん! 俺を守ってよ!」
「オッサンの頭と少女の頭、タロウだったらどっちを選ぶ?」
悔しいが、ぐうの音も出ない。そりゃ、俺だって電車に乗る時、オッサンよりは女性の隣の方が良いよ。でもさ、実際はオッサンの方が安心するんだよ? 女性の隣になったら痴漢という冤罪が孕んでいるのだから、気が気じゃないしね。
「という訳で、オッサンの頭も悪くないと思うんだけど?」
「それはオッサンの視点。私はレディ。はい、論破」
「ぐぅ」
「こんな情けないぐうの音は初めて聞きました。流石、モネさん」
黙れクソガキの盲信者! お前のせいで、羽虫が更に図に乗ったじゃないか。
「でも、防具屋なんて場所が分からないし」
「僕が案内しますよ」
本当に黙ってくれない!?
「お金も残しておきたいし」
「現在、いくらあるのですか?」
「……秘密」
「ざっと、108万ゴルド」
裏切ったか、羽虫!
「それ程あれば、余裕ですね。何なら、武器も買いましょうか!」
えぇ、本当に買いに行くの? マジでダルいんですけど。
俺って、物にあまり執着しないんだよね。ひのきの棒で序盤を乗り越えるから、店に寄り付かないし。後は、ドロップアイテムで適当に装備する位だからなぁ。
乗り気じゃない俺とは対照的に、女性陣は楽しそうに話していた。




