チェーンクエスト?
「それでレノア? は、何でオメガに行きたいんだ?」
「なぜ僕の名前に疑問符を付けるんですか? そんなに自信がないんですか? 本当に鳥頭じゃないですか。それに、オメガじゃなくてイメガです」
「名前覚えるの苦手なんだよ、察しろよ。お前の名前だって、常に二択の内から咄嗟に選んでるだけだからね」
「二択? それはレノアと間違えるほど似てるんですか? どんな名前なんです?」
「……ソフラン」
「全然違うじゃないですか! 一文字も合ってないし、間違える要素皆無ですよ! はぁ、何なのこの人」
うるせぇ、クソガキ! お前の名前が柔軟剤みたいだから、別の柔軟剤とゴッチャになるんだよ! 文句を垂れるなら、耳馴染みの良いCMを作った大企業様に言え。
「ソ……レノア、気にする必要ない。タロウは見ての通り人の形をした屑。真に受けると馬鹿を見る」
おい、そこの羽虫、今ソフランって言いかけただろ。お前がめっちゃ気にしてるじゃん。
「そう、ですよね。馬鹿になるのは嫌です。あの、モネさん、さっき僕の事をソ――」
「レノア! 今、話すべき事は何? レノアはなぜイメガに行きたいの?」
いやいや、カットインが力技すぎませんかね? 羽虫が焦ってるのは初めて見るが、なかなか悪くない。やっぱり、他人のやらかしを傍から見るのは最高の娯楽だな。
「僕がイメガに行く理由は、パジェスタ国の再興です」
【クエスト:パジェスタ国を再興せよ!】
「はぁ!? ちょ、ちょっと待って! おかしい! おかしいよね!?」
「どうしたんですかタロウさん、発作ですか?」
「レノア、暫く黙っててくれ。モネと話がしたい」
「タロウ、どうした? 焦りすぎ」
「クエストだよ、クエスト! 何でクエスト実行中に別のクエストが発生するの? おかしくない?」
「別におかしくはない。チェーンクエストなら普通」
チェーンクエスト? 何それ? アクセサリーの一種か? 昔のホストが財布に付けてたジャラジャラしたヤツか?
「チェーンクエストを知らない? 本当にゲーマー?」
「いつ俺がゲーマーだと言った? ゲーマーどころか、ここ最近のゲーム事情すら知らないんだが」
羽虫が、ふぅヤレヤレみたいな態度を取る。めっちゃムカつく。
「どっちにしろ、タロウはイメガに行き、ソラリオース家を壊滅させ、パジェスタ国を再興させるしかない」
いや、無理でしょ。何言ってんのコイツ。国だよ? 国を再興? 俺だけクリエイター系のゲームになってない? ゴトウなんて、八つ首のモンスターを倒しただけでクリアしてたのに、何で俺ばっかり面倒なクエストを抱えるわけ?
「仮に、万が一仮にパジェスタ国を再興したら、流石にクリアだよね?」
「さあ? 私からは何とも言えない」
言えよ! 何の為にお前がいるんだよ! あーあ、元々微々たるものだったやる気が、すっかり消え失せた。
「あの、僕も話に加わっていいですか?」
「あー、はいはい、どうぞどうぞ」
「何か、駄目っぽいんですけど」
「レノア、大丈夫。タロウは廃人になっただけ」
「全然大丈夫じゃないですよね!? もしかして、僕がパジェスタ国を再興したいと言ったからですか?」
「まったく関係ないから、安心して」
「そうですか、それなら良かったです」
関係大アリだし、まったく良くねーよバカ! 何なの? 仲間が増える度にクエストが発生する仕組みなの? ……あり得そうな所が怖い。あばばばば!
「いいか、俺たちはパーティーだ。一人は皆の為に、皆は一人の為に死ぬ気で頑張らなければならない」
「モネさん、タロウさんが壊れました」
「うん。ブラック居酒屋の店長になってる。たぶんチェーンクエストを連想して、チェーン居酒屋に意識が向いた。とりあえず電車に撥ねられるまでそっとしておこう」
「つまり、だ。リーダーである俺の立場上、君たちの能力を知っておかなければならない。レノア、君のレベルは?」
「これ、答えた方が良いですか?」
「レノア、気分が悪いと思うけど、付き合ってあげて」
「えっと、82です」
「82!? 凄いじゃないか。これからの仕事振りによっては、社員登用もあるから頑張ってくれ」
「モネさん、何言ってるんですかこの人」
「シッ、目を合わせちゃ駄目。下手をするとのみ込まれる」
「そうか、レベル82もあるのか。それで、シフトには週何日入れる? 稼ぎたいなら、オススメは週八だけど?」
「モネさん、もう無理です。知らない日にちが追加されてます」
「うん、私も怖くなってきた。ちょっと眠らせる」
「はい! 大きな声で、いらっしゃ――」
瞬間、俺の脳が揺さぶられた。何をされたのか分からない。でも、この急激な眠気は嫌いじゃない。
俺は意識を手放し、眠りについた。




