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人生はクソゲーだって? 本当のクソゲーを見せてやろうか?  作者: しらたま


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空も飛べるはず

 腹ごしらえを終えた俺は、食料を求めて街をぶらついた。

 改めてこの街の雰囲気を肌で感じる。家屋、それに基づく景観はチェコのプラハに似ている。行ったことないけど、グー◯ルアースで見たことがある気がする。


 そう思うと、海外に一度も行ったことがない俺は、ここが初めての海外旅行になるのか? だとしたら、感慨深いものがある。何故なら、俺は飛行機に乗れないから。

 皆、よく飛行機乗れるよね。俺はベルヌーイがどうのこうの説明されても、ただシンプルに鉄の塊で空を駆ける乗り物が怖い。傍から見るだけでも怖いのに、乗るなんて正気の沙汰じゃない。古今東西の厄除けの儀式を行い、八十八カ所のお遍路参りをした後ならワンチャンあるかどうか。その位、飛行機に苦手意識を持っている。

 まあ、それも今回の拉致でどうでもよくなったけど。有無を言わせぬ強制力、不便を追及したような圧倒的不快感、これで悪意がないのだから余計にタチが悪い。


 感傷に浸りながら街を彷徨っていると、何やら怒声が聞こえてきた。


 「このクソガキ! テメェのせいで俺の服が汚れたじゃねぇか!」


 「僕のせい? 貴方からぶつかって来ましたよね? その汚れも貴方が持ってる飲み物の汚れです。よって、僕には関係がありません。むしろ、被害者は僕だと思いますが? 大体、それお酒ですよね? 何で昼間からお酒飲んでるんですか? 貴方は働いてないのですか? 人生の敗北者ですか?」


 なんだ、あのガキ。眼鏡をクイックイッしながら、めっちゃ煽るじゃん。止めてあげてよ、相手のオッサンがぷるぷる震えてるから。泣いてない? 俺だったら泣いてるね。


 「うるせぇクソガキ! 黙って聞いてりゃいい気になりやがって!」


 「あ、手を挙げるんですか? こんな子供に? いいでしょう、殴ってみなさい。それで貴方は捕まります。そうすれば、この街も少しはいい街になるというものです。僕は絶対に貴方を許しませんからね」


 拳を振り上げたオッサンは、捕まるという言葉を聞いて、明らかに動揺しているみたいだ。

 バカ野郎! それでも男か! ほら、さっさとその憎たらしいガキを殴れ! お前が捕まろうが知ったことじゃないが、ああいう生意気なガキには一発お見舞いするのが大人の役目だろう?


 「頑張れオッサン! 負けるな!」


 「えっ?」


 「えっ?」


 え? 声に出てた? やっべ、二人ともこっち見てるわ。さっさと逃げよう。


 俺はその場を後にした……はずだったのに、何故か目の前に生意気なガキがいる。ホワイ?


 「何故? どうやって? そんな考えが丸わかりの顔をしてますよ、おじさん」


 「えっと、君、大丈夫だった? 心配してたんだよ、さっきのオッサンに殴られなかった? 良かったぁ、無事で。それじゃあね」


 俺は踵を返し、前に進む。が、服を後ろから引っ張られた。


 「何ですか、その言い訳。心配? 期待の間違いでしょう? 貴方は僕が殴られている事に期待してたのでしょう? でなければ、あんな野次は出せない。残念でしたね、僕が無傷で」


 「いや、何言ってるか分からないな。とりあえず、服を離してくれない? 伸びちゃうから」


 「離してもいいですけど、逃げないで下さいね? また追跡するのも面倒なので。ああ、どこに逃げても無駄ですから。そういう魔法を掛けたので、残念でした」


 はぁ? 魔法? 俺に? 意味が分からん。野次っただけで、そこまでする? 面倒臭い。

 俺はため息を吐き、振り向いてガキと対峙する。


 ガキは栗毛のボブカットに丸眼鏡を掛け、青いローブを身に纏っている。身長的に、歳は中学から小学校高学年の間くらいか?


 「何の用だよ、クソガキ」


 「それが素ですか? 思っていた以上に屑ですね。まあ、分かりますよ? 僕みたいな子供に舐められるのが嫌なんでしょ? でも残念、僕は――」


 俺はガキの横っ面をひっぱたき、パン、と乾いた音が響く。


 「え? 何で叩いたんですか? 捕まりますよ?」


 「知るかバカ。お前が早く用件言わないから、手が出ちゃったじゃん。どうしてくれんの?」


 「……情緒が終わってませんか? 何かの病気ですよ、それ。わ、分かりました、用件を言いますから、叩かないで! 本当に言葉通じてますか? 不安なんですけど」


 「ダイジョウブ、ツウジテル」


 「全然、安心出来ない。まさか、ここまで人として終わってるとは……いや、もう僕にはこの手しかないんだ」


 「そう言う決意とかどうでもいいから、早く用件を言えよ。今度は足が出るぞ」


 「おじさん、僕を仲間にして下さい!」


 「断る!」


 「いや、早い! 断るのが早すぎるよ! 普通、僕みたいな健気な子供が頼んだら、まず理由を訊くでしょ。それか、もしくは優しく諭すのが普通の大人じゃないの?」


 「まず、第一にお前は健気じゃない。第二に理由なんか、どうでもいい。第三に普通って何?」


 「えぇ、僕の知ってる普通がおじさんとは違うのかな? そもそも普通とは普遍的な部分で大まかな――」


 俺はガキが普通に思考の渦へと流れたのを見て、普通にその場を後にした。普通って、便利だね。


 さぁて、食料を買い込みますか。

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