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人生はクソゲーだって? 本当のクソゲーを見せてやろうか?  作者: しらたま


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ダルンさんのやさしい暗殺講座

 「まずは、基本的な事から始めましょうか」


 「はい! よろしくお願いします先生!」


 「先生ですか、なんかむず痒いですね。それはさておき、タロウさんは対象について何らかの情報を持っていますか?」


 対象? 標的って事かな? だったら、まったく知らない。領主という肩書きでしか認識していない。


 「人物像というのは、とても大事です。性格、好み、その日の体調などで、いつ、どうやって、どのような方法で仕留めるかが変わってきますからね」


 「あの、先生。実は、対象は今晩帰ってきます。なので、手っ取り早く今夜にでもサクッと終わらせようかなと」


 「タロウさん、暗殺舐めてます?」


 ヒエッ、ヤバい、なんか地雷踏んだ? ダルンさんの背後に般若が見えるような気がする。


 「いや、あの、違うんです! 一刻も早く、ご子息達を安心させたくって」


 困った時は同情作戦。決して俺の意思ではないと主張し、ケンのバカのせいにする。頼む、効いてくれ!


 「そうですか、子供達の為に。分かりました、今晩で仕留める方法を模索しましょう」


 効果はバツグンのようだ。やったね!


 「そうなると、確率が高いのは寝室での暗殺ですが、恐らく護衛が一人か二人はいるはずです。まあ、油断していると思うので、護衛は瞬殺出来るでしょう」


 ん? 待って、話が変わってない? 領主暗殺の話だよね? なんか、強襲する流れになってない?


 「あの、護衛を瞬殺するのは誰が?」


 「えっ? もちろんタロウさんですけど」


 いやいやいや、ダルンちゃ〜ん、冗談も程々にしてくれない? 俺が護衛を瞬殺? 逆、逆ぅ! 俺が瞬殺される側!


 「そう言えば、先生は俺のステータス知らないですよね?」


 「ええ、ですが、先日冒険者二人を瞬殺したと専らの評判ですよ」


 ああ、ピンクと黒の変態レンジャーの事か。あいつらは俺じゃなくて、羽虫が殺したようなもんだしな。実際、俺のレベル上がってないらしいし。羽虫が姫プレイ勘弁とか抜かしてたが、本当に経験値入らないのな。もっと俺に優しくしてくれよ。


 「先生、俺のステータスは2です」


 「えっ? 2000ですか?」


 「2です」


 「……200ですか?」


 絶対聞こえてるよね? そんな不安そうな顔しないで。俺が悲しくなるから。


 「……本当に2なんですか?」


 俺はコクリと頷く。


 「えっ、じゃあ、あの冒険者達は? それを目撃した人達は? 皆が嘘を付いていたってことですか?」


 そうだよね、普通信じられないよね。鑑定が使えない弊害が、ここでも表れたか。

 どうしようかと頭を悩ませていると、羽虫が俺の帽子からズリ落ちた。このカス、寝てやがる。

 俺は帽子を取り、羽虫と一緒に端へ寄せた。これで俺は、正真正銘ステータス2だ。


 「先生、軽く俺の手を握って下さい。それですべてが分かります。あ、本当に軽くですよ?」


 ダルンさんは訝しがりながらも、俺の手を握った。瞬間、俺の手の骨が砕けた。


 ギャース! 軽くって言ったじゃん! ああ、俺の手がパーから歪な形のチョキに変化してる。


 「えっ? 熟れたトメェイトより柔らかい」


 ダルンさんの独り言などガン無視で、俺は手の痛みに耐えていた。すると、どういう訳か、痛みが引いてくる。無我の境地に至ったか?


 「どうですか? 手は治したはずですが、まだ痛みますか?」


 「いえ、治ってます。ちゃんとグーパーが出来ます。これは魔法ですか?」


 「はい、治療魔法です。ちゃんと効いて良かった。それにしても、ステータス2がこれ程とは……あ、すみません、こんな事言ったら気分悪いですよね?」


 「いいえ、事実ですから。それより、このステータスを考慮した上での暗殺方法をお願いします」


 「そうなると、必然的に毒殺になってしまいますね」


 「毒殺! 良いじゃないですか!」


 「ですが、毒殺をするには経験がとても重要です。主に、気体と液体に別れるわけですが、今回の場合、気体は使えません。領主邸の皆が死んでしまいますからね」


 ああ、サ◯ンやVなんちゃらみたいなやつね。無差別は良くない。俺も自爆しちゃうもの。


 「なので液体による毒殺が、最も確率が高いと思いますが、これにも問題があります。特に上流階級の人間には、必ず毒見役が存在します」


 「やっぱりいるんですね、毒見役」


 「王族なら確実ですし、領主程度なら五分五分ですが、いると考えて行動した方が良いでしょう」


 「先生、毒見役ごと毒殺するのはどうでしょうか?」


 「毒の種類にもよりますが、難しいでしょうね。即効性の場合、毒見役だけが死んでしまいます。遅効性の毒であれば可能性もあるでしょうが、その場合、どの料理にどれだけの量を入れればいいのか誤ってしまうと、領主が生きている内に死んでしまい、領主が治療を受けるかもしれません」


 「毒の量の判断が難しいですね」


 「はい、なので経験が必要なのです」


 どうしよう。もう一か八かで、毒見役がいないものとして考えるか?


 「ですが、タロウさんに経験は必要ありません」


 「はい?」


 俺が素っ頓狂な声を出していると、ダルンさんは手持ちの革なめしのバッグから、親指程の茶色い小瓶をテーブルに載せた。


 「これは私が作った毒液です。私がタロウさんの経験不足を補います。これを料理か飲み物に一滴混ぜ、アルコールを飲ませれば死ぬでしょう」


 「アルコールを?」


 「はい、これは単体で摂取しても毒にはなりません。けれど、アルコールと混ざることで毒になるのです。一滴につき、大体一日は体内から消えないので、その間にアルコールを飲ませて下さいね」


 そう言って、にっこり笑うダルンさん。


 チョー怖ぇ! え? 作った? 自作ですか? アンタ何してんの? どれだけ実験したんですか? 考えれば考えるほど、ガクブルですわ。


 「あ、あの、いくらで売っていただけますか?」


 「そうですね、それじゃここのカフィ代をお願いします」


 先生ぇ! 俺が女性だったら、イチコロですよ。こんなスマートな人間に、俺もなりたかった。

 ダルンさんの新たな一面に、俺はしばらく頭がクラクラしていた。

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