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人生はクソゲーだって? 本当のクソゲーを見せてやろうか?  作者: しらたま


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現実逃避の常習犯

 朝食を食べ終えて、メイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みつつも、俺の気分は沈んでいた。

 朝食は文句無しに美味しかった。カリカリのベーコンエッグにロールパン、それにコーンスープ。帝国ホテルで出されてもおかしくない味だった。帝国ホテルなんて行ったことないけど。

 では、なぜ? 俺をこんなにも憂鬱な気分にさせている原因は何だ? 決まっている、今日はケンの親父が帰ってくるからだ。その事実が俺を朝から苦しめている。


 今更何を言ってるんだ、と思われるかもしれないが、俺はこの時になっても、未だに殺害する方法を決めていない。それは単に、面倒事の先延ばしに他ならない。

 クエストが発生した時は、ケンの親父を殺せばいいんでしょ、と楽観的に考えていたが、時間が経つに連れ、それって難しくない? なんて思う程に考え方が変わった。

 だって、婿養子と言えど領主だよ? 警備が手薄な訳がない。恐らく家の中でさえ、護衛が付いているんじゃなかろうか。

 そんな事を昨晩の夕食時に思った訳だけど、目先の誘惑に溺れ、明日の俺に任せて食事をしっかり楽しんだ。その昨日の俺のツケが今やって来た訳だ。

 このままだと、馬鹿な上に無計画という悪魔融合された、現実の俺という屑が召喚されてしまう。なんとかせねばなるまい。俺は急いで外へ出る準備をした。


 外に出た理由は、特にない。と言うか、それを見つける為に外へ出た訳だから、理由を訊かれても困る。ケンの奴なんかは、特に訝しがっていたな。逃げると思われたか? 舐めるなよ、逃げられるんならとっくに逃げてるわ。

 俺は適当に人がいる方へと向かう。今晩にもケンの親父は帰ってくるに違いない。その時までには、俺も領主邸に戻っていたい。


 やけに人がいる通りに出たと思ったら、市場のような露店が軒を連ねていた。大体の住民は、ここで食料を買うのだろう。俺も試しにゲッコー串なるものを300ゴルドで買った。味は癖もなく淡白で美味しかった。ゲッコーが何なのか分からなかったけど。


 「タロウ、私にも」


 ちゃっかり付いてきたモネが催促する。


 「ゲッコーでいいか?」


 「ゲッコーはいらない。甘い物がいい」


 そう言うので、アイスクリームらしき氷菓子を与えた。800ゴルドもした。甘い物は高いのか。


 「ところで、ゲッコーって何?」


 「カエル」


 へぇ、カエルって美味しいんだね。好き嫌いのない食生活で良かった。たぶん昆虫類を出されても、俺は平気で食すだろう。もちろん、根底に味の良さがあっての話だが。


 それぞれの店を見て回るのは楽しいが、まったく計画が浮かばない。何かないか、と懸命に辺りを見渡すと、草ばかり置かれた店があった。


 「ニギリ草、ニッパー草、シチリン草? おばちゃん、この草って何に使うの?」


 「これらを使って薬にするのさ、傷薬や毒消しに疲労回復ってところだね」


 天啓! 圧倒的天啓がタロウに降った! なんてナレーションをつけるくらい、ビビビっと来ましたよ。毒消し、つまり、毒を持つナニカが存在するという事。この世界の医療技術がどれ程のものかは知らんが、所詮はゲーム。現実には及ばない、はず! これはもう毒殺決定でしょ。


 「ねえ、おばちゃん。毒ってどこで買えるかな?」


 「はぁ? アンタ犯罪者かい? 冗談じゃないよ! 帰りな!」


 あまりの剣幕に、俺はしょんぼりしながら退散する。


 そしてタロウは気付いてしまった。己の過ちに。医療技術どうこうじゃなく、魔法があるという事実を。


 「ちょっと、人の頭の上で勝手にナレーション入れないでくれない?」


 「でも、事実。まさか気付いてなかった?」


 「き、気付いてた、よ? ホントダヨ? でも、いくら魔法だからって、そんな万能じゃないでしょ?」


 「適正を持ってる人なら、死の蘇生以外は万能」


 「えぇ、かなり万能じゃん。狡くない? そんな人いんの?」


 「珍しいけど、稀にいる。教会の幹部レベル」


 出たよ、教会。嫌なんだよな、権力の臭いがぷんぷんしてさ。


 「この街に教会ってあるの?」


 「知らない。興味がない」


 こいつ、本当に俺のサポーターなの? 興味とか、思いっきり私情挟んでない? っていうか、どうするよ? 毒殺って考えは良いと思うんだけどなぁ。問題は、毒の入手が分からない事と、そもそも領主に毒が効くのかって事。

 なんかさ、足音を消すクセが身に付いてる一家とか、平気で毒に耐性持ってるじゃん? 実際、歴史的に見ても、毒殺って常套手段だし。

 あ! 毒見が居るか! そりゃ居るよなぁ。どうしよう、俺の残念な頭ではこれ以上良いアイデアなんて生まれないぞ。


 俺が一人であれこれ頭を悩ませていると、何処からか青年が声を掛けてきた。


 「あ、タロウさん? お久しぶりです」


 「え? ダルン、さん? ダルンさん!」


 俺が唯一覚えている人の名前。お人好しのダルンさんと再会を果たした。

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