下世話な話
ふぅ、やっぱり風呂はいいな、心が洗われるような気がする。心の洗濯とは、よく言ったものだ。特に今日のような雑多な用件を終えた後なら尚更だ。
「アニキ! ピンクパンサーと黒棺を殺ったって本当ですか!?」
俺は風呂の時間を邪魔されるのが嫌いだ。だから一喝してやろうと振り向いたが、真っ裸のケンを見て逆に息を呑み込んでしまった。
こいつ、なんてモンをぶら下げてやがるんだ。クソっ、馬並みか?
こういうしょうもない事で自尊心が傷付く、それが男だ。いくら気にしてないと口では語っても、自身の男である象徴を比較せずにはいられない性なのだ。それが、男だ。
「聞いてますかアニキ?」
「あ、ああ、何だっけ? ピンクローターと黒くて太くて大きいものだっけ?」
「全然違いますよ! ピンクパンサーと黒棺ですよ! 黒棺に至っては、黒しか合ってないじゃないですか!」
んなこと言われても、大体はお前のせいだからね。お前がそんな立派なブツを見せびらかすから、唯でさえシャイな俺のジュニアが更に縮こまってるじゃないか。ウチのコはお前んトコと違って、内向的な性格なんだよ。いきなり世界レベルを見せないでくれる? ウチにはウチの教育方針があるんだからさ。
「つうか、ピンクパンサー? それって人名?」
「そうです、冒険者ギルドでアニキに突っかかった奴です」
「あのモヒカンか? あいつ、そんな名前で呼ばれてんの? 本物のパンサーに謝れよ」
「通り名ですけどね、そいつと黒棺が死んだって報告があったんですよ。アニキがその場に居たって情報も」
ピンクパンサーがモヒカンだとすると、黒棺はあの魔法使いか? いくらなんでも名前負けし過ぎだろ。黒棺って呼ばせたいなら、せめて九十もの魔法と詠唱破棄は覚えておかないと恥かくぞ。
「ふぅん、結局死んだのか」
「やっぱりアニキが殺ったんですか?」
「殺ったって言うか、あいつらに殺されそうになったから、正当防衛だな」
「それは目撃者から証言が得られてるらしいです。なので、アニキが捕まることはありません。ですが、よく無事でしたね、正直、アニキの事舐めてました」
だろうよ。コイツには、俺がくそ弱いと伝えてあるしな。
「まあ、モネの力だけどな」
「なるほど、モネの姐御と力を合わせたって事ですか。それでも凄いですよ、これで冒険者のマフィアは四人になりましたしね」
「は? どういう事?」
「え? ですから、ピンクパンサーと黒棺はマフィアなんですよ。もしかして知りませんでした? 俺はてっきり、知っててわざわざ絡まれたのかと思ってました」
知らねぇよ。それどころじゃなかったからな。ま、何にせよ普通の冒険者じゃなくてラッキーだな。依頼する冒険者が省けた。どちらにせよ、モヒカンは雇わなかったと思うけど。待てよ? 赤、青、黄の信号機マフィアに、ピンクと黒。まさか?
「なあ、冒険者のマフィアに頭が緑か白の奴っている?」
「ええ、今日ギルドに来てなかった奴が緑ですね。ピンクパンサーと黒棺のパーティーメンバーです」
戦隊ヒーローかよ! マフィアがヒーローって、何の冗談? バカなのかアホなのか、それとも両方か。どちらにせよ、間抜けなのは確かだな。
「じゃ、俺はこれで上がります。それでは失礼します」
え? お前、湯に浸かってないよね? 何しにここへ? まさか、真っ裸になって見せびらかす為か? だとしたら、許さんぞ。マフィアを潰すより先に、お前の大事な部分をもいでやる。
俺は湯に浸かりながら、沸々と怒りを募らせた。




