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異文化交流

 はい、死にました。首もあります、肩も元通りです。めでたしめでたし。


 じゃねーよボケカス! 何だよあの死神みたいなヤツ! 序盤でエンカウントしちゃダメだろ! 夜だからって、モンスターもパワーアップしちゃいましたか? 知るかボケ! 余計な所であるある挟んでんじゃねーよ! つーか、セーブポイントの意味は? ここが安全じゃない意味は? パードゥン?


 何がムカつくって、数えればキリがないけど、敵の名前はおろか、体力ゲージすら不明なことだ。いや、精神的にキツイでしょ。マグレで俺の攻撃が当たった場合、手応えあり! とかできないじゃん。まぁ、実際には逃げの一択なんだけど。


 しかも、ぬるっとエンカウントするのな。ホント止めてほしい。音響仕事しろよ。いきなり奇襲するとか、それは弱いヤツがやっていいことだからね。


 唯一スライムよりも死神がマシだと思ったことは、サクッと殺してくれることだね。あの鎌、すっごい切れ味だから、首飛ばされてもあんまり痛みを感じなかった。速すぎて、死んだ事も【DEAD END】でようやく理解したくらいだし。


 色々とお粗末だとは思っていたが、ここの運営は俺が考えてる以上に頭がおかしいようだ。

 頭がおかしいヤツの対処方は、一切関わらない事だけど、俺はそうも言ってられない。がっつり当事者だし、助けを呼べる環境ではない。では、どうするか? 頭のおかしいヤツには、こちらも頭がおかしくなるしかない。とは言え、付け焼き刃でどうにかなるとは到底思えないが。


 とりあえず、出来ることから始めよう。

 危機管理はこれまで以上に配慮し、来るものは拒み、去るものは追わずを徹底しよう。


 そして遺憾ながら、この草原に留まるという最大のアイデアが水泡に帰した今、物語りを進めるしか選択肢が残されていない。嫌で嫌でしょうがないが、痛いのはもっと嫌なのだ。


 どこへ向かえば良いのか分からんが、まずは太陽を背にして歩き始める。前は太陽に沿って歩いたせいで、スライムにやられたからな。


 歩き始めて、一時間ほどか? そんなに経ってない? 分からん。気を張り過ぎて、ものすごく疲れた事は確かだ。何せ、スライムを目視したら一目散に逃げねばならず、慎重に慎重を重ねて重いが大渋滞になっているのである。


 少し休憩するか、と考えた所で、景色が一変した。


 は? 森なんですけど。俺の危険センサーがビンビン反応してくる。すぐさま回れ右をし、一歩踏み出した。


 草原に戻った。振り返り、辺りを確認する。

 草原は未だに終わりを見せず、延々と連なっているように見える。だが、ここから一歩進めば……はい、森です。


 もう一度草原に戻ってきた俺は、この現象はゲームのフレームアウトだと判断した。ということは、東西南北それぞれに違うエリアが存在していると考えた方がよさそうだ。


 森かぁ、でもなぁ。行きたいか行きたくないかで言えば、断然行きたくない。こちとら、半袖にハーフパンツおまけの裸足ですよ。森舐めんなって装備ですよ。

 平時でも話にならないのに、ここでは更に輪をかけて話にならない。俺でさえ鼻で笑うもの。


 でもさ、さっきチラッと見えたんだよね。

 ログハウスがさ。

 人居るでしょ! 初めての村人だよ! ここで行かずして、いつ行くのよ! 今でしょ!


 自分に気合いを入れて、森へと足を踏み入れた。


 はい、早速足の甲を切りました。痛っぇ。だから嫌なんだよ。歩きにくいったらありゃしない。あのログハウスで靴とか貸してくれないかな?


 モンスターに怯えながら進み、ようやくログハウスの前まで着いた頃には、陽が沈みかけていた。

 これは無理を押してでも泊まらせていただこう。夜になったら、比喩なしに死が待っている。


 それにしても、このゲームは凝ってるのか適当なのか分からんね。木なんか一種類しか見当たらないし、大きさや太さも一緒だ。古き良きRPGを体現していると感じる。執拗なまでの殺意がなければ、楽しめるのかなぁ。まあ、まずは人との交流を楽しもうか。


 俺はログハウスの入り口を軽く二回ノックした。

 中から物音が聞こえる。待つ間に、笑顔を張り付ける。何事も、第一印象で決まるのだ。


 ガタっと、内側から何かを外す音がする。閂かな? 慎重なことは良い事だと思います。


 ギィと木の扉が、顔半分ほど開いた。

 ボサボサの髪に白人系の顔立ちが目に入る。


 シャ◯ニングかな? 目が充血してるけど大丈夫おじいちゃん? メッチャ怖いんだけど。いかんいかん、笑顔笑顔。


 「ハゥワィユゥー?」


 さぁ、交流しようじゃないか!


 「✱✱✱✱✱✱」


 ……ちくしょう! 翻訳機能がクソすぎる! 何言ってんのかさっぱり分からねえ!


 「✱✱✱✱✱✱」


 おじいちゃん、メッチャ喋ってくるじゃん! とりあえず、ジェスチャーで何とかするしかない。


 俺は笑顔で頷きながら、親指を立ててグーグーとリアクションする。


 すると、おじいちゃんは奥に引っ込んでいき、ガタゴトと何かを持ってきた。


 ボウガンだった。矢じりが俺に向けられる。


 おい、ジジイ! 血迷ってんじゃねーぞ! や、止め、アガがががぁぐぇげぇむしゅな


 【DEAD END】

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