袖振り合うも多生の縁
あ~あ、まさか軍が使えないとはな。どうすんの? もうケンの親父が帰ってきちゃうよ? 殺してから考えるか? どうせこの戦国時代では、あっちも軍なんて出せないでしょ。
「アニキ! 兵士を纏める良い方法知りませんか?」
「黙れバカ。突然入ってきて、無意味な事を話し始めるな」
「重要な事じゃないですか! 俺が兵士を監督するんですよね?」
「ああ、それ、無しになったから。お前の兄貴に止められた」
「なんだって! ちょっと兄さんに理由を訊いてくる」
「行くなバカ。極々真っ当な理由だ。戦争を仕掛けたら、別の所からこの街が狙われるかもしれないんだろ?」
「まあ、そうっすね。頻繁に戦争してる国なんで」
分かった上での行動かよ。何なのコイツ。散々あっちの街には配慮して、住民は傷付けたくないとかほざいてたくせに、自分の街には無頓着かよ。攻める事しか考えられない病気なの? 絶対、トリガーハッピーになって味方を殺す奴だよ。何にせよ、コイツに領主は無理だな。
「お前の親父は、いつ帰って来るんだ?」
「明日には帰って来るでしょうね。どうします? 街に入ったら速攻でやっちゃいます?」
「バカかよ! そんな事したら、俺が指名手配犯になるわ! 軍は使えなくても、あくまで主犯はソラリオース家の当主に偽装しないとダメだ。だから殺るのはこの家でしかないんだよ」
「ふーん、色々面倒ですね」
本っ当にな! 何で俺がこんな面倒に巻き込まれてると思ってんの? お前のせいだよ! クエストさえ発生させなければ、お前の親父なんてどうでも良かったのに。クソっ! 殺すんなら、コイツを殺しとくべきだった! 誰にも見られてない場所で殺せば、指名手配されなかったかもしれないのに。
「それで、軍が使えないことは分かりましたけど、他にアテはあるんですか? やっぱり俺とアニキだけでカチコミますか?」
何そのムリゲー。戦力が違い過ぎる上に、万が一上手くいっても、コイツが死んでたらオールバック兄貴に恨まれる糞仕様。ないな、二人で行くのは無理。だとすると……。
「冒険者しかないよな。ケン、冒険者に知り合いはいるか?」
「ええ、まあいますけど、あまりオススメしませんね」
「何で? 弱いとか?」
「俺が知ってる冒険者は、みんなマフィアなんです」
何でだよ! そんな状況、お前がもうマフィアだろ! コイツ、もしかして星の痣とかあるんじゃない? だからマフィアが引き寄せられるんじゃないの?
「冒険者ギルドには、どれくらいマフィアが居るの?」
「俺が知ってる限りだと、三人組みのパーティーが二つなんで、六人ですね」
「少ないな。冒険者ってそんなに数がいないの?」
「冒険者ですからね、みんな冒険するんですよ。アズーレを拠点にしているのは、大体二、三十人って所ですかね」
「まあまあいるじゃん。で、マフィア以外の冒険者に知り合いはいないの?」
「いないんすよね。何故かみんな俺の事を避けるんですよ」
それ、お前がマフィアだと認知されてるからじゃないの? 面倒だから相手にされてないんじゃない? でもコイツ、街では慕われてたよな? ああ、領主の息子だからか。忘れてたわ。まあ、マフィアの息子でもあるわけだけど。
「これから冒険者ギルドに行くぞ、案内しろ」
「え? でも、さっきも言った通り、俺の知り合いマフィアですよ?」
「だからだよ。一度見ておきたい。冒険者に依頼する時の為に必要だからな。後、冒険者ギルドでは、俺をお前の知り合いだと悟られるなよ」
「えっ? じゃあ俺はどうしたら良いんですか?」
「マフィアの冒険者達と話をしてろよ」
「えぇ、俺、あいつら苦手なんすよね」
知るかバカ! 俺だってお前が苦手だわ。嫌いと言ってもいい。
とりあえずケンにマフィアホイホイしてもらって、しっかり顔を確認しないとな。依頼を請けた相手がマフィアでした、なんてバカな死に方はごめんだよ。
気が乗らないけれど、一先ず冒険者ギルドに行ってみますか。




