国の特色
風呂上がりのフルーツジュースを飲んでいると、部屋のドアがノックされた。
「開いてるから、さっさと入れよ」
どうせケンだろうと高を括っていた俺は、横柄な態度で応えた。
「すまないね、お邪魔するよ」
しかし、入ってきたのはケンの兄貴だった。
俺は咄嗟にだらけた佇まいを改め、ソファに座り直した。
「いえいえ、こちらこそ長居をしてしまって申し訳ありません。あ、ソファにどうぞ」
ケンの兄貴が対面のソファに座るのを待ちながら、俺は段々と怒りが込み上げてくる。
何だよコイツ、急に来るなよな。いくら家主だからって、プライベートを邪魔する権利はないはずだ。って言うか、名前何だっけ? ややこしい名前だった事だけは覚えているけど。
「デューからある程度聞いたんだが、タロウ君からも直接話を聞きたくてね。戦争するんだって?」
「ソラリオース家を壊滅させるには、その方法しかないかな、と思っています」
「親父の殺人容疑でソラリオース家当主を嵌めるわけだね。確かに、出来なくはない。出来なくはないけれど、あまりよろしくもない」
「何か問題があるのでしょうか?」
「タロウ君はパジェスタ国について、どれ程の知識があるのかな?」
知識? あるわけないじゃん。そもそも、この世界について俺は何も知らない。本来教えてくれるはずのナビはポンコツで、主に至っては放置プレイを楽しんでやがる。ああ、なんて可哀想なんだ俺。
「すみません、辺境からやって来たもので、パジェロ国については何も知らないんです」
「パジェロ?」
「え?」
「え? ああ、聞き間違えか、すまないね。話を戻すと、タロウ君はパジェスタ国について、つまり国の特色を知らないって事で良いかな?」
「はい、知りません。特色ですか?」
「そう、特色。どの国にも様々な特色がある。ある国では鍛冶が盛んであり、またある国では魔法に傾倒していたり、本当に様々なんだ」
ほぇー、そうなんだ。魔法の国か、ポッターのような世界観なら行ってみたいな。
「この国の特色は何ですか?」
「そう、それが問題なんだ。パジェスタ国の特色は、戦争なんだよ」
ん? どこが問題? 戦争は確かに嫌だけどさ、今回の件に関して言えば、渡りに船なんじゃない?
「分からないって顔だね。まずは、パジェスタ国の成り立ちから話そうか」
いや、結構です。とは、流石に言えないが、正直どうでもいい。えっと、小国が乱立して、絶えず戦争を始めて、ようやく一つの国として成り立った訳ね。まあ、ここらは現代の欧州らへんだから、歴史的にも妥当と言えば妥当だよね。で、問題は? ジジイの長話じゃないんだから、簡潔にまとめてほしい。
「そして現在、この国には首都がない。さらに言えば、王がいない」
はぁ? 何いってんのコイツ? 王がいない? いやいや、どうやって国を運営してんのよ?
「それでは国が滅びると思うのですが?」
「もう滅びたんだよ、パジェスタ国は。さっきも言った、戦争という特色のせいでね」
「じゃあ、今はどこが治めているんですか?」
「どこも。各地で戦争が今でも行われているよ」
紛争地帯かよ! 絶対設定ミスだろうが、これ。紀元前のヨーロッパを再現してどうしたいの? マケドニア統一を目指したいの? それなら他でやっていただきたい。
「それで、問題とは?」
「気付かないかい? こちらが軍を集めイメガに攻め行ったとして、アズーレの街が他から攻められないと断言できるかい? そういう危うさと常に隣り合わせなんだよ、この国は」
えぇ。最悪じゃん、この国。羽虫が地理的に恵まれているって言ってたけど、本当に? もしかして南極の方が安全なんじゃない?
「つまり、軍は動かせない、と」
「領主代行としては、街の安全が第一だからね。すまない」
「いえいえ、当然ですよ。むしろ、教えてくださって、ありがとうございました」
「そう言ってもらえると助かるよ、ありがとう。親父に関しては、タロウ君の判断に任せる。弟の頼みだからと言って、無理はしないでくれ」
そう言って、オールバック眼鏡兄貴は部屋から出ていった。
はぁ~、めんどくせぇ。ケンの頼みだって? あいつの頼みだけだったら、速攻断ってるわ。問題はクエストなんだよなぁ。
あ~あ、ここは本当にクソッタレな世界だ。




