戦争、しちゃう?
「兄さんの了承を得ました。ですが、兄さんは領主代行として動けない為、諸々よろしくとの事です」
ケンが緊張した面持ちで話している最中、俺はベッドでゴロゴロしながら鼻をほじっていた。
「ふーん。で、報酬は?」
「マジックバッグと200万ゴルド、これが精一杯です」
流石は貴族、俺が提示した金額よりも上乗せしてきたな。これ以上ゴネると、俺の身が危ういか。
「了解した。最大限の配慮に感謝する」
俺がそう言うと、あからさまにケンがホッとした。
「それで、ソラリオース家を壊滅させる訳だけど、お前に良い案があると考えているんだが?」
いや、本当に頼むよ。言い出しっぺが、猪突猛進にガンガン行こうぜ、なんてお終いだからね。緻密、とまでは言わないが、せめて勝算のある作戦が聞きたい。
「任せて下さい! 俺は何年も前から、どうやったらマフィアを壊滅させられるか考えていましたから」
おお、ケンが頼もしく見えるぞ! 最初会った時に、俺をボウガンで撃ち殺そうとした奴と同一人物だとは思えない。
「聞かせてくれ」
「はい! まずは俺とアニキが、ソラリオース家に突撃します」
ん? 初手から怪しくない? ま、まあ、まずは聞こうか。
「そして、ソラリオース家の当主と幹部を皆殺しにします。幹部は五人いますけど、何とかなるでしょう!」
おい、誰だこの馬鹿を頼もしいって言った奴は。何とかなるでしょう? なるか、ボケ! おいおいマジかよ、何年も考えてとか言ってなかった? それがコレ? 頭がポリゴンになってない? はぁ~、所詮はケンか。そりゃ脈絡もなく、俺にボウガンを撃ち込む訳だわ。
「それで? 当主と幹部を皆殺しにした後は?」
「え? それで終わりですよね?」
「バカかよ! 終わるのは俺達の命だろうが! 構成員が黙ってる筈がないし、帰りに狙われるだろ! お前さぁ、もうちょっと思慮深くなれよ。マフィアだぞ? まず当主と幹部をどうやって殺すんだ? 護衛が絶対いるに決まってる。そうなると、二人だけで行っても無駄死にだ」
「でも、これ以上人を増やすと、相手に気付かれます」
「何で? いいじゃん、気付かれても。この街にもマフィアが潜んでるんだろ? どうせ気付かれるって」
「じゃあ、どうしたら……」
「お前の親父を最大限に活かす」
「親父を? でも、親父はアニキが殺すんですよね?」
「うん、殺すよ。でも、公に発表する犯人は、ソラリオース家だ。そうだな、この場合当主が一番効率が良いかな」
「効率? 何の為に?」
「おいおい、お前は元兵士だろ? この街の領主が暗殺されたんだ、軍を動かすに決まってるじゃないか。動かせるよな、軍」
「た、確かに、大義名分は立ちますが、そうなると、イメガとの戦争になりますよ?」
「だろうね。そもそも訊きたいんだけど、国として戦争は禁止されてるの?」
「パジェスタ国の自治権は、その街の領主に委ねられています。だから、禁止ではないです」
「じゃあ、やろうか。戦争」
「で、でも、それだと、イメガに住む一般市民も巻き込む可能性が」
「だから? 目的を間違えるなよ、ケン。お前はマフィアを潰したいと願った。ならば、大元のソラリオース家を潰す事になる。貴族を潰すんだから、多かれ少なかれ市民に影響は与えてしまうものだろ?」
「それは、そうですが。何かモヤモヤします」
「だったら、お前が兵士を纏めればいい。一般市民を巻き込みたくないのなら、お前が責任を持って兵士を監督しろ」
「わ、分かりました! では、今から兵士を集めて来ます!」
「バカ! 行くなバカ! 何なのお前? ちゃんと話聞いてた? お前の親父がまだ死んでないでしょうが! ったくよぉ、お前はとりあえず兄貴に報告しろ。いいか? ちゃんと報告するんだぞ? 間違えたら、ぶっ殺すからな」
「う、うす」
慌ただしく部屋を出て行くケンを尻目に、俺は途方もなく疲れてしまった。
はぁ~、戦争か。やりたくねぇ。
平和主義者の俺が、やりたくもない戦争に身を投じなければならない。そりゃ、ちょっとは戦争に向けてアシストしたけどさ、そうしないとあのバカが俺を巻き込んで自爆する勢いだったのだ。仕方ないよ。
今はただ、ゆったりと湯に浸かりたい。
俺は早々に部屋を出て、風呂場へ向かった。




