ゲームなんてクソくらえ
この豪邸に泊まって四日目の朝を迎えた訳だが、俺の気分は優れない。
それもこれも、あのオールバック眼鏡が居座るなよ、と釘を刺したからに他ならない。
あ〜、出ていきたくない。ずっとこの豪邸で過ごしたい。あと何日過ごせるだろうか。何とか騙しながら、一ヶ月くらいいけないかな? いけたら良いな。
つうかさ、俺は恩人なんだよね? あのクソジジイがこの家の誰をぶっ殺したのか知らんけど、俺はその仇を取った事になるんだよね? だったらさ、俺はもうこの家の一員じゃない? そうだよ、一人減ったんなら、俺がそこに入れば良いんだよ。俺はここん家の子になる!
「ってな事を考えたんだが、どう思う?」
俺は紅茶を飲みながら、羽虫に聞いた。そして、このモーニングティーはメイドさんが淹れてくれた。ますます出ていきたくない。
「浅はか。それに発想が猟奇的」
「どこがだよ。俺一人くらい養える財力はあるだろうに。なんなら、執事見習いになってもいいけど?」
「失った家族と、赤の他人のタロウを同一視する訳が無い。論理的に破綻している」
クソっ、ぐうの音も出ねぇ。
「だったらさ、ここで働かせてもらうのはどうよ? 恩人の頼みなら無碍にもされないだろ?」
「タロウ、正気? ゲームでひたすら働いて満足? 一生クリア不可能」
いや、だって、この際ぶっちゃけるけど、クリアなんて無理だと思ってんだよね。だからこそ、この居心地の良い場所から離れたくない訳で。
大体さぁ、目的地も分からないまま進めるかって話ですよ。だから羽虫にはナビ要素を期待してたのに、この有り様ですわ。
「モネは俺にクリアして欲しいの?」
「当然。私も解放されたい」
「だったら、少しはヒント出しても良いんじゃない?」
「ヒントなら街に入る前の旅人からもらってた」
「ん? それって、ダルンさん?」
「そう。重要な事を話してた。まさかピンポイントで彼を選ぶとは思わなかったから、タロウを少し見直した」
マジで? そんな話したっけ? いやいやいや、兄弟の話しかしてないはず! いやでも、ちょくちょく知らない単語が出てきたような。
「何で言ってくれなかったの! 彼は重要人物ですってさ! そうすれば俺だって必死に耳を傾けてたよ」
「まさか覚えてない? 落胆。所詮はタロウ」
えぇ、俺が悪いの? まぁ俺が悪いんだろう。でも、俺だけが悪いのかは別じゃない? 羽虫、お前も悪いよね。
それよりも困ったな。どうやらこのゲーム、俺が苦手としているRPGのようだ。俺の考えが正しければ、街の人から一人一人話を聞いてようやく目的地が分かるシステムだろう。
……言ったよね? 俺はそういうのは大抵スキップして進めるってさ。それでもクリア出来たのは、ゲームのシステムが優秀だったからに他ならない。スキップしても、目的地が地図上で点滅してるんだもの。分かりやすいったらありゃしない。
え? そんなのRPGじゃないって? ご尤も。敢えて言おう、俺はRPGが苦手だ。
俺が一人悶々と頭を悩ませている所で、部屋のドアが勢いよく開けられた。
「どういうことっすかアニキ! 俺を旅に連れて行かないなんて、契約違反ですよ!」
「黙れバカ。そんな契約した覚えはない。つうかさ、お前何で領主の息子って事を隠してたん? そっちの方が罪重いだろ」
「冒険に、領主の息子なんて肩書き関係ないと思ったから」
「バカが! 関係大有りだよ。万が一お前を死なせてみろ、俺が指名手配されて殺されるわ!」
「俺が死ななきゃいいんでしょ!」
「そういう奴ほど、呆気なく死ぬんだよ。後、俺も死ぬ。冗談で言ってるんじゃない。俺のステータスは2だ」
「えっ? 2? たったの2? 俺より弱い」
ふははは! 混乱しているな若造! そうだ、俺はお前より弱い! ……ん? なんか変だな? 何でコイツは自分のステータスが分かるんだ? 鑑定ってなかったはずだよね?
「なあ、鑑定ってないんだよな?」
「ええ、ないっすね。だから自分のステータスしか分かりません」
なるほど、他人のステータスは分からないが自分自身のステータスなら分かるのか。どっちも分からない俺よりマシだな。
「えっと、じゃあアニキはどうやってジークを殺したんですか?」
ジーク? あぁクソジジイね。さて、どう伝えようかな。ちらりと羽虫に目をやる。
「俺とモネが力を合わせて殺した。おっと、なら俺もと思っただろ? だが残念ながら、お前にはモネの力を扱えない」
「そ、そんな。じゃあ、俺はどうすれば」
「お前の目的はなんだ? 冒険をする事か? 違うだろ? 俺に恩を返したいんじゃないのか?」
「そうです。俺はアニキに恩を返したい」
「なら簡単だ。ケン、お前は後方支援をして俺に恩を返せ」
「後方支援……何をすれば?」
「色々ある。ケン、お前のお陰で俺は安心して前に進めるよ」
俺は二チャリと笑みを浮かべ、ケンの肩に手を乗せた。




