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人生はクソゲーだって? 本当のクソゲーを見せてやろうか?  作者: しらたま


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20/59

良い人、ダルンさん

 俺はいつの間にか舗装された道を歩いていることに気付き、エリアが変わった事を確信する。

 そして、向かうべき街までの道程には、旅人のような格好の者から冒険者のような者、中には馬車を操る御者や商人らしき人まで見受けられた。


 俺は逸る気持ちを抑え、話しかける人物を吟味する。ジジイみたいに問答無用で攻撃されるのは避けたい。


 道の端に寄り、往来を眺めていると、皆が皆、なぜか俺と目が合う度に視線を逸らす。ホワイ?

 確かに俺の装備は野性味溢れる半袖半パンだが、そこまで異質だとは感じられない。なぜなら、すれ違う冒険者らしき男達の方がよっぽど酷いからだ。上半身を裸に鎖を巻いてるだけの奴がいたが、あいつは街から出禁だろ。


 暫く通行人を眺め、とうとうお目当ての人物を見つけた。

 見た目は若い。本当に若いかどうかは知らんが。だが、そいつは羽の付いた帽子を被り、ウクレレに似た小さなギターを持っていた。

 吟遊詩人キター! 絶対吟遊詩人だよね? 街から街へと放浪する奇特なお方。好奇心旺盛で話好きなイメージがあるから完璧な人選だ。


 「ちょっといいですか? あの街について聞きたい事があるのですが」


 俺は出来る限り爽やかに声を掛けたのだが、吟遊詩人はビクっと肩を震わせ、恐る恐る俺を見つめてくる。失礼な、何がそんなに怖いのかね? そして、明らかに動揺しながら俺? というジェスチャーを向けてくる。


 「そうそう、あなたです。話したい事があるんですよ」


 「✱✱✱」


 あー、忘れてたぁ。翻訳機能バグってたんだった。


 「モネ、これどうにかならない? まともに話すことさえハードモードなんだが?」


 「まさか言葉が通じない? 驚愕。ジジイの時はどうした?」


 「肉体言語オンリー」


 「呆然。……分かった、何とかする。言語機能が不備だとクリア不可能」


 おっしゃ! やったね! ……喜んじゃったけど、普通は当たり前の機能だよね、これ。


 「そう言えば、モネは周りの人からは見えるん?」


 「今、言語機能修復中! 話し掛けないで! 私にマルチタスクさせないで!」


 めっちゃキレるやん。そこまでキレなくてもいいじゃん。仕方ないじゃない、気になったんだもの。


 「修復完了。私の姿は見えない仕様。満足?」


 うん、答えとしては満足なんだけど、応えとしては些か不満足。そんな投げやりに応じられると、人って簡単に拗ねるからね。例えば俺とか。ま、いいけどさ! 羽虫の事は忘れて、吟遊詩人君との交流を楽しもうか!


 「もしもし、言葉分かりますか?」


 俺は恐る恐る口に出した。


 「えっ? あっ、はい! 分かります! でも、何で急に?」


 おー、こっちも分かるぞ! あ、ヤバい。嬉しすぎて泣きそう。


 「あの、大丈夫ですか? 泣いてません?」


 「あー、気にしないで下さい。久しぶりに人と話したので、ちょっと感動しただけですから」


 「そ、そうですか。お大事に。では、これで」


 「待って! え、何で? 話し掛けた時から反応がおかしかったけど、俺ってどこか変ですか?」


 「い、いえ、変というか……」


 チラチラと俺の肩を見ているな。おい羽虫、お前さっき自分は見えないって言わなかった?


 「急に話しかけてごめんなさい。俺はタロウ。辺境からやって来て、何が常識か分からないので、教えてもらえると助かります」


 まさか異世界あるあるの設定を俺が使うことになるとは。読んでて良かった、異世界小説。


 「わ、私はダルンと申します。自由気ままな旅人をしています。それで、タロウさんは辺境から来られたとの事ですが、先程の耳慣れない言語も辺境特有のものですか?」


 「ええ、そうなんです。なので恥ずかしながら、この辺りの情勢などを教えていただけるとありがたいのですが」


 「情勢、ですか。そういう事なら騎士団の方達に聞いたほうが早いと思いますよ。タロウさんもアズーレに向かうのでしょう?」


 あの街、アズーレっていうのか。それよりも、このダルンという男性、余程俺と話したくないのか、鮮やかに騎士団へと丸投げしたな。だが、逃がさんぞ!


 「俺も、ということは、ダルンさんもアズーレに向かうんですね? なら、街に向かうまでご一緒させてください」


 「え、いや、あの」


 「それとダルンさん、不躾なお願いで恐縮しますが、街に入る上で俺が改善すべき部分を教えてください」


 「それは、どういう……」


 「先程も言いましたが、俺は辺境から出てきたばかりです。なので、知らずの内に無作法を働いているかもしれません」


 「い、いえ、そんな事は……」


 「ならばなぜ、皆は俺を避けるのでしょうか? どうか、俺の為を思って正直にお話ください」


 さあ、どうするダルンよ。お前より歳上の人間が頭を下げているぞ。しかもその頭は、中央が不毛ときている。不憫に思うよな? 俺だったら思わない。禿げたオッサンなんかに同情はしない。でも、お前は違うよな? 話しかけられたとは言え、無視することも出来たはずなのに、お前は律儀に返答した。お前は良い奴だよ。性格の悪い俺が保証する。


 「その、気を悪くしないでいただきたいのですが」


 「はい、もちろんです」


 「タロウさんから威圧感が漏れています。そういうのは大概が素行の悪い冒険者というのが常識でして、皆が関わらないのもその為かと思います」


 ふむ、つまり俺は知らぬ間に、誰彼構わず喧嘩を吹っかけていたと。最悪じゃん、俺だってそんな奴がいたら見て見ぬふりするわ。つーか、ダルンさん、マジで良い人。


 「それは俺自身から漏れているのですか? 恥ずかしながら、俺は強くないのですが」


 「いえ、タロウさん自身というよりは、周りと言った方が正確かもしれません。今はその背負子から感じますね」


 俺は首を傾け、背負子に目をやる。きょとんとした羽虫と目が合った。お前のせいかよ!


 俺は背負子を降ろし、小声で話し掛ける。


 「ちょっと、何勝手にデバフ盛ってんの? 狂犬って呼ばれてるよ? 恥ずかしくないの?」


 「心外。威圧と捉えられるのはタロウが弱いせい。私は悪くない」


 「おいおい、人のせいにしちゃいけませんぜ。大体、モネは見えない仕様なんだから、気配も感じ取れたら駄目だろ」


 「普通は気配も消える。気付く者は極一部の強者のみ」


 「漫画かよ、アホらし。で、対策は?」


 「タロウが強くなればいい」


 また問題をぶん投げやがった。強くなれ? 簡単に言うなよ。


 「とりあえず、なるべく俺から離れて付いてきて」


 「心外。まるで私がタロウの側を離れたくないように聞こえる」


 「怒んないで。俺だって不逞の輩扱いされるのは嫌なんだから」


 ムスッとした羽虫が飛び立ち、俺の後方上空へと移動する。


 「ダルンさん、どうですか? 威圧感消えましたかね?」


 「あー、確かに薄れましたね。これなら大して気にする必要はないと思いますよ」


 消えてはいないか。ま、でも良かったぁ。こんな事で街に入れません、なんてごめんだからね。


 「ありがとうございます。ダルンさんのお陰ですよ」


 「いえいえ、私は助言しただけですから。それにしても、原因はなんだったんですか?」


 「ちょっと、呪いのアイテムがありまして」


 「それは……怖いですね」


 おっと、過剰に怖がらせてしまったか? 基準が分からないから、塩梅が難しいな。街に入ったら、色々調べた方が良さそうだ。特に禁忌なんかは知っておきたい。無知は罪だからね。


 そんな事を考えながら、俺はボケっと歩いていた。まるで、街に入れることが当然のように。

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