い〜まから一緒に、これから〜一緒に。
俺としては直ぐにでもクソジジイをぶっ殺しに行きたい所なのだが、如何せん俺だけでは返り討ちで拷問コースが目に見えている。だからこそ、羽虫の力を借りたいのだが……。
出会ってからそれほど時が経っているわけでもないので、おおよその感想になってしまうが、このサポーターは端的に言ってハズレである。
能力は高い。それは認める。
問題は、性格とも言うべき個性そのものだ。
気分屋で怠惰で自己中心的。
ツーアウトって所か? いや、どう見ても数え役満で裏ドラのりました。ありがとうございます。
「よくよく見たら、モネって可愛いよね」
「よく見なくても私は美人。目、腐ってる?」
落ち着け、俺の中のダーティソウル。
「服装も、なんかこう、イイ感じだし」
「タロウ、語彙力が消滅してる。不憫」
しょーがねぇじゃん! 自分の服すら関心ないのに、女性物の服なんて分かるわけがねーし! ヒラヒラしてんな、くらいの感想しかないんだが! 慣れない事はするもんじゃないな。
「で、だ。モネには後方支援を頼みたい」
「え? 褒めること諦めた? 絶句。あれで私の機嫌が取れるとでも?」
「思ってねーよ。これからは交渉の時間だ。モネ、腹が減ってるだろ? ジジイのログハウスにはきっと食糧があるぞ?」
「……野蛮。まるで強盗」
まるで? バカか? こっちは最初っから野盗のつもりですが?
「ログハウスを占拠できたら、俺がモネの為に料理を作ろう。もちろん、ある食材で出来る範囲でだが」
「……何をさせたい?」
「モネが殺すと、俺に経験値が入らないんだよね?」
「そもそも私にNPCは殺せない」
マジか。はよ言えや。危うくジジイの前でテンパる所だったぞ。
「じゃあ、俺にバフを掛けることは出来る?」
「程度による」
「とりあえず、10倍は欲しいな。それでもステータス10だけど」
「出来なくはない」
「え? マジで? よし行こう! 今すぐ行こう!」
「でも――」
ヒャッハー! ジジイ今行くぜぇ! 拷問の恨みは忘れてないからな! 早く貴様にもあの苦しみを味わわせたい!
―――やって参りました、森の中。走っているせいで素足は傷だらけだが、そんなこと関係ねぇ! 早くジジイを殴り飛ばしたい、ただそれだけだ!
羽虫、ちゃんと付いてきてるよね? 良かった、すぐ後ろにいた。相変わらずの無表情で、何考えてんのか分からん。まあ、いいさ。こいつとは同盟関係だ。俺の邪魔はしないだろう……しないよね?
ログハウスの前まで到着し、俺は荒ぶった息を整える。
「モネ、俺が扉を叩いたらバフを掛けてくれ」
「分かった。注意事項を厳守して」
ん? 注意事項? そんなのあった? ま、いいや。それよりもジジイだ。アドレナリンがドバドバ分泌されているのを感じる。
俺は強めに扉を叩いた。すると、身体が一気に軽くなる。これがバフか! なるほど、10倍でこの全能感。現実ではあり得ないな。
力に酔いしれているのも束の間、目の前に10という数字が表れた。それが9と減り、8となる。
カウントダウン? まさか時間制限!? おい羽虫! どういうことだってばよ!? 7。
クソったれ! 俺は扉に大文字キックをした。扉が吹っ飛んでいく。6。
ジジイ! 何処だ! 早く俺に殺されろ!
俺は中に押し入った。5。
ヒュっと、矢が俺の右肩に刺さる。
そ、こ、かぁ! 4。
俺は両手をクロスさせ、顔を守りながら突進する。
青ざめた表情のジジイが視界に入り、俺は拳を振るう。顔面にフックが入り、ジジイが吹っ飛ぶ。3。
すぐさま追いかけ、ジジイからマウントポジションを取る。
これは俺の分! ゴシャと人中に拳を叩きつける。2。
これも俺の分! ジジイの頭を床に叩きつける。1。
そしてこれもぉ、俺の分だ! 両手を絡ませて振りかぶり、勢いよく喉仏へ振り下ろした。0。
ピクピクと痙攣するジジイから離れ、息を整える。
死んだか? 念の為にボウガンで撃ち抜くか。
そう考え、俺が立とうとすると、全身に痛みが襲った。
は? これって何の痛み? 毒か? あのジジイ、ボウガンの矢に毒でも塗ってたか?
「モネさーん、ごめんだけど、毒治してくれない?」
「毒? タロウのステータスに変化はない」
「へ? じゃあ、この痛みは何?」
「バフの代償。10倍だから骨が粉々になる程度」
瞬間、ギリギリっと身体中から音が鳴り響く。
ぐぅえっ! 声を出したいが、声にならない。
骨を牛乳搾りされているような錯覚に陥る。
吐血が口から溢れ出る。
身体を動かしたいが、もう動かせる骨格はないようだ。
体液が口腔を塞ぎ、やがて意識が遠のく。
【DEAD END】




