リベンジやっちゃう?
例によって、羽虫が疲れただの喚くので、まだ陽が落ちない時間帯に眠ることとなった。
俺は正座から体育座りを主張し、渋々認めた羽虫を頭の上に乗せて、正方形の結界を張ってもらう。傍から見たら、体育座りしている怪しいおっさんだ。
こんな態勢で寝れるのか? 甚だ疑問だったが、それは杞憂に終わった。ぐっすりだった。これが俺のスキル、どこでもネルゥの力か。
尊き毛根のお陰に感謝し、俺はこのゲームで初めて死なずに次の日を迎えることができた。
「守りは完璧だな。モネ、このまま俺が移動する時も、結界を張り続けて欲しいんだが」
「不可能。疲れる上にタロウ臭が染み付く。不快」
何だよタロウ臭って。え? 俺って臭いの? ここってゲームだよね? それでも臭いと。スゲェなこのゲーム。臭いと言われた事よりも、感心が勝っちゃったよ。あの主、ポンコツなのはゲームセンスだけなんだな。
「ふぅむ、どうやって経験値を稼ごうか。因みに、スライムのステータスって分かる?」
「スラム君は100。タロウが一晩中殴っても倒せない」
「あー、はいはい。スラム君ね。強いなスラム君。じゃあ、死神君は?」
「誰それ?」
「いやいや、夜に湧くモンスターですやん。何回あいつに殺されたことか」
「ああ、思い出した。あれは鎌のオマケ。300あれば勝てる」
スライムへの忖度えげつないな。死神君なんか、鎌のオマケ呼ばわりされてるし。スライムの3倍強いのに可哀想……でもねーな。殺された恨みしかねーわ。
しっかし、そうなると困ったな。俺が経験値稼ぐ方法ってある? ないよね? 素の力が1なんだもの。せめて、武器があれば……。
「ねぇモネ、このゲームで村人を殺すとどうなる? 留置所とかに送られたりする?」
「それは無い。ただ、他のNPCから好感度が下がる」
「殺したら経験値入ったりする?」
「入る仕様にはなっている。タロウ、外道?」
「いやいや、俺だってそんな事したくないんだよ? でもさ、現実的に考えて仕方ないって言うか……」
「嘘乙。タロウ、ニヤつきが抑えられてない」
あったり前じゃん! あのサイコジジイを殺してもお咎め無しなんて、最っっ高じゃねーか! しかも経験値までくれるなんて、ご褒美だね! まあ、経験値入らなくても殺すけど!
「問題は、あのジジイの強さなんだよな。モネ、分かる?」
「どのジジイ? NPCのジジイは飽和状態」
「森のログハウスに住んでるサイコジジイだよ。いきなりボウガン撃ち込んでくるイカれ野郎」
「そんなジジイ知らない。森にいる穏やかなジジイなら知ってる」
「はぁ? 穏やか? じゃあ違うかぁ」
「穏やかなジジイは、実は隠居している設定」
「隠居? ふーん、でも穏やかなんだろ? なら違うかぁ」
「拷問が趣味の穏やかなジジイ」
「いや、そいつやないか! どこが穏やか? 拷問してんじゃん!」
「そういう設定の話。余程が無ければ拷問されない」
「いや、俺、されましたけど? 余程も何も、言葉が通じなくて、ボウガンで殺されるか拷問されて殺されるかの二択だから」
「NPCに殺される? 不思議。初見な現象」
えぇ、俺って素の状態でNPCに嫌われてんの? デバフ盛りすぎじゃない?
「とにかく、その自称穏やかなジジイは強いの?」
「弱い。ステータス5程度しかない」
5かぁ、スカウターで測ったらサ◯ヤ人がゴミめって言う程度なんだろうけど、俺にとっちゃ結構シビアな強さだ。
前もタックルしたけど、全く体幹がぶれなかったよな、あのジジイ。
そうなると、羽虫がどこまで手助けしてくれるかで決まっちゃうよなぁ。いまいち信用しきれないんだよ、この羽虫。
「腹減ったな。そう言えば、腹も減るんだな。初めて夜を越せたから、余計に減った」
「同意。私もペコペコ」
「ん? モネ達も食事が必要なの?」
「他は知らない。私は必要。お肉を所望する」
「食べてくればいいじゃない。それとも出来ないのかな?」
「タロウ、殺されたい? タロウの所為」
ほほーん、な、る、ほ、ど、ね! こいつの急所は食事か! しかも俺から離れられない制限で、他所で食べる事が出来ない訳か。んー、なら尚更、自分で敵をさっさと倒して俺をクリアさせればいいのに。
何故そうしない? 面倒だから? いやいや、食事という欲求を抑えてまで意地になる理由が分からない。
俺がクリアを最短で目指すには、レベル上げなんかよりも、羽虫の生態解明を優先させるべきなのかもしれない。
だが、まずは交渉だ。 羽虫をどうにかして手伝わせてやる。
首を洗って待ってろよ、クソジジイ!




