あぁ、無情。
羽虫が働きたくないでござる、なんて事を言いやがるが、俺としては戦闘全てをお任せするつもりだ。
だって、ステータスオール1だよ? 勝てる訳ないじゃん。
そういや、ステータスが低過ぎて忘れてたけど、魔法やスキルって俺にもあるのかな? もしかしたら、固有スキルがあるかも。悔しいけど、ワクワクする。
「モネさん! 俺の魔法やスキルを教えてください!」
「なぜ興奮? 気持ち悪い。頭ぶつけて死ねばいいのに」
「酷くない!? そんなに言わなくてもよくない? ただ魔法とスキルを教えてくれって言っただけだよ?」
「謝罪。気持ち悪かった。他意は無い」
くそっ! 謝罪してるように見せかけて、本音で気持ち悪いって言いやがったこの羽虫! デコピンでもしてやりたいが、恐らくこの羽虫に殺されるだろう。なんか、平然と殺しそうだもの。
「……謝罪は受け取った。俺の魔法とスキルを教えてくれ」
「タロウに魔法は無理。魔力不足」
あー、魔力ね、魔力も1なんですね……ちくしょう!
「ただ固有スキルがある。かなりレア」
キター! マジで? 俺に固有スキルあんの? よっしゃ! 俺のターンがやっときた!
「コホン、それで? どういうスキル?」
「どこでもネルゥ」
「は? 某えもんのマネなんてしなくていいから、真面目に答えて」
「こちらは真面目。タロウのスキルはどこでもネルゥ」
いやいやいや、絶対あの主がお遊びで付けた名前だろうが。待って、暑くもないのに汗が出てきた。嫌な予想が止まらない。
「ど、どういうスキルなの?」
「そのままの意味。所有者はどこでも寝れる。垂涎の能力」
お前にとってはな! くそっ! ハズレだ! 大ハズレだ! こちとら戦闘スキルに全力で賭けてたんだぞ! あー、もうどうすんだよ。マジで戦闘は羽虫頼りになっちまうよ。そして面倒だから嫌だと駄々をこねる羽虫を、俺が甲斐甲斐しく尽くす未来が容易に想像できる。最悪だ。
「ちなみに、他のプレイヤーって大体どんなステータスなの?」
「初期は1000辺り。レベル上げで万にも達する」
俺と難易度違いすぎない? それとも俺だけ別ゲーやってるの? 初期で1000って、俺が1000人分だよ? まぁ、俺のステータスで1000人敵として現れても、瞬殺されて終わりそうだが。
待てよ。レベル上げ、か。
「このゲームのレベル上げって、何すりゃいいの? モンスターを倒して経験値を稼ぐとか?」
「大抵はそう」
「じゃあ、モネが倒したモンスターの経験値は俺にも入る?」
「なぜ? 入るはずが無い。姫プレイ勘弁」
「ソウデスネ。ゴメンナサイ」
入ってもいいだろうが! 一応パーティーメンバーだよね? 姫プレイ? 何が悪い! こっちは文字通り必死なんだよ! お前も強いんだったら、キャリーしてやるくらいの気持ちを見せてほしい。
「タロウ、時間」
「え? 時間? 何の?」
「私の活動限界」
「へ? いや、疲れることなんて何もしてないよね? それとも、サポーターは皆そういう時間縛りがあるの?」
「これは私個人の問題。オヤスミ」
羽虫は言うやいなや、宙に浮いたまま仰向けになる。その周りを正方形の淡い光が包み込む。
おいおいマジかよ。本当に寝やがった。なぁにが、これは私個人の問題キリッだよ! ただてめえが眠りたいだけじゃねーか! 腹立つわぁ、この羽虫。
つーか、暗くなってきたんだけど? このまま夜になったらどうすんの? 死神君が来ちゃうよ、俺死んじゃうよ?
―――はい、辺りは真っ暗になりました。
羽虫を囲ってる正方形が、やたらと眩しく見える。
きたぁ! 死神君が来たぁ! ヘルプミー羽虫さん!
「おーい! モネ! 起きて! 死神君が襲ってきた!」
俺は正方形をバンバン叩くが、まるで効かない。むしろ、こっちの手が痛い。羽虫は相変わらずスヤスヤだ。
クソっ! だったら、羽虫を盾にしてやる! さぁ来い、死神君! 君にこいつの護りを破れるかな?
俺はサッカーボールサイズの正方形を、首元に近づけた。
すると、ガキッ! と音を立て、死神君の鎌が弾かれた。
マジかぁ。この正方形、どんだけ固いんだよ。
ちょっとドン引きしている俺を、死神君は見逃してくれなかった。
俺のがら空きになっている胴体を、キレイに掻っ捌いた。
【DEAD END】




