『令嬢が霊場に令状を持っていく話』に転生した私
◯プロローグ
「おーほっほっほほほ」
「ついに、見つけましたわ。犯人は貴方だったのですわね」
「いひ、いひひひ。そうさ、俺だ。俺がやったんだ。だけどなぁ、俺はもう死んでるんだぜ。死んだ俺を捕まえる事は出来ねぇよなぁ?」
「コレをご覧なさい」
「なんだぁ、その紙は?」
「コレが私のスキル【霊場令状】。地獄の審判者から正式に認められ、幽霊として彷徨っている貴方を強制的に捜査、連行する事が出来ますのよ」
「な、なんだとぉ?!」
「喰らいなさい! 【霊場令状】」
「ぎぃぇぇぇぇぇぇ!」
「これで、やっと」
「ご苦労様でした。お嬢様」
「おーほっほっほ。これにて、一件落着、ですわ!」
◇
学校終わりの帰り道。
封テープがしていない本屋で、私は雑誌の立ち読みをしていた。
今日は好きな漫画の更新日だったのだ。
一通り読み終えて満足した後、他に面白い漫画はないかと、パラパラと捲っていると、
令嬢が令状を持って、霊場で禿げた頭の犯人を追い詰めている『見開き』が目に止まった。
「なんだ、この漫画」
その感想が思わず声になって出た。
その犯人は令状の効果か何かで簡単に消滅していた。
『令嬢が霊場に令状を持っていく話』
通称レイジョジョジョ。
絵は上手い反面、ストーリーが何とも言えない。
深夜テンションで決めたタイトルを見切り発車でスタートさせたような……これが、有名漫画雑誌に載っているなんて考えられない。
人気なのだろうか?
「まぁ、興味無いし、買わないけど……ていうか、立ち読みで気になった漫画あっても、一から買い集めるのも手間なのよねー」
『レイジョジョジョ』をペラペラと捲ったが、続きが特に読みたい程でも無かったので、雑誌を元の棚に戻して店を後にした。
明日の英単語テストの勉強をしないと、と帰路に戻ろうとした瞬間。
景色が変わった。
見慣れた商店街から、目が見えなくなったと思えるほど、真っ黒の世界へと。
「えっ」
「は?」
突然の出来事に理解が追いつかない。
どこへ行こうにも暗闇で途方に暮れていると、
暗闇の一箇所が急に光りだし、見上げるほど大きな女性が現れた。
「初めまして、わたしは悦楽の女神フワレビーナ。ようこそおいでになりました。ここは死後の世界。生命をあるべき場所へと導く場にございます」
神と名乗った女性は愛犬を慈しむような笑顔を見せ、
「貴方は死んだのです」
衝撃の一言を放った。
「……待って、待って、待って。私、死んだ覚え無いんですけど?」
車に轢かれたわけでも、通り魔に刺されたわけでもない。
突然、ここにいた。
そう前触れもなく、唐突に。
「死とは予期できるものではないのです。貴方が驚かれるのも無理はありません」
「これってドッキリ? 民間人の目を塞いで、訳の分からない所に連れてくるとか、どうなってるの? 主催者は誰? こんなことしてたら、すぐ炎上するわよ」
「いいえ、これは真なのです。貴方は死に、私は神、そしてここは死後の世界。それでなければ永遠に続く様に見えるあの暗闇や、私の大きさはどう説明を付けられるのですか?」
柔らかな口調で神は私に問いかける。
確かにそれは非現実的だけど。
自分の死を、そんなもので納得できる程、私は理解が深い方では無い。
「死因は? 事故、病気?」
「聞かない方がいいですよ。それは、もう、壮絶でしたから」
「……そう」
なんだそれとも思ったが、痛々しい話を聞きたい訳でも無いので軽く流す。
「百歩譲って死んだってことで、これから私どうなるの? 先に言っておくけど、次の生が動物とかは嫌よ」
「ご安心下さい。貴方はとってもお辛い亡くなり方をされたので、最近人気のコースで新しく人生を謳歌していただきます」
「人気? コース?」
「その名も、じゃじゃーん『最後に触れた創作物の世界に転生』コースです」
どこからか、映画のスクリーンばりに大きなパネルを取り出す神。
そこに書かれていたのはイラスト。
天使の輪っかを頭の上に乗せた人間が、本の中に入るという描写がされている。
「なにそれ、そんなのが人気なの?」
「はい。訳の分からない世界で生活するより、見知った世界で無双したいっていうのが人気のようですね」
まぁ、その気持ち分からなくもないけど、敢えてソレってのも味気ない様な。
人生何が起こるか分かり切ってて楽しめるのだろうか。
それはそうとして、
「なら私の場合は、私の大好きな、あの漫画の世界に……ん? 最後に触れた?」
嫌な予感が脳裏に走る。
「ちょっと待って、もしかして私が転生するのは」
「はいお亡くなりになる十分前に読んでいらっしゃった漫画『令嬢が霊場に令状を持っていく話』です」
「う、うそでしょ」
とんでもないことになった。
このパターンで、まさかの立ち読みでチラッと見た漫画の世界が選ばれるなんて。
「実はわたし、有給を使ってサイン会に行くぐらいのレイジョジョジョのファンなんです。でも最近の展開は付いていけなくて、ここをあーした方が良いとか、あそこをこう変えたりいいなんて妄想しちゃって……」
「それって、確定なの? 私、人だったら別に人気なコースじゃなくてもいいからさ。変えてくんない?」
「それは……無理です」
「どうして!」
「もう手続きしてハンコも押しちゃったので、取り消し出来ないんですよ。今から一から手続きだと、人間の精神だと耐えられない程の時間が掛かっちゃって、貴方、消滅しちゃうんです」
なんてこった。
クーリングオフ的なシステムが搭載されていないなんて、押し売り無法地帯じゃない。
さっきまでクネクネと好きな漫画の話をしていた神は、再度冷静に私に語りかける。
「大丈夫です。安心して下さい。ちょっとだけ原作改変して、新しいスキルも付与して上げますから」
「いらない、いらない。その気遣い全くいらない。なんで私が好き好んで、あの漫画に、それもアンタの二次創作の世界に行かなきゃなんないのよ!」
「それでは、前世はお疲れ様でした。色々あったでしょうが、新しい世界が貴方にとって、前よりも良い世界になることを心から願います」
私の抗議に間髪入れず、業務を進行する神。
足元がピカピカと光り始める。
どうやら、これが転生の合図のようだ。
神様の様子から、もう何を言ってもどうしようもなさそう。
「ねぇ、最後に一つ聞いていい?」
「はい、なんでしょう」
「私の死因は?」
「突然現れたUFOに攫われて改造オペに失敗したんです」
「ちょっと待てぇぇぇい! あの漫画より、そっちの方が面白そ……」
私の言葉は光と共に神の前から消えるのだった。
◇
はっ。
意識を取り戻した私は辺りを見渡す。
すぐに写り込んできたのは、どこぞの商店街で客引きでもしてそうなメイド服の女性。
「ご主人様、奥様。元気な女の子ですよ」
私の体が、その女性に持ち上げられ、大きな腕に抱かれる。
次に写り込んできたのは、疲れながらも喜びに頬を赤らめる女性と、身なりの良い男性。
「おおっ、マイスイートベイビー、良くぞ無事に生まれてきてくれた。メイヤー、君には感謝しても仕切れない。あぁっ、新しい命とは、こんなにも暖かいものなのだな」
「はい。あなた」
この小煩い男性と、私を抱く女性……どうやら私の両親らしい。
というか、私、本当に転生してる。
夢にしてはリアルな感覚。
つーか、夢でこんなにハッキリ意識があるわけがない。
ってことは、本当に死んだ?
宇宙人の医療ミスで?
ごめんなさい。お父さん、お母さん。先立つ不幸をお許しください。
あと英単語のテスト、君から逃れられたのは唯一のメリットだったよ。
私を持ち上げたり、撫でたりする、この男(父)、どこかで見たな。
本当に『レイジョジョジョ』の世界だとしても、あの見開きにこの男いなかったから、知らないはずなのに。
いや、そうだ、雑誌の端っこの書かれている人物紹介に顔と一緒に概要が書かれてた。
何気なく、該当の箇所の記憶を引っ張り出すと、
『ロットン=アーク=バレンチェ。暴食仙人ハマルカマルに殺され、死亡』
と、簡潔な内容だった事を思い出した。
「ばぶーーーーーーーーーーー(お父様死んでんじゃーーーん)」
新しい世界での生誕と同時に父の未来死を感じ取った乳児の産声でだった。
◯バレンチェ伯爵殺人事件(予定)
私の名前はニコラ=アーク=バレンチェ。
トリシャッタラン王国の伯爵ロットン=アーク=バレンチェとその妻メイヤー=アーク=バレンチェの娘。
父ロットンは外出先での仕事が多く、家にはあまりおらず。
一方、母メイヤーは基本的に家に引き篭もって読書をしている。
住んでいる屋敷には使用人が何人もおり、その中でもメイドのカーラは専属として身の回りの世話をしてくれる。
以上、転生先『レイジョジョジョ』の主人公ニコラの概要である。
転生して早々、父ロットンが死ぬ未来を知った私は、その悲劇を回避すべく奔走した。
が、何の成果も無いまま、15年の歳月が経過した。
「そりゃそうなるよーーー。誰だよ、暴食仙人ハマルカマルって!!」
自室で独り項垂れる。
不幸中の幸いという程でもないが、まだ父は健在。
「暴食も! 仙人も! ハマルカマルも! 分かるかァァァ!」
まるで、思い付きの単語を並べただけのように思える、父殺しの犯人名称。
この『レイジョジョジョ』の世界は、中世だとか近世だとか、その辺のヨーロッパ文化を取り入れているようなので、仙人もハマルカマルも世界観に合わない。
強いて言うなら暴食だが、犯人が太っているという意味だろうか。
父の概要欄に犯人以外にも死んだ日付等、何か犯人への手掛かりでもあれば良かったのだが、アレしか情報が無い為、犯人を特定することが出来ずにいた。
そうそう、あの『レイジョジョジョ』の見開きのページについてだが、
「【見開予知】」
頭に浮かぶ呪文を唱えると、『見開き』が実体となって現れる。
厳密には雑誌の形状だが、あの見開き以外は白紙で表紙すらない手抜き仕様だ。
どうやら、これ、神様がくれた私のスキルらしい。
「使いづらいわ!! 何よコレ! 人生を楽に出来る物でも、あったら便利って物でもない。【霊場令状】もどこで使うんじゃい!」
貴族令嬢として過ごした、この15年本当に使い道が無かった。
霊場にも行かないし、ハマルカマルも見つからないし。
どちらもポンコツスキル過ぎる。
「でも、このままじゃ……明日から家を出ちゃうし、家族とも会う機会が減っちゃう」
再誕してからこの方、新たな父を救うという気持ちに変わりは無いのだが、ここ数日、特に焦っている理由があった。
実は、明日からトリシャッタラン王国民必須の学園生活が始まるのだ。
学園生活は楽しみなのだが、あの『見開き』に描写された主人公の服は制服。
あの注釈通りに未来が進めば、私が学園を卒業するまでのどこかで、父が死んでしまうという問題に気付いたのだ。
つまり、父が殺されるまで残り僅か。タイムリミットが足音を立てて近づいて来ている。。
この、いつ訪れるか分からない悲劇を食い止められるとしたら、行動に融通が効く実家最終日の今日この日しかない。
◇
「おはようございます。お嬢様」
「えぇ、おはよう。カーラ」
チュンチュンと小鳥が囀る中、再度父を救うことを決意を固めた私は、メイドのカーラに着替えを手伝ってもらっていた。
服の着替えくらい一人でも出来るのだが、これは貴族令嬢としてのマナーのようなもらしい。
郷に入っては郷に従え。古き良き考えには倣う性質なのだ私は。
「ごきげんよう」
着替えの後、廊下を歩きながら掃除や洗濯等に励んでくれている使用人に声を掛ける。
これもマナー的に、本来はしなくてもいいらしいが、する。
挨拶は大事と習って来たこともあるが、誰が暴食仙人ハマルカマルがか分からない現状、使用人達の恨みで父が殺されるといった可能性もあるので、あまり角が立たないように振る舞っていた。
「あら、貴方」
廊下を歩いていると、一人の少年とすれ違った。
その少年は寝坊でもしたのか髪の毛が跳ね、少し服が乱れていた。
どうしても気になったので、声を掛ける。
「襟が曲がってましてよ」
「えっ?」
「じっとして、今私が直してあげますわ」
襟を正そうと近づいたのだが、私の顔が近づいて照れたのか、少年は少し顔を赤らめる。
「あ、ありがとうございます! お嬢様!」
そう言い残すと少年は箒を持って、そそくさと遠のいて行った。
掃除の邪魔をしてしまっただろうか。
「あら、あの子……」
「どうかなされましたか?」
後ろに付き従っていたカーラが私の独り言に反応した。
「初めて見る気がしたのだけど、今日初めての子なのかしら?」
「御者のロディです。実は明日、お嬢様を学園に送る手筈だったマクマードが、何日も前から病気で休んでまして、その代わりのようです」
「マクマードさんって、あの深緑の帽子を被った方よね? 気が付かなかったわ。大変ね。見舞いの品でも持って、ゆっくり休むよう、伝えておいてくださる?」
「はい、お嬢様」
名前を言われても、ぱっと顔が思い出せないが、ちゃんと気は遣う。
これも父が殺されない為の布石。
やれやれ、私がこんなにもずっと悩んでいるのに、当の本人は何も知らないと思うと、少しムカッとするが、仕方が無い。
お父様、近い将来殺されるので、暴食仙人ハマルカマルには気をつけて下さい。なんて言っても笑われるだろう。少なくとも私はそうする。
因みに先程から口に出している、それっぽいお嬢様言葉だが。
これはバレンチェ家の令嬢たれ、と怖い怖いカーラに叩き込まれたものだ。
まだちょっと昔の癖は出るが、少しでもやんちゃな素振りを見せようものなら、ハンマー投げのハンマーのように曲線を描き池に叩き込まれるのだ。
カーラがおかしいのか、この世界の躾がおかしいのか、まだ分かっていない。
「新しく奉公に来た少年……ね」
突如現れた登場人物をハマルカマルの候補として記憶しつつ、これでもかという程の長さのテーブルがあるダイニングに辿り着いた。
先に座って食事をしていたのは母。
「今日のご飯は兎肉よ。ニコラ、貴方の好物よ。良かったわね」
「まぁ、そうですの。それは楽しみですわ」
「明日の準備は出来ているの? 新しい学園生活、緊張はしてない?」
「はい。問題ありませんわ。家名に傷が付かないよう、しっかりと学業に励んで参ります」
「……少し、寂しくなるわね。そうそう。お父様は見送りの為、明日の朝には帰って来ますからね。ちゃんと、別れの挨拶はしなさいね」
「はい。お母様」
食事を終えたお母様と、運ばれてくる食事を待つ私のたわいのない親子会話。
そんな最中、私はあることを思いを馳せていた。
例の『見開き』。
端に書かれた概要欄、そこには母についての記載は無かった。
無い、ということは生死が不明。
父が死んで悲しみながら生きたのかもしれないし、父を追った可能性もある。
何方にせよ、父の死は母に大きな影響を与える事は間違いない。
だからこそ、私は、父だけで無く母も救う気持ちで取り組まないといけないのだ。
母は私が食事を開始した後も、話を続け、二人で食後のデザートと紅茶を嗜み、それぞれ自室へと戻った。
「よし、やるか」
私は念の為、部屋に誰もいないことを確認し、服を着替えた。
装飾の無い地味な衣装。
このありふれた町娘のような格好は、カーラに隠れて買って来て貰ったもので、誰にも知らせずに外に出る時に重宝していた。
3階の自室から外に出るのも、お手の物で、縄と近くに生えた木を使い猿のように降りて行く。
カーラに見つかれば、池ポチャ行きの行為だが、カーラの行動パターンはこの15年で頭に叩き込んでいるから問題はない。
「それとなくお父様を嫌ってそうな人を調べてみたけど……」
一番近くの町を歩きながら、手製のメモ帳に目を落とす。
そこに書いていたのは暴食仙人ハマルカマルの容疑者リストと考察メモ。
家にいる使用人から、来訪客、町の住人に至るまで調べ上げ、一人ずつハマルカマルかどうかをチェックしていた。
主には父への恨みがあるかどうか、関わりがあるかどうかを見ていたのだが。
「ウザったい話し方の割に人気者らしいのよねぇ」
恨まれるどころか、昔、飢饉時に私財を投げ打って貧困を救ったとかで英雄扱いされている。
大飢饉から何年も経っているのに、未だ家に感謝の手紙が届くくらいだ。
「いつも通り聞き込みするかー。でも、昨日の今日で大きな事件が起こったとかでもないし、犯人が見つかるか微妙だな〜」
「やっぱ、犯行日時が分からないのがキツいわね。未来の事件を防ぐなんて、事件が起こってから犯人を見つけるより難しいんじゃない?」
ブツクサと前世の口調で呟いていると、石橋の上でドスンと何かにぶつかった。
「ひゃっ」
「ん? あっ、ごめんごめん! 大丈夫?」
ぶつかったのは私よりも小さな女の子。
腰を地面にぶつけ、少し痛そうに腰をついていた。
「うん! 大丈夫!」
私が差し出した手を捕まり、女の子は元気よく立ち上がった。
「……ん?」
その顔を見て、私は少し固まった。
(知らない顔だ……でも、どこかで)
旅人かと思ったが、大きな荷物も無くて、服も普通の町娘。でも私が調べ尽くした町の住人の中には、こんな子はいなかった。
(私が明日学園に行く、このタイミングで引っ越して来た?)
それはなんとも、怪しい展開。
「どうしたの? お姉ちゃん?」
私が驚いて固まっていると、その女の子は覗き込むように私の顔を見ていた。
「ううん、なんでもない」
ただ、こんな女の子が犯人な訳が無いと思い、言葉を濁す。
「そっか、それじゃーねー」
女の子はニコッと笑うと歩き始めた。
私も再度犯人探しに精を出そうと思って反対方向に歩こうとしたのだが、ふと脳裏に朝の出来事が過った。
思い出したのは、朝、襟を直した男の子。
「ちょっと待って!」
「ねぇ、貴方。家族の誰かが、あの大きな家で働いてたりしない?」
「ロディお兄ちゃんのこと?」
そう女の子の既視感は、朝の少年からのものだったのだ。
奇妙な縁、まるで作られた物語のような展開に、私はこの世界が『レイジョジョジョ』という漫画の世界である事を思い出す。
降って沸いたような、二つの出会いに私は犯人探しの賭けに出ることにした。
◇
「お兄ちゃん、ロディ君は御者なんだっけ? 小さいのに凄いね」
「そうなんだ〜、お兄ちゃんは、お馬さんと仲良しでね。すっごいの。叔父さんも上手だけど、お兄ちゃんも負けてないんだから!」
「いつ引っ越して来たの?」
「うーんとね、昨日! ベードラ山からお婆ちゃんの家に引っ越して来たんだ〜」
「ふーん、そうなんだー」
町外れの大きな木の下で、私は小さな女の子カティアと話をしていた。
私はロディと同じ屋敷で働くメイドという設定で、町で買ったお菓子を元手に情報を引き出していたのだが、
(これは、当てが外れたかなー?)
5、6歳の少女に10歳前後の兄。
怪しいにしても、年が若いし、カティアの証言的にロディも人を殺すようには思えない。
ただ私は、この出会いに賭けたのだ、少しでも父殺しに繋がる手掛かりを手にいれたい。
(大人が大人を殺す理由は金銭問題、痴情のもつれ、とかドラマで見たことあるけど。このぐらいの子どもが大人を殺すとしたら……怨恨? それも身近な人物の。お婆ちゃんの家に引っ越して来た。あるとすれば……)
「お父さんとお母さんは一緒に住んでるの?」
私は思考を整理し、そう尋ねた。
その質問は直ぐにカティアの表情を曇らせる。
「ううん、もういないの」
「んとね……食べ物がなくなって、冷たくなって、そのままだったんだって」
「カティアはもっと小さかったから、覚えてないけど。お兄ちゃんは、バレンチェ家の配給が遅れた所為だって……怒ってた」
何年か前に起こった大飢饉。
きっとこの子の両親は、その影響で命を落とした。
(あぁ、やっぱり)
心の中で、カティア達の境遇と、父が殺される事件を結びつける。
英雄と呼ばれた父でも助けられなかった集落があり、そこに住んでいたロディは両親が飢え細っていくのを間近に見て、助けの手を差し伸べなかった父ロットンへの殺意を芽生えさせた。
時が過ぎたものの、その怒りは収まりきらず、衝動的に殺害に至った。
という筋書きだろう。
父が死んでいない現状では出来ることが限られる。
(嘘じゃ無いとは思うけど、、そんな如何にも殺人衝動に繋がりそうな記録、私、見落としたかな? 大飢饉の時は全ての集落に配給を送ったって書いてあった気が……)
記憶との齟齬に不思議に思いつつも、浮かび上がった容疑者に対する処置をどうするかを考えることにした。
「ごめんなさい。辛いことを聞いたわね」
「ううん。大丈夫! 今はお兄ちゃんと一緒だから……でも」
カティアはそのまま何かを言おうとしたようだが、私の奥、こちらへと続く道に見えた人影に声を弾ませた。
「あっ、お兄ちゃん!」
そこにいたのは朝と変わらず寝癖を付けたロディだった。
ロディはカティアに手を振り近づいて来たが、私の姿を見て目を大きく見開いた。
「お、お嬢様?! どうして、こんな所に!」
「お嬢様?」
首を傾げるカティア。
私は、ロディに近づき、耳打ちをする。
「しぃーー。私がここにいるのがカーラにバレたら大変だから黙っててね」
コクリと頷く素直な少年。
この子が暴食仙人ハマルカマルで、近い将来父を殺す犯人かと思うと心が痛い。
何一つあっていないように思えるが、そもそも『令嬢が霊場に令状を持っていく話』なんてタイトルの漫画を書いている作者がそこまで深く考えている訳が無い。
(今は何の害も無さそうだけど、いざお父様を見れば怒ってして首を絞めるのかも)
何にせよ、そうならないように、私がこの子を監視すれば済む話だ。難しいなら、カーラにでも相談すればきっと上手く行く。
殺害の瞬間を取り押さえさえすれば、ロディは道を外さず、父は死なずに済む。
(本当に、それでいいの?)
二人に別れを告げ、それぞれ家への帰路に着こうとした時、足が止まった。
未来に衝動的に殺人を犯すという以上、今、この場で心の奥に眠る悪意を問うのは難しい。
だけど、その燻りを放置していていいのか。
「よくない……殺意なんて芽生えて欲しく無い!」
私は離れていく、二人に走り近づくとロディの肩を掴んだ。
ギョッとし驚くロディと、不思議そうにこちらを見るカティア。
「貴方の気持ちは分かる。他の大勢は助かったのに、自分の愛した家族は死んだ。そのことは辛くて、どうしようもなくて、自然を恨むことが出来ないから、配給の指揮を取っていたお父様を憎みたいのは、悲しいけど、分かる」
「でも、だからって本気で殺したいなんて思っちゃダメだよ!」
二人の境遇を想像しながら、話していると少し涙ぐみ、声が揺れた。
前世今世合わせて、宇宙人に拉致られたことしか自慢出来るような事がない私は、良い事なんてを言えないけど、それでも私は私の想いをぶつける。
これが将来、少年の殺人衝動を抑える楔になると信じて。
だったのだが、
「何の話ですか?」
感極まっている私と対照的に、ロディはポカンとしていた。
「えっ? 貴方、配給が遅れたから両親が死んだって、それで私のお父様を憎んでるんじゃ?」
「それは……その当時は、そういう風に思った事もありましたが、土砂崩れで配給が遅れたって話を聞きましたから。旦那様は方々に手を尽くして下さった、ただ、両親は運が悪かっただけ……そう思うしか無いじゃないですか」
辛い想いを噛み締めるようにロディは語る。
「それに、どうやって僕が旦那様を殺すんですか? 僕、お嬢様に着いて学園に行ってからカーラ様と一緒に従者として過ごすことになってるので、旦那様に会う機会なんて殆どありませんよ」
「えっ? そうなの?」
「ほんとだよ〜。カティアね、お兄ちゃんと離れ離れになちゃうの」
「仕方ないよ。お婆ちゃん家も、1人しか養えないんだから」
「でもカティアは、お兄ちゃんと一緒にいたい〜〜」
ワンワンと泣き始めるカティアを宥めるロディ。
その兄妹の絆の一面を見ながら、早とちり一等賞の私は、ただ呆然とするのだった。
◇
兄妹と別れ、私は独り木の下で蹲っていた。
「最低だ。私」
「人の傷を抉って、勝手に殺人犯だと決めつけて、二人にあんな顔までさせて……何もかも最悪」
「いくら焦ってたってアレは無い。人として終わってる」
それに。
「振り出し……か」
犯人を特定したと思いきや、空振り。
最終日だと意気込んだのに、結局何も出来ず、夕暮れ時を迎えていた。
今から町で聞き込みをする時間もなく、他に手掛かりもない。
今日もハマルカマルに繋がる情報は何一つとして、得られなかったということだ。
「…………【見開予知】」
なんとなく、女神から与えられたスキルを使い、『見開き』が入った雑誌を現出させる。
それを見て、前世の本屋で見た時と同じように感想を呟く。
「ホント、何よ。この漫画。セリフも、キャラも、シチュエーションも、ヘンテコ……でも人気があるんだから連載してるのよね、きっと」
ボウっと見開きを眺める。
思い出すのは、この見開きの犯人らしき男が、次のページで主人公のスキルで簡単に倒され、主人公が勝ちを宣言する一幕。
「犯人の登場のシーンが見開きなのに、次のページで負けるって……」
その時、ほんの僅かな小さな違和感が頭の中で躍動し始めた。
「ちょっと待って」
「犯人を追い詰める場面で、こんなデカデカと見開き1ページ丸々使って、ポット出の犯人? そんなことってある?」
「それに、この注釈のように書かれた人物紹介欄。まるで、読者が忘れているだろう伏線を再度思い出させるみたいだし」
『レイジョジョジョ』を物語として考えた時の、メタ考察。
まるで主人公と因縁のある 悪の組織の幹部とか、魔王とかそんな人物と対面したような構図。
そして、この『レイジョジョジョ』において、主人公が敵対する人物で最も重要になりそうな人物と言えば。
「もしかしてコイツがハマルカマル?」
主人公に追い詰められ、この後令状を突きつけられた、禿げた頭の目つきの悪い男。
この人物こそ、父殺しの犯人としか考えられない。
都合が良い? いや逆に都合が良くないといけないのだ。
何故ならこの世界は、あの神様が二次創作として作った歪められた世界。
恐らくだが、あの神様は、父殺しというトップクラスの悪役を簡単に退場させたのが気に食わなかった。だから、父を救う為に私をこの世界に寄越した。
「最初から答えは持っていたんだ」
「よし! 一歩前進!」
「犯人の顔さえ分かれば、似顔絵作って、探偵にでも探して貰えばきっと……お父様を助けられる!」
拳を握り締め、喜びを噛み締める。
「あとはコレを上手く書き写せるかどうかだけど……私、美術の成績は良かったけど靴の模写や彫刻はともかく、人物画が壊滅してたような。こっちきてからも、絵なんて書いてないし」
上からなぞればワンチャン?
そう、学園に行くまでに出来ることを、やり切ろうと色々考えていると。
「お嬢様、こんなところでいったい何をしていらっしゃるのですか?」
雑誌を天に掲げ、寝転がっていた私に言葉の雨が降りかかった。
慌てて雑誌を横に置き、その人物の顔を見て、私は顔を青ざめた。
「カーラ、どうしてここに?」
「……お嬢様の仰せに従い、マクマードに見舞いの品を届けておりました」
あぁ、病気で休んでいる御者のお見舞いか。
そんな話もあったな。
カーラは私の服装を一瞥し、また抜け出したのかと、大きく溜息を吐いた。
「お嬢様こそ、こんな時間にこんな所で何を……おや、その紙はいったい?」
カーラは私が横に置いた雑誌を取り上げる。
ペラペラと捲るカーラに、どう言い訳をして、大目玉から逃れられるか思考を巡らせていたのだが、あることに気付いた。
「カ、カーラ、それ見えますの?」
「はい。文字は読めませんが、お嬢様の似顔絵が描かれているのは分かります」
衝撃の事実。
(この世界の物じゃないから、勝手に見えないと思い込んでたけど……それなら!)
何故こんなに白紙が? と不思議そうにしているカーラに問いを投げる。
「ねぇ、カーラ。ひとつ聞きたいのですが、この人物に見覚えがあったりします?」
私は雑誌を『見開き』に戻し、禿頭の男を指差す。
「この方は……あぁ、御者のマクマードですね」
「えっ! マクマードさん、ですの? ……私、お会いしたことがありますが、このような方だったとはとても」
「帽子を取れば、このような顔です。マクマードはいつも深く帽子を被っていますので、お嬢様がしっかりと認識されてないのも無理はないかと」
今までも家で、数回見た事もあったのに。
気付かなかった。家だけでなくて町にまで捜査範囲を広げたばっかりに、1人1人の詳細を怠っていたようだ。
不覚が過ぎる。
「カーラ、見舞いはどうでしたの? ハマルカマ……ごほん。マクマードさんはお元気?」
「体調も良くなられているようで、もう少しすれば復帰できるとの事でした。ただ……病人にしては、かなり不健康そうなものを食べていたようで」
少し口籠るカーラから私はその言葉の裏を読み取った。
「病気は嘘で、休みを取っている。明日は、お父様も久し振りに帰ってきて、私もカーラも学園に行っていなくなる。これって、お父様を殺す状況としては最高なんじゃ……」
「お嬢様? 大丈夫ですか?」
急にブツブツと独り言を始めた私を心配するカーラ。
「明日、マクマードがお父様を殺す」
推測からの予測。
だが、私は確かな確信を持って、そう呟いた。
◇
夜、町外れの霊場。
緑帽の男マクマードはキョロキョロと辺りを見渡し、月明かりに照らされた私を見つけた。
「ごほっごほっ、お嬢様、こんなところに呼び出して何のようですか」
ワザとらしく咳き込むマクマード。
しかし、もう私は、それが偽りの病であることを知っている。
「もうお芝居はお止めになってはいかがかしら? マクマードさん」
「調べはついていますの。貴方がお父様を殺す犯人……いいえ、これから殺すと言うのが正しいかしら?」
「へへっ、お嬢様。あっしには何を仰ってるのか分からねぇです。旦那様を殺す? あっしが? ただのどこにでもいる御者ですぜ」
そりゃそうだ。まだやっていない。
明日には殺人犯になるとしても、今はまだ、普通の人。
「ロディとカティア。あの二人、貴方の甥姪だと聞いたのだけれど、本当かしら?」
「は、はぁ。そうですが……それが何か?」
「先の大飢饉で二人は両親を失った。原因は餓死だけど、それは、私のお父様が送った配給が届くのが遅れさえしなかったら、助かっていた」
「そうでさぁ。土砂崩れなんて無かったら、アイツらは……生きて」
「そうね……でも、調べてみたら、あることが分かったの」
「お父様の配給は余裕を持って届くように手配された物だったんですわ。それこそ、報告書に書かれていた土砂崩れを迂回しても、間に合うくらいに」
私はマクマードが未来の犯人だと推測した後、裏付ける為、殺人動機に関係しているであろう大飢饉を調べた。
そして出て来たのは、唯一救われなかった集落の情報と配給手配の記録。
「その配給を配達したのは貴方ですわよね、マクマードさん」
私の言葉が耳に入る毎に、男の汗が吹き出す。
「最初は愛する妹夫婦がお父様のミスで死んだことに怒りを激らせ、復讐心から殺害に至ったと思ってたんですの。でも、おかしいと思いませんこと? 自分のミスで配給が遅れたのに、何のミスも無いお父様を恨むだなんて」
「お、お嬢様、だからさっきから何を仰って」
どんなに調べても、犯人の動機が見えなかった。
しかし、それのヒントはずっと抱えていた謎のワードにあった。
暴食仙人ハマルカマル。
これが名前ではなく、『称号』や『二つ名』といった性格から来た渾名だとすれば。
「ねぇ、マクマードさん。お腹が空いている時に食べた物は美味しいわよね。例え、それが、人を助ける配給だとしても、ね」
私の言葉の意味する所を理解したマクマードは頭をカクンと下げると、
「いひ、いひひひ。ぁあ、ぁあ。最高でしたぜ」
不気味な笑い声を上げながら恍惚な顔を浮かべた。
「あん時は、満足に食べるものがなくてよぉ。俺、普段よく食う方だからよぉ。あんなちょぴっとな配給じゃ足んねぇの。そう思ってたら、ちょうど妹夫婦が住んでる集落に届ける配給を届けるっつう話があってよぉ」
「あっし、馬に乗れるし、家族もいるしってことで届けるのを買って出たのさぁ。そんで、食べちまったことがバレないよう、土砂崩れに巻き込まれた風を装ったんでさぁ」
「それが家族の物だって分かっていて、そんな事をするのですわね」
「腹が減っていたんで仕方無かったんでさぁ」
「でも最近になって、あのガキ共を迎え入れたいって、おっかぁが言い出すもんだから、なんかの拍子に真実があのガキ共にバレたら大変だって思ってよぉ。真相に近づけそうな奴から殺そうと思って色々考えてたのに……どうしてバレちまうかなぁ」
両親の仇が自分だとバレない為、口封じにお父様を殺そうとしていた。
これがマクマードの動機。
お父様はキッカケに過ぎず、この後も彼の基準次第で殺し回るのだろう。
欲望のままに人の命を蔑ろにする極悪人。『レイジョジョジョ』で主人公が令状を地獄の審判者から引っ張って来れるのも頷ける。
「お嬢様に、知られたとあっては、もうお終いだぁ。ガキ共にもバレるし、仕事も失っちまうし……なら、殺すしかねぇよなぁ」
懐からナイフを取り出し、マクマードは私へと襲いかかって来た。
「貴方、今回の計画、私がいなくなってから、実行しようとしてたようですけど、娘である私にお父様の死を見せないように。なんて優しい心からじゃないですわよね?」
接近するマクマードを冷ややかな瞳で見つめながら独り言を呟く。
「計画において、最も障害になる人物を遠ざけたかったという所かしら」
私が人気の無い霊場に犯人を呼んだのは、私の言葉が虚言で無い事の証拠作り。墓石の裏等隠れる所が豊富なココで、こういう明確な犯罪の証拠を第三者に目撃させる為。
というのもあるが、もう一つ。
その人物がいるなんて思われないシチュエーションだったから。
「死ねええええええええ!!」
マクマードのナイフが私に突き刺さる前、メイド服の女性が男の腕を掴んだ。
「お嬢様。お待たせいたしました。なるほど、先程仰っていたのは、こういう事だったのですね」
暗闇から忽然と現れたカーラは痛がるマクマードの腕を握り続ける。
「か、カーラ? はな、離せぇ」
「妙な事を言うのですね、マクマード。貴方は旦那様の殺害を計画したばかりか、お嬢様に危害を加えようとした。つまり死にたいのですよね?」
「違う。手違いなんだ! あっしはただ!」
「今、問答は必要ありません。ひとまず、両腕を折りますので、その後にでもお好きなように」
「まって……ぎゃああああああああああああああああ」
屋敷に従事する者なら誰が知っている、伯爵の私兵『ウォレンバレットの家政婦』、その長。
カーラが私に付いて学園に行く事になったから、起こり得たと言っても良い伯爵殺害事件。
主人公を喰ってそうなくらい強いけど、原作大丈夫なのかな。
といらない心配をしつつ、私は。
「おーほっほっほ。これにて、一件落着、ですわ!」
物語の主人公と同じ決め台詞を放った。
◯エピローグ
「それでは行って参ります!」
「頑張ってね」
「マイスイートベイビー。学園で困ったことがあったら、何でも、この偉大な父に言うんだぞ」
「心配は要りませんわ。お母様、お父様。バレンチェ家の令嬢として立派に励んで参ります」
両親や使用人達に挨拶を済ませ、カーラと共に馬車に乗り込む。
御者席にはロディ。そして、中には、
「お嬢様、カーラ様。お席温めて起きました! それじゃ、私! お兄ちゃんの隣に座りますね!」
そうメイド服を着たカティアが楽しそうにロディの元へと駆けた。
離れ離れになるはずだった兄妹を纏めて面倒を見ることにしたのだった。
彼らにはまだ、両親の死の真相は伝えていない。
知るべきなのかもしれないが、もう少し先でいいんじゃないかと思ったから。
「それでは出発致しましょうか」
「そうですわね。それでは出発進行! ですわ」
『令嬢が霊場に令状を持っていく話』に転生した私は、これからもこの世界で生きていく。
もし、次生まれ変わって、また元の世界に帰れたら、絶対『レイジョジョジョ』の原作を買おうと心に誓って。
ご覧いただきましてありがとうございました。
楽しんで頂けましたら幸いです。
深夜に思いついたタイトルで書いて見ました。
他にも作品を上げてますので、よろしければぜひ。
至らぬ部分もあるとは思いますが、評価や感想を頂けましたら、嬉しいです。