分岐2【チューベローズ】
本編にしたかったのですが、『恋愛描写はタイミング的に今じゃない』という理由からボツにしました…。。(>人<;)
気に入ってるので、先に仕上がったコレを、本編よりも先にあげさせていただきます‼️(`・ω・´)❤️
「ただいま」
ドアを開けて、部屋の中へと入るマコト君の後に続いて、私もお邪魔する。
「お邪魔します…」
玄関には、靴が数足。男性物と女性物が並べられている。
「……帰ってたのか」
男性物の靴を見ながらそう呟くマコト君に、「お父さん? 」と尋ねると、彼は暫しの間を置いて、「ああ」と答えた。
「えーっと…」
女性物の靴……触れてイイのか悩む。男性物とピッタリとくっ付いて並べられたソレは、二人の仲の良さを表していて…。
「母さんの」
「!」
「父さん、母さんが亡くなってから、いつもあーやって、靴を一緒に並べるんだ。もう、居ないのに…」
「ッ……ごっ…御免なさい…」
「…なんで、謝るんだ? 」
「っ……」
「アンタが殺ったワケじゃないだろ。謝んな」
「ッッ…」
確かに、私がマコト君のお母さんを殺ったワケではない。…だけど、【マリ】さんを殺ったのはーー
「取り敢えず、サッサと上がれ。で、静かにしてろ。父さんに、気付かれない様に」
おじさんに、私が此処に居る事がバレたらまずいの? と出掛かる言葉を、なんとか呑み込んだ。
靴の並べ方から、“おじさんにとっておばさんは、大切な人”である事が、感じ取れるから…。
私が靴を脱ぎ終えると同時に、マコト君は手を掴んできた。歩き出して、少ししてから立ち止まる。
「此処が俺の部屋」
掲げられたドアプレートには、【マコトくんのへや】と書かれていた。
「…自分の部屋なのに、“くん”付けなんだ? 」
「ッッ……“誰かさん”が、そう書いたんだよ」
……あれ? この字…何処かで……。
「なに、ボーッとしてるんだよ。サッサと入れ」
「この字……」
「あ? …っ……自分の字の汚さに、ショック受けてんのか? 」
「…えっ?コレ、私が書いたの!? 」
「!? ッッ…大きな声、出すなよ。父さんに聞こえる」
「! ごっ…ゴメン……」
……………。
…そっか。そう、なんだ。じゃあ、あの謎の女性から貰ったノートに書かれた字の筆跡はーー“私”、なんだ。
ガチャッ
「マコト、帰ってーー」
私を見た途端、マコト君のお父さんと思われる男性の顔が、険しいモノへと変わった。
【〜サブタイの花言葉に期待したとしても、期待通りのR指定な内容はない!〜】
重たい空気が流れる。口火を切ったのは、マコト君のお父さんと思われる男性からだった。
「やあ、ハナちゃん。元気だったかい? 」
「っ……えっ…あっ、はい」
「そっ…そっかぁ。やっ…やっぱ、子供は、元気が一番だよ、うん」
「はっ…はいッ! 私も、そう思いますッ!! 」
……………。
きっ…気まずいッッ!!! こっ…こーゆう時、如何すればイイのっっ!!!?
「父さん。今日、久々にハナお姉ちゃんを見掛けて、声を掛けたんだ」
この重たい空気を変える方法はなにか無いか? と、思い悩んでいると、マコト君が会話に参加してきた事で、マコト君のお父さんーーおじさんの意識は、其方へと向く。
「……そう、か…」
「っ……家に上げちゃ、駄目かな? 」
「………もう、遅いし…“ハナちゃんのお父さん”が、心配するんじゃないか? 」
再び、此方に意識を向けたおじさんは、一切の感情を読み取らせない無表情で、でも目は鋭くて…言外に「サッサと帰れ! 」と伝えてきた。
「ッ……」
チラッとマコト君を盗み見ると、彼は青ざめた表情で此方を見ていて、目が合う。
ーー帰らないでッ!!!
そう、言ってる様な目で、私を見ていた。
「………いっ…いえ。今日、帰りが遅くなる事は、父に伝えているので、大丈夫です」
マコト君からおじさんへと視線を移して、嘘だってバレない様に、真っ直ぐに見つめてそう言った。
もしバレたら如何しよう…という不安で、心臓がバクバクだったが、今、嘘を吐いてマコト君の部屋に入らなければ、取り返しがつかなくなる様な気がしたから…。
「っ……マコト。余り、ハナちゃんを長居させて、帰りの時間を遅くさせるんじゃないぞ」
「! ……わかったよ、父さん」
おじさんは戸を閉めて廊下から出ていった事により、再び私達二人だけ。
「………イイのか? 」
「……」
「…俺が、お前を襲う……男女が密室、ナニが起きたとしても、覚悟は出来ているのか? 」
「………そーゆう目的で、私を部屋に招くワケじゃないでしょ? 」
「…わかんねえぞ? 気が変わって、ガッと襲うかもだし? 」
「マコト君は、そんな事しないよ」
「その根拠は? 」
「…多分、だけど……マコト君、私の事、好きだと思うから」
「……………は? 」
「男の子は、好きな女の子の気を引く為に、嫌われる様な言動を取るか、もしくは正反対に、自己犠牲ってぐらいに、身体を張って、好きな女の子を守る事で自分の好意をアピールするって、ママが言ってたから」
「………なんで…それで、俺が、おっ…お前の事を、すっ…すっ…好き、だと? 」
「だってマコト君、私を傷付ける時は悲しそうな目で…私との思い出を話す時は、優しそうな目だったから」
「ッ……」
「だから、好きな私を傷付けない為にも、襲う事はしないだろうな、って。それに、私達、子供だしね? 」
「………」
此処で、子供だからやり方がわからないでしょ? 等と、煽ってはいけない。煽ったら、わからないか如何か確かめてみる? や、じゃあハナお姉ちゃん教えてよ等と、誘い文句を言い易い状況を与えてしまうからだ。
性教育は授業で偶に習っているが、実際には知らない事が殆ど。年齢も年齢だから、気になる事も多々ある。だけど、リスクを負ってまで、ヤりたいとは思わない。ネットの恐ろしさの教育の上で、耳に胼胝が出来るぐらいに教え込まれたのが、男女の出逢いと、勢いに任せての行為によるリスクについてだった。
本気で好きだったとしても、約二十年間の子育てに覚悟が持てるまでの間は、そーゆう行為は控える。それでも我慢出来ない時は、ゴムは絶対に装着して、妊娠や病気などの確率を下げる事を心懸ける様に、と。
大切な関係を守りたいなら、勢いだけで無責任だと解っているコトを選択するな、と。
もし、それで、相手が勢いだけで、関係を持とうとしたらーー
「如何した? 」
「…えっ? 」
「なんか……難しい事を考えて、頭がパンク寸前みたいな顔してっから」
「! ……マコト君は、本当に、“私の事が好き♡”なんだね? 」
「ッ……そう、思いたきゃ、そう、思えば…」
「………」
否定しないって事は、やっぱりそうなのかな? …待てよ。と、いう事は、“こっちの私”は、どんな感情でマコト君の事を見ていたのか気になったが、ソレを知る術は、生憎無いに等しい。
もし、ママが捕まっていなかったら…もし、【マリ】さんが生きていたら…訊く事が、可能だったのだろうケド。
「マコト君は、如何して私を好きになったの? 」
「!? だっ…だからッーー」
「私、“恋愛の好き”っていう気持ちが、わかんないの」
「! …っ……へっ…、へえぇ…」
だから、“好き”を理由に、勢いだけで、無責任に、行為を選ぶ人の気持ちが解らない。如何して、そんなリスクを負ってまで、そんなコトをするのだろう? と。