第45豚 悪役令嬢ニニちゃん奇跡の大復活!?
★前書き★
★大企業の社長令嬢ニニの視点です★
〜?ウエノダンジョン?〜
わたくしは二二・真珠。
ブターナルコーポレーション社長の高貴なひとり娘ですわ。ニニというニックネームで、探索者をやっておりますの。
「くうっ……」
「にゃあ……」
「ぎゃふん……」
ウエノダンジョンの深層ラスボス"ハイパー無敵アルティメットドラゴン"に吹き飛ばされるバカラス一行。
「────おーっほっほっほっ!! まったく、見ていられませんわねバカラス!!」
「お前はニニ!? なんでこんなところに……」
「わたくしもこのダンジョンを攻略しに来たのですわ!」
わたくしはバカラス達の前に出ると、猛り狂うドラゴンにスッと杖を向ける。
「ニニレーザー!! 破ァアアアアアアアァアアアアアアア!!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
ズバキュドゴォオオオおおん!!
ドラゴンは私の華麗なニニレーザーで消し炭になりましたわ。あら? 私なにかやってしまいましたか?
「おーっほっほっほ! わたくしが最強ですわ〜!」
「くっ……ニニに負けた」
わたくしの前に跪くバカラス。普段の生意気な態度はどこへやら♪ じつに殊勝な態度、気持ちいいですわ♥ 気持ちいいですわ♥
「今日からお前はわたくしの下僕ですわ、いいですわね♥ バ・カ・ラ・ス♪」
「……わかったよ、ニニ」
「ニニじゃなくてえ、"ニニ様"ですわあん♪」
「ぐぬぬ……に、ニニ様」
ぞくぞくっ♥ わたくしの背筋を快感がのぼってきますわ。こいつ、よく見るとなかなか可愛い顔をしていますわね。なんだかいけない気持ちになりそうですわ♥
「そうですわ、バカラス♪ 服従の証に、わたくしにキスしなさい♪」
「は!? な、なに言ってんだ、こんなところで──っ」
「わたくしとキス、したくないんですの?」
「……そ、それは……」
「ふふふ、顔が赤いですわよ♪ なにを勘違いしてらっしゃるの、バカラス♥」
まったくからかいがいがありますわね♪
どっこいしょ♪
わたくしは椅子に座り、ブーツと靴下をポイっと脱ぎ捨てますわ。
「つま先に口付けなさい♥」
「なっ──!?」
「ホラはやくなさい、わたくしの下僕になりたいんでしょう?」
「は、はい、ニニ様──」
わたくしのつま先に、カラスの吐息がかかりますわ。
屈辱に歪む顔、気持ちいいですわ♥ 気持ちいいですわ♥ わたくしの完全勝利ですわね♥
ふふふ、足を舐めさせたら、次はどんなことをさせようかしら? たのしみですわね────
────
──
〜???〜
「うへへ……むにゃむにゃ……次は湯たんぽにでもなってくださるかしら……ぶひぃ……」
「──お嬢。いい加減起きてください、お嬢。気持ち悪いです」
「──────ハッ!?」
頬をぺちぺちと叩かれる感覚に目を開く。
見知った顔。彼女はメイ、わたくしの家に仕えるメイドのひとりですわ。有能でダンジョンにもよく連れていくのですが、口が悪いんですのよねえ。
首を動かして辺りを見渡す。
見知らぬ天井、見知らぬベッドの上。
「ここはどこなんですの、メイ。というか、なんでわたくしはこんな場所に────へぶっ!?」
とりあえず起きあがろうとして盛大に転けましたわ。身体がうまくうごきませんわ。どこか怪我しているのかしら。メイに抱き抱えられますわ。
「痛た……なんですのもう!」
「お嬢。お嬢は気を失う前、なにをしていたか覚えていらっしゃいますか?」
「気を失う前────」
記憶を辿ろうとして、強烈な悪寒が全身を襲い、全身から冷や汗が噴き出した。
薄暗いダンジョン。血溜まり。ピエロ。
凄惨な光景と恐怖がフラッシュバックし、胃液が込み上げそうになる。
「そっ──そうですわ──ピエロは──見えないピエロはどうなったんですのッ!?」
「ピエロは使用人を皆殺しにしてどこかへ消えました」
「どこかへ……? そうですの」
結局あのピエロがなんなのかはわからずじまいですわね。傍迷惑にも程がありますわ。あんなダンジョン二度といきませんわ。二度といきませんわ。
「けど、わたくしは助かったんですのね。落とし穴に落ちて、モンスターに囲まれてもう駄目かと思いましたわ」
「……お嬢、まずは落ち着いて聞いてください」
「? 落ち着いてますわ?」
「たしかにお嬢の命は助かりました。しかし、お身体の方は──」
口籠るメイ。
「な、なんですの……? わたくしの身体がどうなったって──?」
「モンスターに食い千切られた四肢はどうする事もできず。切り落とすしかありませんでした」
獅子?
──四肢?
切り落とすしか無かった?
──切り落とす──?
────切り落とすって?
「嘘、ですわよね?」
メイは何も答えない。
恐る恐る目線を下にズラす。
わたくしの腕や脚のあった場所には、見慣れない4つのコブができていた。手足を動かそうと力を入れると、そのコブがモゾモゾと動いた。
これが、わたくしの身体?
この豚のような身体が、わたくしの──?
「────ひっ────」
気が狂いそうになる現実に、わたくしは再び意識を手放した。
────
──
「落ち着きましたか、お嬢」
「……いえ。…………な……なんとか……」
落ち着けるわけありませんわ。
頭も心も追いついていませんが、わたくしにはそう答えるしかありませんでした。
それからわたくしはメイに事の顛末を聞きましたわ。
わたくしは四肢をモンスターに食われ、メイもピエロに腹を貫かれて瀕死の重体だったそうですわ。たまたま通りがかった親切な方がわたくし達を助け、ここに連れてきて治療を施してくださったそうですわ。
「四肢については──その方が高性能な義手と義足も用意してくださいました。慣れていかなければなりません」
「…………わかってますわ」
ショックで一晩寝込みたい気分ですが、死んでしまった他の使用人達の事を思えば、生きているだけでも感謝しなければなりませんわね。
「申し訳ありません」
「なんでメイが謝るんですの?」
「モンスターのいる穴にお嬢を突き飛ばしたのは、私です」
「……そうでしたの」
ピエロから逃げているとき、確かに背中を押された感覚があった。あのときはパニックになっていましたが、あれはメイだったんですのね。
「私も穴に飛び込んでらお嬢をお守りするつもりだったのですが、ピエロに追いつかれてしまい──不覚でした」
「自分を責めることはありませんわ、メイ。穴に落とされていなければ、チェーンソーで殺されていたかもしれませんもの。むしろお礼を言わなければなりませんわ」
「過ぎた言葉です。お礼なら、私達をダンジョンから連れ出して治療してくださった方にお願いします」
「あ、そうですわ。その方はいったいどんな──」
『お二人ともお目覚めのようですね』
抑揚の無い声と共に部屋の中央にあるモニターの電源が付き、映像に狐面の女性が現れましたわ。まるでデスゲームの導入みたいですわ……なんですのその狐のお面……怪し過ぎますわ。
「貴女がわたくし達をここに?」
『はい。事情がありこのような形でのご挨拶となってしまう事お許しください』
「いえ、助けていただいて感謝の言葉もありませんわ! ほほほ……」
誤魔化し笑い。
口元に手をあてようとして、できないことを思い知らされる。
『心中お察しいたします。さぞ辛いことでしょう』
「………………ええ」
『用意した義手と義足のマニュアルは同封してあります。多機能ですので、きっとご満足いただけると思いますよ』
……多機能……?
どう反応すべきかわたくしが迷っていると、メイが手を挙げました。
「恩人殿。私からもひとつ良いでしょうか?」
『なんでしょう?』
「……ここは、医療機関ではありませんよね」
『はい』
「お嬢の義手の用意といい、何故ここまでしてくれるのですか?」
言われてみればそうですわ。普通はポーションを飲ませるかかけるかして、救急車を呼ぶもの。病院でもないのに手術をして、しかも見ず知らずの人間のために義手まで準備してくれるなんて不自然過ぎますわ。
『隠すつもりはありませんでしたが、結果的に憂慮させてしまい申し訳ありません』
「というとやはり、お嬢を助けた事には目的があるのですね」
『はい、じつは我々も"ある悩み"を抱えておりまして。ダンジョン配信を観たところ、貴女方になら協力をお願いできそうと考え、恩を売らせていただいたといったところです』
「リスナーの方でしたか。それでは目的はお嬢のサインか握手でしょうか。それともダンジョンの攻略……?」
どちらも違う。
というように、狐面はゆっくりと首を振る。
『貴女方には、ある男を裁いていただきたいのです』
「裁くとは穏やかではありませんね。それで、ある男というのは──?」
『カミテッドを殺した真犯人──"配信者カラス"』
遅くなりましたが3章開始です!
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