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第29羽 方向音痴、ウエノダンジョンを攻略中! 女騎士ユリの実力、突発コラボで暴れまくり!

 〜ウエノダンジョン中層・ボスのいるフロア〜



 新たな仲間ユリと共に、俺達はウエノダンジョンを攻略していた。ユリは何度もこのダンジョンに潜り中層〜下層あたりを探索しているため、スムーズに進むことができた。



   パァアアンダァアアアアアアア



▽『中層ボスのジャイアントパンダベアだ!』

▽『でっけえ……』

▽『10メートルあるかないかくらいのサイズ』

▽『遠目に見る分にはかわいい』

▽『動物園にあったらフォトスポットになりそう』

▽『けど戦闘力はでかいクマだからな』

▽『可愛い顔なのが逆にえぐい』


「ここは経験者の私に任せて貰おう」

「任せた」


 早速ユリが前に出る。ここの中層ボスはソロで何度か倒しているらしいので、任せても問題ないだろう。


「クロネくん。無事に帰ったら連絡先を交換してくれ」

「どさくさに紛れて口説こうとすんな!」

「にゃらはははっ、スマホ持ってないにゃ♪」

「いざッ参るッ!」


 ろくに話も聞かずに巨大パンダに突進していくユリ。

 なんか少し不安になってきた。ホントに大丈夫なんだろうなアイツ……?


「秘剣・天地一閃ッ!!」



   パァアアァアアアアアアアッ!!



 ジャイアントパンダベアは縦真っ二つに両断されて地に倒れ伏した。ズズゥン……。と重い衝撃が響き、土埃があがる。


▽『え』

▽『え』

▽『え』

▽『えっ』

▽『一撃!?』


 俺達は戻ってきたユリとハイタッチをする。

 やるじゃないか、ユリのやつ!

 流石は国内最高峰の剣士ってだけはある!


▽『ユリちゃんも一撃やるのかよ」

▽『カラスくんで見慣れてるとはいえ』

▼『ユリ様今日も美しい剣技……』50000円

▽『中層ボスなんてユリ様の相手になりませんわ』

▽『けど一撃は初めてですよね』


「ああ。今日はいつもより調子がいいみたいだ。ひょっとして、クロネくん(勝利の女神)がついていてくれたおかげかな?」

「にゃるふふふっ♪ 女神だなんて言い過ぎですにゃ♪」

「言い過ぎじゃないさ。制服姿のクロネくんはまさに女神だよ。流れるようなサラサラの黒髪に小悪魔のような瞳と口元、均整のとれた美しい身体つきでありながら出るところはしっかりと出ている、キュートな尻尾が揺れるたびに捲れ上がりそうになるスカートはもう芸術の域だねッ!」

「にゃっ、にゃぁ……」


 ストレートに褒め千切られて、クロネは赤面している。


「ユリ…………」

「なんだいカラス?」

「めっちゃわかる!」

「だろっ!」


 俺とユリは固く握手をした。そして制服クロネの素晴らしさを、クロネに止められるまで存分に語り合った。



  ≪ジャイアントパンダベアから

    ジャイアント笹を獲得したにゃ♪

       ……ぺっぺっ、美味しくないにゃ!≫



「こらみんな、それはユリの笹だにゃ!」

「ははっ、いや、そのアイテムはあまり使い道もないんだ。欲しかったらあげるよ」


 ジャイアント笹は、ただただ大きなだけの笹のようだ。

 放置していっても他のパンダベアが食べるからゴミにはならないらしい。けど一応アイテムボックス(鴉の巣)にしまっておくか。七夕のときとかに使えそうだし。




 〜ウエノダンジョン下層〜



「下層ボスのフロアの手前までは何度も行ったことがあるからね。エスコートしますよ、お二方」

「助かる〜」「にゃ〜」


 ユリはクロネの手を取り進んでいく。俺の方にも手を伸ばしてきたが、騎士が両手塞がるのは流石にまずいだろうと断った。そうでなくても恥ずかしいしな。

 俺達はユリのおかげで比較的安全なルートを進む事ができていた。とはいえ下層だ。やっかいなトラップやモンスターも出てくる。


 特にこの辺りの宝箱はスティールミミックが多いらしく、気をつけるようアドバイスされた。ユリもこれに引っかかったんだな……。


 それから印象的だったのは、手のひらサイズのネズミの群体型モンスターだ。何十匹の小さなネズミの群れは、俺の格闘やユリの剣技で倒すのはかなり面倒だ。無駄にダメージを負ったり疲労を蓄積させる前に逃げるのが定石らしい。


 ──────が。

 定石の通じない者もいる。


「ネコノタタリ!!」



    にゃあー♥


         にゃあー♥

  にゃあー♥


       にゃあー♥



 猫幽霊さん達にとっては、ボーナスステージというか、おやつタイムに等しい。普通に相手したら厄介なネズミモンスターを、半透明の猫の炎が嬉々として追い回し平らげていった。南無。


▽『猫霊ちゃんは今日もかわいい』

▽『かわいい』

▽『ファンサ助かる』

▽『ネコとネズミか、相性最高だな』

▽『うちの猫そっくり』

▽『このダンジョン基本かわいいシーンが多いね』

▽『見た目可愛いけど本来は危険なモンスターが多い』


 久しぶりのネコノタタリでリスナーも喜んでいる。猫霊さんのシーンだけの切り抜き作ってくれてる人や、グッズ化とかしてくれる人も居るくらいだからな。俺も鼻が高いよ。


▽『てかカラクロを先導できてるユリちゃん凄くね?』

▽『私もユリ様にエスコートされたい…』

▽『全員強いから安心して見ていられていいな』

▽『仕事終わっていまきた。今日はなんか人数多いね』

▽『残業乙!』

▽『今日はユリちゃん入れて3人だ』

▽『あれ? 4人じゃなくて?』


 え、またか。

 クロネに目配せするが、ふるふると頭を振る。

 やはりカメラに映る範囲に、モンスターやトラップの気配は無さそうだ。


▽『もしかしてマジで幽霊居る?』

▽『猫幽霊ちゃんなら居るけど』

▽『俺も見えた。赤い洗面器を被った女の霊が…』

▽『こわ』

▽『嘘でーすwww』


 なんだ嘘かよ。

 さてはからかってるなお前ら?


「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない……お化けなんていないお化けなんていないお化けなんていない……」


 可哀想に。リスナーが急に怖い話を始めるもんだから、ユリが王子様から幼女にジョブチェンジしちまった。涙目でぎゅっとクロネにしがみついている。猫幽霊さんは平気なのになあ。


 ──って大丈夫か!?

 ユリの王子様的イメージが!


▽『ユリ様お可愛いです』

▽『ホラー苦手なユリ様も素敵…』

▽『ギャップ萌え助かる』

▽『ユリ様の涙飲み干したい』

▼『ユリ様!粗相されるなら私に!』50000円


 あ、ノープロブレムだったわ。ユリのリスナーもちゃんと訓練されているようで良かった。


「にゃるふふふ、ユリは怖がりさんにゃ」

「わううう……」

「よしよしにゃ、怖くない怖くないにゃ♪」

「くぅ〜ん」


 クロネにあやされるユリ。

 肉球なでなでの効果で少しだけ回復したようだ。

 それはいいけどユリのやつ幼女どころか駄犬化してない?

 

▽『ユリクロてぇてぇ』

▽『てぇてぇだな』

▽『クロネちゃんお姉ちゃんみたい』

▽『クロ姉さん』

▽『ユリちゃんがカラスくんの姉でクロネちゃんがユリちゃんの姉ってことはつまり…』

▽『クロネちゃんはカラスくんの母親!?』


「いや、なんでやねん」

「にゃんでやねん〜♪」




 〜ウエノダンジョン下層・ボスのいるフロア〜



 下層ボスの扉……これで三度目だな。

 シブヤダンジョンは物理完全無効のファントムスライム。オチャノミズダンジョンは高速で走り続けるスレイプニル。どちらも厄介なボスだった。


 が、どうやらここのボスはさらに厄介な敵らしい。


「確かクビオリゴーレムだったよな、ここのボス」

「知ってたのか?」

「ああ。ファントムスライム戦の反省を活かして、軽く前情報は調べてきた」


▽『また物騒な名前のボスだな』

▽『どんなやつなの?』

▽『瞬きしたり目線を外したりすると高速で接近してきて首を折ってくる石像なのだ』

▽『なにそれこわ』

▽『初見殺しじゃねえか』

▽『それな』

▽『先人の探索者達の犠牲の上に攻略法が確立されたんだよな』


 ダンジョン攻略において、配信が推奨されている理由のひとつがこれだ。危険なトラップやモンスターによって探索者が命を落としてしまったとき、もし配信をしていなければその危険性や特性は闇に葬り去られてしまうだろう。

 配信をすることで情報がネット上に残り、次の探索者に託すことができる。ダンジョン攻略とは、屍の上に成り立つ偉業なのだ。


「誰かが見続けていればOKだが、ひとりで挑むには危険すぎる。だから、私もここの手前までしか攻略していないんだ」

「それよりもいい方法がある。頼むぞ、クロネ」

「にゃっ、ネコノタタリ!」



    にゃあー!


         にゃあー!

  にゃあー!


       にゃあー!



 呼び出された猫幽霊達は、元気よく扉をすり抜けてボスフロアに入って行った。猫幽霊達にゴーレムを見ててもらうってわけだ。


「じゃあ行きますにゃ、ご主人達!」

「おう!」「ああ!」


 3人で扉を開けてフロアに入ると、果たして成人男性サイズの不気味なゴーレムが猫幽霊さん達に囲まれて停止していた。どうやら作戦はうまく行ったらしい。


「斬鉄剣!!」

「正拳突き&発勁!!」


 俺とユリは同時攻撃で素早くゴーレムを攻撃した。

 ゴーレムはユリの剣で声もなく真っ二つになり、俺の正拳突きで粉々に砕け散った。討伐完了だ。

 俺達は全員でハイタッチをする。



    にゃあー(・ω・)ノ


         にゃあー(・ω・)ノ

  にゃあー(・ω・)ノ


       にゃあー(・ω・)ノ



 猫幽霊さん達も混ざりたそうにしていたのでハイタッチをした。肉球がぷにぷにヒンヤリとして気持ちいい。


▽『(・ω・)ノ』

▽『(・ω・)ノ』

▽『(・ω・)ノ』

▽『かわいい』

▽『ゴーレムオーバーキルで草』

▽『同時攻撃までは要らなかったんじゃ?』

▽『かっこいいから要る』

▽『しかしユリちゃんカラクロと息ピッタリだな』

▽『初めてとは思えん』


「ふふっ。私達、相性いいのかもな?」

「よせって。否定はしないけどさ」


 ユリとの付き合いは長いが、今までパーティーを組んだことはなかった。それでここまで噛み合った動きが出来るのだから、相性がいいというのもあながち間違いではないのだろう。

 正直、悪い気はしない。

 Aランク上位のユリに対して、密かに憧れの感情を抱いていた事もあった。成り行きとはいえ、そんなユリと肩を並べてダンジョンを攻略している事が、今は少し嬉しかった。



  ≪クビオリゴーレムから

   接着ポーションを獲得したにゃ♪

     ネバネバでネズミを捕まえるにゃ!≫



 接着ポーション。千切れた指や腕をくっつける効果のあるポーションで、かなりのレアアイテムだ。ユリとじゃんけんをした結果、俺が貰い受けることになった。


 次はいよいよ深層だ。

 気を引き締めていかないとな。

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