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第28羽 方向音痴、ウエノダンジョンを攻略中! ユリの頼みごと、恋の指輪物語!?

 〜ウエノダンジョン中層〜


「やあカラス、奇遇だな、はは……」


 俺達が声をかけると、ユリは慌てて普段の様子を取り繕う。どうしたんだ、こんなところで?

 ユリはネット評価Aランクの上位だし、ひとりでダンジョン中層に居ること自体はおかしくはない。だけど今日は女の子とデートだったんじゃ……?


 それにさっきのは、なにかを探している様子だった。その顔は疲労を隠しきれていない。


 もしかして、あれからここに来てずっと──?


「ごめんみんな、友達が居るから少しだけ配信止めるわ」


 ダンジョン内で他の探索者が配信に入ってしまうことはよくあることだし、基本はお互い様ということで不問にされる。が、こっちから絡みに行く場合は配信許可を取ることを推奨されている。


▽『おk』

▽『いいよー』

▽『待ってる』

▽『はーい』

▽『相談できてえらい』


 俺はカメラとマイクをオフにして、ユリに話しかける。


「どうしたんだよこんな所で。なんか失くしたのなら、探すの手伝おうか」

「いやっ、ほんとたいしたことじゃなくてな……」

「嘘つけそんな焦燥した顔して。水臭いじゃないか」

「……し、しかしだな……」

「言わないと怖い話するぞ」

「──────ああもうわかった、降参だ! 話す、話すよ!」


 最初は俺達に打ち明けることを躊躇っていたユリだったが、折れてくれたみたいだ。観念したように両手をあげたポーズをすると、やがて吐き出し始めた。




「ファンの子から貰った指環を落としただぁ???」

「う、うむ。配信では内密にな」

「言わねえよ」


 なんでもプレゼントされたアクセサリーを、スティールミミックに盗まれてしまったらしい。それから毎日ウエノダンジョンを探しているが、見つからないんだとか。

 なんでもユリはそのファンの子とオフで会う約束をしているのだが、指環を付けてないと格好がつかないからと約束を先延ばしにしているということだ。

 ユリらしいっちゃユリらしいか。


「すまない、ショボい理由で……」

「そんなことありませんにゃ。好意を抱いている人の前で格好をつけたいと思うのは当然のことですにゃ」

「クロネくんっ! 好きだっ!」

「にゃ!?」


 クロネに抱きつくユリ。おいこら、どさくさに紛れてあんまりベタベタ触るんじゃない。少しクロネが困ってそうだったので引き剥がす。

 しかし指環の落とし物かあ……広くて暗いダンジョンを探すのは大変だっただろうな。


「しゃーない。話聞いちゃったし、一緒に探してやるか」

「いやしかしっ、気持ちは嬉しいがキリがないぞ!?」

「ひとりで探そうとしてた奴がなに言ってんだ。それにユリだって逆の立場なら、俺が止めてもなりふり構わず手伝ってくれただろう?」

「うう……それはそうかもしれないが……」

「心配すんなって、3人寄ればって言うだろ? 探索者3人が集まってるんだ。探し物なんですぐ見つかるさ」

「いやいや。探索者って、そういう意味じゃないと思うぞ……」


「ちょっといいですかにゃ、ご主人にユリ」


 こう着状態だった俺達の間に、スッとクロネが割り込む。


「お二人に提案がありますにゃ」

「提案って?」

「うちらは元々、このウエノダンジョンを攻略する予定でしたにゃ。それをユリに手伝って貰うというのはどうですかにゃ?」

「だけどユリは指環を探さなきゃいけないんじゃないのか? ダンジョン攻略してる暇なんて──」

「覚えてますかにゃ、ご主人。シブヤダンジョンを攻略した時のこと」

「シブヤダンジョンのとき?」


 確か──ダンジョンコアを台座に埋めようとしたら転がって壊しちゃったんだよな。そしたらモンスターがどんどん消滅して、それから猫幽霊さん達がダンジョン内のアイテムを────



 ────あっ────!



「そうか! あのときと同じようにダンジョンを攻略すれば、猫の霊達がアイテムを探してくれるかも!」

「そういうことにゃ♪」

「けど指環ってアイテムじゃないと思うけど、いけるのかな……?」

「そこは猫幽霊のみんなにお願いしてみるにゃ♥」


 うまくいったら万々歳だし、たとえ失敗しても、モンスターとトラップが停止したダンジョンなら安全に探し物もできるだろう。

 クロネの言う通り、先にダンジョンを攻略してしまうのが効率的に思える。


 それにユリが俺達の攻略を手伝う形なら、余計な負い目を感じさせずに済む。お互いにウィンウィンになるのだから。


「──って、勝手に盛り上がっちゃってたな。ユリ、どうだろうか……?」

「ははっ。やはりカラスもクロネくんも普通じゃないな」

「え? な、なんか変だったか?」

「感心しているんだよ」


 揃って首を傾げる俺とクロネ。

 その様子がおかしかったのか、ユリはクスクスと笑う。


「あのな、ダンジョンクリアなんて大ニュースになるような出来事なんだぞ。オリンピックで金メダルを取るようなものだ。しかも命懸けで。そんなとてつもない事を、できて当然のように言ってのけるなんてね」


 う。

 それは確かに。

 シブヤダンジョンもかなり苦労したもんな。

 それもみんなに助けられながら。

 ……ちょっと大口を叩き過ぎたて呆れられたか……?


 しかしユリは馬鹿にするでもなく、俺の頭をぽんぽんと撫でる。


「本当に頼もしくなったな、カラス」

「なに言ってんだよ。俺はもともと頼もしかったっての」

「ははっ、そうかもな」


 ようやくユリがいつもの顔になってくれた。

 こいつが元気ないと調子狂うからな。

 ユリは俺とクロネに向かって頭を下げ、手を差し出す。


「──ありがとう、2人とも。こんな私で良ければ、是非ダンジョン攻略に力添えをさせて欲しい」

「期待してるからな、ユリ」

「願ったり叶ったりにゃ♪」


 俺達3人は円陣のように、互いの右手を重ね合わせる。


「あらためてウエノダンジョン、攻略するぞ!」

「にゃっ!」「ああ!」




 ────

 ──





「──というわけだ。皆、今日はよろしく頼む!」


 リスナーに向かってキメ顔で挨拶をするユリ。


 一緒にウエノダンジョンを攻略するだけなら、なにも隠す必要はない。ユリもダンジョン配信者ということで、突発コラボという形で配信にお誘いさせて貰った。リスナーの皆を待たせるのも悪いしな。


▽『よろしく〜!』

▽『よろしく!』

▽『友達ってユリちゃんだったのか』

▽『ネット評価Aランクだよね』

▽『うん。女騎士なら国内トップクラス』

▽『華が増えるのは大歓迎だぞ』

▽『斬撃じゃないと通りが悪い敵も居るしパーティーバランスもいいのだ』


 みんな歓迎してくれたみたいで良かった。


 勿論、指環の探し物の事は内緒だ。たまたま友人に出会って、突発コラボのお誘いをしたという流れで説明した。贈り物をしてくれたファンの子を悲しませるわけにはいかないからな。


▽『ユリ様!? なぜこんなところに!?』

▽『本日もご機嫌麗しゅう……』

▽『ユリ様が男の配信に!?』

▽『ちょっと、ユリ様に指一本でも触れたら許さないわよ!?』

▽『カラスくんの配信見た事ないのか?』

▽『もうカップル成立してるからな』

▽『カラクロの間に入る余地ないんだよなあ』

▽『カラスきゅんに悪い虫がつくのだけは阻止』


 ユニコーン達が湧いてしまったか。まあこればっかりはな、配信者も人気商売だ。そういう意見が出るのは仕方ない。


「まあまあ、安心してくれたまえレディ達。私の恋人は可憐な乙女達だけさ。カラスとの関係は、そうだな、血の繋がっていない姉のようなものだと思ってくれ」


 リスナー達にぱちんとウインクをキメるユリ。さっきまでは疲れ切っていたが、今は疲労軽減ポーションを飲んで、爽やかキラキラ王子様オーラが戻っている。なんていうか、プロだ。

 それにしてもだ。ニニを仲裁してくれたときといい、こういう時にユリのコミュ力の高さはかなりありがたい。カミテッドの奴等のときも、もしユリが居たらトラブルにならなかったかもしれないと思ってしまうほどだ。


 そう考えると、姉って表現もあながち間違ってない、のか──?


「ユリお姉ちゃん……」

「どうしたカラス急に!?」

「いやお前が言い出したんだろ!?」


▽『かわいい』

▽『赤面助かる』

▼『カラスくんの赤面からしか得られない栄養がある』300円

▽『もうひとりの人は挨拶しないのか?』

▽『?』

▽『???』

▽『もうひとりって?』

▽『4人目の人居ない?』

▽『3人だろ?』

▽『あれ、3人だったわ』

▽『さてはみんなつかれてるな』


 なんか今日は、変な見間違え多いな。気のせいならいいんだけど、ひょっとして配信がラグってたりすんのかな……?


「ははっ、安心してくれリスナー諸君。私が2人分働いてみせるからね!」


 変な雰囲気になりそうだった場を、ユリがしっかり和ませてくれた。う〜ん、ホント頼りになるなこいつ。……今後も誘ったらコラボしてくれるだろうか……?


「それじゃあ新しくパーティー結成したところで、ウエノダンジョン攻略配信、再開します!!」

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