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クリスマス特別編 ショタカラスとクロネお姉ちゃん

★クロネ視点です★

★季節感と時系列は気にしないでください★

 〜ハラジュクダンジョン〜





 ──それはまさに、聖夜の奇跡と呼ぶに相応しい出来事だったにゃ──




 うちはクロネ。黒猫だにゃ。

 ダンジョンで殺されそうになっていたところをご主人達に助けられ、人間の姿でご奉仕させていただいているにゃ。優しくてかっこいいご主人と一緒にいられて、うちは世界一の幸せ猫だにゃ♥


 ご主人はダンジョン攻略を配信している探索者にゃ。今日はハラジュクダンジョンの攻略に来ていたにゃ。けどご主人は、中層でうっかり"エイジドレインミミック"に襲われてしまったにゃ!

 ミミックは倒したけど、ご主人は呪いを受けてしまったのにゃ。

 

 そしてご主人はいまどうなっているかというと──




「うえぇ……どこここ……くらくて怖いよぉ……っ」


 ご主人は、5歳くらいの見た目と心になってしまったのにゃ。


▽『かわいい』

▼『かわいすぎか』50000円

▽『言ってる場合か!?』

▽『大丈夫なのカラスくん』

▽『ただでさえチビなのに…』

▽『やめるのだ』

▽『精神も幼児っぽくなってるね』

▽『ショタカラスくん最高か』


 湧き立つリスナーの気持ちもわかるにゃ。ちっちゃくなったご主人、可愛いにゃ。可愛すぎるにゃ。艶々の黒髪、あどけないくりくりのお目々。なんていうか、まるで、そう──うちとご主人の子どもみたいだにゃ♥

 普段の凛々しいご主人も好きだけど、こういうのもたまにはありだにゃ。


「よしよし、怖がらなくても大丈夫にゃ」

「え? サンタのお姉ちゃん……?」


 お姉ちゃん……ジーンと来る悪くない響きだにゃ。今日は"クリスマス特別配信"ということで、ミニスカサンタのコスプレをしているにゃ。純真無垢なショタご主人は、うちのことを本物のサンタだと思ってくれてるみたいにゃ。


「うちは通りすがりのサンタですにゃ♪ 迷子のご主人をおうちに連れて帰るように、ご主人のご両親からお願いをされたのにゃ」

「あの、ご主人って……?」


 あっそっか。初対面の相手に"ご主人"呼びされたらびっくりしちゃうにゃね。


「なんでもないにゃ。ボク、うちとはぐれないように手繋いでいこうにゃ♪」

「うん、ありがとうお姉ちゃん」


 きゅんっ♥


▽『かわいい』

▼『おもちゃ買ってあげるからうちにおいで』50000円

▽『いっそ戻らなくても…』

▽『だ、ダメに決まってるだろ!?』


 空中に投影されるコメントに、ご主人は不思議そうに首を傾げる。


「えっと、このひとたちは──?」

「怖がらなくてもいいにゃ、みんなうちの友達にゃ」

「もしかしてサンタの国の妖精さん?」


▽『発想がかわいい』

▽『カラスくん〜妖精さんですよ〜』

▽『で、呪い解く方法あるの?』

▽『さあ』

▽『キスだろ!』

▼『キス一択』3000円


 よしわかったにゃ! うちの口付けでご主人を救うにゃ!

 いや冷静になるにゃ。ここでいきなりキスして怯えさせるわけにはいかないにゃ。

 あとそれは眠ってるお姫様の起こし方だにゃ。


▽『確かこの階層で呪い消しポーションがドロップするはず』

▽『流石』

▽『モンスター狩りの時間じゃあああああ』


「ありがとうにゃ、みんなっ!」


 そんなに複雑そうな呪いじゃなくて良かったにゃ。

 うちはご主人が転ばないように気をつけながら、ダンジョンを進むことにしたにゃ。




 ──────グェエエエエ!!──



▽『言ってる側からなんか出てきた!』

▽『サンタコスゴブリンだ!』

▽『クリスマスだからかな』

▽『そういうのあるの!?』


 赤い帽子のゴブリンが棍棒を持って現れたにゃ。


「うわあっ」

 

 初めてゴブリンを見たショタご主人は、びっくりしてうちの後ろに隠れた。

 あのご主人が──モンスターを──こんなに怖がって──


「お姉ちゃん……」


 小さいお手てでぎゅっとうちの尻尾を握って、上目遣いの涙目で縋るようにうちのことを見てくる!

 んにゃああああああああああ♥♥♥

 かわいいいいいいいいいいいいい♥♥♥

 いかんにゃ、このままではいけない気持ちになってしまうにゃ。


「心配しなくても大丈夫にゃ。ボクのことはサンタのお姉ちゃんが守るにゃ!」

「う、うん……!」

「ネコノタタリ!」




    にゃあー!


         にゃあー!

  にゃあー!


       にゃあー!



 猫幽霊のみんながゴブリンに飛びかかる!にゃ!

 その様子を見ていたご主人は──


「わあ、かわいい……」


 かわいいのはご主人にゃ♥

 ──けど良かったにゃ。幼児化してから不安な顔が多かったけど、猫幽霊のみんなを見て少し表情が柔らかくなったみたいにゃ。



    グギャアアアアア



 ゴブリンは倒れたけど、アイテムドロップは無しだにゃ。うちはぜんぜん構わないけど、これは先が長くなりそうにゃ──



「うぇ〜い派手にやってんじゃん」

「おっエロサンタみっけ〜一緒に遊ぼうぜ〜」


 ……下品な声が聞こえてきて思わず眉をひそめる。

 半裸の人間のオスだにゃ。物陰のところを見ると、半裸の人間のオスとメスが肌色で混ざり合ってるにゃ。


▽『なんだこいつら』

▽『ゴブリンの仲間でしょ』

▽『ダンジョンで乱行パーティーしてんのか?』

▽『なんかラリってね』

▽『そいつが持ってるの違法ドラッグポーションじゃん』

▽『浮かれすぎだろ』


 こんなのに構ってるヒマないにゃ。無視にゃ。

 

「おいシカトすんなよ!!」

「痛っ」


 強引に手首を掴まれ、捻りあげられる。

 ……あー……コレどうやって片付けようかにゃ。力はどうってことないけど、カメラもあるし、前みたいにご主人をひとりにするわけにはいかないし……困ったにゃ。


 うちが頭を悩ませていると、思わぬ所から助けが現れた。


「おっ、お姉ちゃんに手を出すなっ」


 それまで怖くて後ろで震えていたご主人が前に出て、うちを護るように小さな腕をいっぱいに広げていましたにゃ。なけなしの勇気を振り絞ったのにゃ、涙目で、でも大人相手に真っ直ぐに睨みつけていたにゃ。


▽『カラスくん!?』

▽『危ないよ!』


「はぁ? なんだこのガキ……」

「からすきっく!」

「ぐえっ」


 ご主人の前蹴りが半裸男のスネにクリーンヒットして、手が離れたにゃ。


「ボク、逃げるにゃっ」

「う、うんっ」


 うちはご主人を抱えあげて、迷宮の暗がりへと逃げ込んでいった。脇道は特に、トラップが多い。最初のうちこそ背後からぎゃあぎゃあと喚く怒声が追いかけてきたけど、やがて聞こえなくなった。


「……あの怖い人達、追ってこないね」

「たぶん諦めたんだと思うにゃ」


 もう会う事はないしどうでもいいにゃ。

 帰りは別の道にするにゃ。


「こ、怖かったあ……」


 床にへたり込みそうになるご主人を、腕で支える。


「ありがとうにゃ、ボク」

「ありがとう、って?」

「さっき庇ってくれたの、とってもカッコよかったにゃん♪ まるでうちを守る騎士(ナイト)様のようだったにゃ♥」

「そう……かな? えへへ……」


 ご主人はやっぱり、なにも変わってないですにゃ。

 初めて出会ったときもそう。後先考えずに、うちの事を護ってくれた。優しくてかっこいい、うちのヒーローだにゃ。




 それからうち達はダンジョンを探索し、十数匹のモンスターを撃破した。そしてついに、"その時"は訪れる。




  ≪イルミネーションスライムから

   呪い消しポーションを獲得したにゃ♪

     ピカピカ光ってお星様みたいにゃ!≫



 見つけたにゃ、呪い消しポーションにゃ。

 ……名残惜しいけど、小さいご主人とはお別れにゃ。

 

「ボク──最後にプレゼントをあげるにゃ」

「どうしたの、サンタのお姉ちゃん?」

「少しだけ目を閉じて欲しいにゃ」


 素直に目を瞑る小さいご主人。

 うちはポーションを自分の口に含むと、ご主人の唇に自分の唇を重ねた。











「あれ、クロネ?」


 きょとんとした顔の、黒髪の少年。

 大好きなご主人が目を覚ましたにゃ。


「記憶が飛んでる──ひょっとして俺、呪いにやられてたのか──?」

「にゃらはははっ、とっても可愛かったにゃ、ご主人♪」

「えっ──? か、かわいかったって──!?」


▽『うん。可愛かった』

▽『カラスくんかわいすぎた』

▽『最高だった』

▽『また時々、呪われてくれ』


「なに!? どういうこと!? 俺何してたの!?!?」

「にゃるふふふっ、教えてあげないにゃん♥」


 ご主人が後でアーカイブを見て悶絶していたのは言うまでもないにゃ。

 メリークリスマス、ご主人♪

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