49 マティアスside4
ここにきてラオワーダの使者からモアへの接触。俺は絶対に彼女を守ると心に決めた。ノア・クリストフェッル伯爵子息。確かに男の俺から見ても色男だ。情報を得るに難しくない容姿だな。
そんな男がモアの前に姿を見せるなんて許せるはずがない。
誕生祭であいつらの希望であったモアと面会が叶ったようだ。どうやら王太子の方もモアの事が気になっているんだな。二人ともモアの事が忘れられないのだろう。モアは罪作りな女性だと思う。馬鹿な奴等だ。
モアにその気なんて全くないのにな。
やはりノアという奴はモアを諦めていなかった。どれほどモアの事を思っていても絵空事にしか聞こえないな。
モアを連れて他国へ?
お前では無理だな。
俺は嫌がるモアの手を取る奴に思い切り手刀を降ろした。俺の愛するモアを無理やり連れて行こうとする奴は死んでしまえばいい。
だが、モアの前ですると彼女が悲しむ。俺はモアの前ではいい男でいたいんだ。
抱き寄せて額にキスをした時のモアの顔は赤く、恥じらっている様子でこちらまで恥ずかしくなりそうだ。こんな可愛いモアをこれ以上やつに見せるわけにはいかない。
俺は最後にやつに一言言ってやった。
「最後に、良いことを教えてやろう。モア嬢の婚約者は、俺だ」
奴の悔しい顔を見た俺はすっきり爽快な気分だ。アイツは惨めな気分を味わったのだろうな。
国王陛下の誕生祭も終わり、各国の使者達が次々と自国へ帰っていく。ラオワーダ国の使者であるクロティルド王太子殿下とノア・クリストフェッル伯爵子息も同じ。馬車に荷物を積み、乗り込んだ所で俺は声を掛けた。
「殿下、王太后様からの贈り物です。お受け取り下さい」
そう言ってクロティルド王太子殿下とノア・クリストフェッル伯爵子息に小さな箱を渡した。中身はというと、精巧に作られたガラス細工。この国の力を示している。あえて口に出さなくても箱の中身を見ればアイツらは理解するだろう。
「そうそう、もうこの地を踏むことはないだろうから言っておくがモア嬢は王太后をはじめ、エリアス国王陛下からも大事にされている。意味は分かるな?
これ以上モア嬢に近づくな。近づいたら命は無い。お前らが心配しなくてもモア嬢は俺を選んだ。俺がモア嬢を幸せにする。じゃあな」
二人の顔色は悪かったが、そのまま俺は二人を無視するように馬車の扉を閉めてやった。
その後、静かに国に帰って奴は母親の勧める令嬢と結婚したようだ。
俺はというと、学院卒業するまで毎日送迎と昼食を共にし、いつも彼女の側にいた。俺が卒業した後の一年は残念ながら送迎だけになったが。俺は騎士団へ入団し、モアの家から通っていたんだ。
どうしてもモアと離れたくない一心で。本来ならレフト家にモアが住むはずだったのだが、生憎とコルネイユ男爵家に居た方が裕福だし、警備も万全だから仕方がない。
平日は騎士団で仕事をした後、コルネイユ男爵からの領地経営について厳しい指導の下勉強に励む。モアは休日になると伯爵家に行って母の手伝いをする。仕事も勉強もとなると正直辛かったが、モアと一緒に住んでいると思うだけで俺の心は満たされて苦にはならなかった。
その後、俺は本格的にコルネイユ男爵から領地経営を学んで伯爵家を継いだ。騎士として騎士団に生涯身を置いてもよかったのだが、騎士団長ともなれば王族の視察などで各地へ出掛ける事になる。その間にモアを狙うやつに誘拐されるかもしれない。
それに俺はモアの側から少しも離れたくない。
男爵の勧めもあり、俺はさっくりと騎士団を辞めた。モアは不思議がっていたようだが、俺は辞めてモアとの時間が嬉しくて仕方がなかった。
苦労も沢山あったけれど、子供たちはスクスクと成長しているし、新たな特産品のおかげで収益がうなぎ上りとなり、モアや邸の皆にも楽をさせてあげられるようになった。子供を二人も産んだモアは今も変わらず美しい。
「モア、愛しているよ」
きっと生涯俺はそう言い続けるだろう。
【完】
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