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どうやら時戻りをしました。  作者: まるねこ


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「モア、手紙が来ている。どうする?」


 どうするって?私は不思議に思いながらサロンにいた父から手紙を受け取った。隣国に渡ってからの我が家は今までの時間を埋めるかのようになるべく家族一緒で過ごす事になったわ。


フルム兄様も父の補佐をしっかりしてくれているので父の休む日も多くなった。事業も順調みたいで良かった。


 父から受け取った手紙の差出人を見ると、クリストフェッル伯爵家の印が押されている。その印を見て私は驚きを隠せないでいた。父達のいる前で私は手紙を開いた。


……ノア様の文字。懐かしくもあり、嫌な思い出も蘇ってくる。


――モア。元気にしているだろうか?私は君を探し回ったが既にこの国にはいないことを知って愕然とした。三年前に君はこの国で傷付けられ療養を兼ねて隣国へと渡ったと聞いた。

ラオワーダへ戻ってくるのだろうか。君にもう一度会いたい。

君は今何をしているのだろうか?クロティルド王太子殿下も心配しているようだ。返事を待っている。 ノア・クリストフェッル――


「お父様、この手紙……。彼も記憶が戻ったのでしょうか?」

「ううん。この書き方ではわからないな。でも突然手紙を寄越したんだ。時戻りをしていても可笑しくはない。注意しておくのに越したことはないな」


「手紙は、返さなくてもいいですか?」

「流石にそれは失礼に当たる。最低限の挨拶だけは返しておきなさい。そして今後の手紙は無用だと」

「ようやくラオワーダから離れる事が出来たのにしつこいわっ」


 母はプリプリと怒っている。私も同じ気持ちではある。ようやく解放されたと思っていたのに、と。アルフは事情が分からない様子で黙っている。


 因みに今のラオワーダ国の支店でバリバリと働くメリダは支店長補佐まで登り詰めたのだとか。気遣いや機転が利いて事務仕事も出来て素晴らしい働きだと父はいつも褒めている。


大怪我をしたせいで婚姻はまだのようだが、最近熱烈に求婚してくれる人が現れたのだとか。メリダには絶対幸せになってもらいたいと思っている。


……話が逸れたわ。


 私は部屋に戻るとさっそくノア様への手紙の返事を書いた。当たり障りのない挨拶。こちらで幸せに暮らしているので手紙は送らなくていいと。そして父に手紙を送るようにお願いした。


 もうこれで手紙が来ることはないだろうと思っていたけれど、その期待はすぐに裏切られる事になった。


なんと一週間に一度は手紙が送られてくるのだ。内容は何故か日記のような感じ。今日は〇〇があったとか王宮ではこれが流行っているだとか。最初はまめに手紙を返さないといけないと思っていたけれど、父や母に相談したら手紙は無視でいいと言われ、返信していない。


最近は読むのも怠くなってきて手紙は束になりつつある。




 そうそう、エリアス国王から『王太后の侍女になっても数年仕えるだけになる。それならば母の希望である文官科で世界を広めた方がいい』と言われたわ。その代わり、学院に入るまでを王太后の侍女として側にいてやって欲しいと。


私はエリアス国王の話もあり、両親とも話をして十二歳から侍女見習いとして離宮で祖母と暮らすようになったの。もちろん休みの日には家に戻り、家族と過ごす。




 家族はもちろん祖母と暮らす事に喜んでくれたわ。祖母はとても喜んでくれていた。マナーは飛び切り厳しかったけれど、『完璧なマナーで誰にも文句を付けさせない。これは貴族社会で生き抜くための武器なのよ』と言われて私は頑張ったわ。



そして私が十三歳の時にあった出来事。


 前回は我が家が所有する船が沈没し借金を背負った。今回も船を沈没させようとする動きがあったみたい。


父達は念のためとエリアス国王の協力の元、警備を多く配備していた所、沈没させようとしていた一味を捕まえる事ができた。『時戻り』をしてまた一つ大きな出来事を変える事ができたようだ。


 今回のラオワーダが画策していた事はラオワーダ国への重要取引品を乗せた船を沈没させ、その原因を我が家に被せて慰謝料を寄越せと吹っ掛けるつもりだったようだ。


ラオワーダから求める予定だったのはお金だけで私は傷物なので求める予定には入っていなかったのだとか。ラオワーダが我が家の資産に気づいて悔しくなったのかしら?


 私の傷はというと、年月を重ねる毎に傷跡は薄くなってきているけれど、化粧をしても薄らと浮かび上がり分かってしまう。そんな状態なので貴族が出席するお茶会には最低限しか出ていない。出ても令嬢や令息達から何故か遠巻きにされているの。爵位も低いし、跡継ぎではないから旨味はないと思われているのかもしれない。




そうして私は十四歳になった。


 聖ローザンド学院へ入学する年になった。祖母の持病がここ数年悪化しているので不安もある。

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