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 馬車は停車場に止まり、ノア様のエスコートで会場に向かう。馬車内ではずっと話し掛けていたのに外に出ると一言も話さず、私の顔を見ようともしない。


「クリストフェッル家ノア様、モア様ご入場です」


 従者の声と共に私達は会場入りをした。既に会場内にいる貴族達から視線を集めている。痛いほどの視線に俯きそうになるのをグッと我慢していると、ノア様は私のエスコートしている手をさっと離した。


「モア、私は挨拶で忙しい。後は帰ってくれ」

「……は、い」


 私は好奇の視線とノア様の言葉で涙が出そうになるのをグッと堪えていると、周りからクスクスと嘲笑する声が聞こえてきた。


「あの方、ノア様と結婚された令嬢でしょう?可哀そうよね。ドレスを見てごらんなさいよ。ノア様の色が一つも使われていないわ。それにほらっ、ノア様は新妻を置いてケルシャナ夫人に挨拶をしているわよ。今夜のお相手は彼女なのね」

「フフッ。本当ね。ウルダード家の貿易のノウハウが欲しくて結婚したらしいわ。お飾り妻って可哀そうよね。同情しちゃうわ」


令嬢達の声に傷つく自分がいる。私だって結婚したくてしたのではないの。ノア様の後を追いたかったけれど、ノア様はケルシャナ夫人の腰に手を添えて密着するように歩いている。そして事もあろうかファーストダンスを踊り始めた。


……二人とも微笑んでいてとても幸せそうね。


彼に踏みつけられた私の心。居た堪れなくなった私は早々に舞踏会を後にしようと歩き出す。


「モア様、馬車をすぐ出せるように準備してあります。どうぞこちらへ」


 会場を出てすぐに執事が私に声を掛けてきた。私は無言のまま馬車に乗り込む。きっと酷い顔をしていたと思う。貴族であれば表情を変えてはいけないと思うけれど、今の私にはどうでもよく感じる。


このまま修道院へ向かいたい。

消えてしまいたい。


「執事さん、このまま、修道院へ向かっていただけませんか?」

「……モア様。ノア様はなるべくモア様の好きな物を与えて、要望を聞いて欲しいと言われていますが、それは出来ません。ご期待に沿えず申し訳ありません」

「……そうよね、ごめんなさい。言ってみただけ」


私は窓の外の景色を見ながらそう口にした。






 馬車は私の思いとは違ってすぐにクリストフェッル伯爵家へと到着した。すぐに侍女達は私のドレスを脱がせ湯浴みとなった。憂鬱さが私の身体を鈍らせる。


「モア様、アルロア奥様がお呼びです。サロンへどうぞ」


 湯浴みを済ませ、シンプルなワンピースに着替えると侍女が伝えに来た。義母からこんな時間に何の用なのだろう。今日、一人で帰宅した事を責められるのかしら。


不安になりながら私はサロンへと重い足を運んだ。

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