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どうやら時戻りをしました。  作者: まるねこ


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23 モアが死んだ世界での数年後のイェル2

誤字報告ありがとうございます。

ある時、使用人の一人に母の実家と連絡は取れないのかと聞かれたんだ。


その時、初めて母の実家の事を考えた。今まで連絡をくれなかった家。母の死に怒り狂っていた伯爵は僕の事をどう思っているのだろうか。


「そんなに不安なら一度手紙でも書いてみなよ?俺が届けてやるぞ?」

「……いいのかい?」


 僕は不安になりながら初めて手紙を書いた。震える手で書いた手紙。彼は笑いながらポケットに入れて野菜の買い付けに出るときに伯爵家に渡してくれると言っていた。


祖父母は僕の事を嫌っていないのだろうか?


本当に手紙を届けてくれたのだろうか心配や不安で手紙を貰うまでの数日間は眠れなかった。


「イェル!返事を貰ってきたぞ!君からの手紙を届けると俺、沢山駄賃が貰えるからもっと書けよ!」


笑いながら手紙を渡してきた。ドキドキしながら手で封を破るとそこには上品な香りと力強い文字が書かれていた。


――イェル、手紙を有難う。とても心配している。君に一度会って話をしたい。返事をくれると嬉しい ダミアン・ウルダード――


短い手紙だった。


けれど、僕にとってはそれはとても衝撃的で心が温かくなって嬉しさで庭を駆け回りたい気分になった。そこから何度かお祖父様と手紙をやり取りした後、僕の休みの日にこっそりウルダード伯爵家へ行ったんだ。徒歩では少し遠かったけれど、僕はそんな事なんて全く気にならなかった。


「イェル・クリストフェッルです。今日は伯爵にお会いするために来ました」


僕は門番にそう伝えると、門番はこっちへどうぞとすぐに邸に入れてくれた。そして執事が目を真っ赤にして『どうぞこちらへ』とサロンに案内してくれる。


僕は今まで母の家の事を知らなかった、というより教えてもらえなかった。使用人になって初めてウルダード伯爵家の話を聞いた。伯爵家は借金を背負い、クリストフェッル家に母が嫁ぐ代わりに借金を帳消しにしたと使用人たちが言っていた。


サロンを見ると借金で没落しそうな気配は全くないし、むしろクリストフェッル家よりも裕福に見える。


執事が僕の前に出してくれたお菓子とお茶。何年振りかのお茶とお菓子に僕の気持ちがふわふわと浮かれてくるのは仕方がないよね。執事は食べていいよと言ってくれたので伯爵を待つ間、お菓子を口に入れる。


「!!!美味しいっ。こんなに美味しいお菓子、僕、食べたことないや」


 僕は嬉しくてもう一個、もう一個と食べていると、伯爵と夫人、そして息子と思われる人達が入ってきた。伯爵は辛うじて母の葬儀で会ったけれど、夫人は覚えていない。


「君がイェルかな?」


僕はさっと立ち上がっていつもの癖で使用人の礼をした。それに驚いた様子の伯爵達。


「……父上。イェルの置かれた状況が分かりましたね」

「……あぁ、そうだな。あいつらは絶対に許さん!!!」


 伯爵は凄く怒っていて、夫人は泣いていた。それを見た僕は、僕のせいなんじゃないかなって僕が此処に来たことを凄く後悔した。


「……ごめんなさい。僕、伯爵を怒らせてしまった。帰ります」


僕は立ち上がると、伯爵はすぐに制止した。


「あぁ、私が怒っているのは君の事ではない。自己紹介が遅れたね。私がダミアン・ウルダード。君の祖父だ。横にいるのが妻のシーラ、祖母になる。そして隣にいるのがモアの弟アルフだ。君の叔父さんにあたる」

「僕の、叔父さん……?」


祖父母がいるのは知っていたけれど母に弟がいたのは知らなかった。


「僕はイェル・クリストフェッル、八歳です」

「イェルはモアにとても似ているのね……」


祖母はそう言いながら涙を拭っている。そして僕の怪我の事を聞いてきた。


「僕の怪我は五歳の時に、母が、死ぬ前に、傷を付けました」

「なんと言う事だっ。モアが!?何故だ?」


 祖父は驚いた様子。僕は意味が分からなかったから母の言葉を口にするのを少し躊躇っていると、アルフ叔父さんが大丈夫、此処だけの話にするからと言ったので僕は口を開いた。


「僕が生まれる前からずっと眠っていた母はあの日、目覚めて僕に会いたいって言ったんだ。母の部屋に父と行ったあの時、母は僕を抱きしめて耳元で『イェル、母は、いつまでも貴方を大切に思っていますよ。貴方の人生に影が纏わりつきませんように』と言って持っていた短剣で切り付けてきたんだ。


その後すぐに父に『私の家を陥れて私を犯して子供まで産ませて!狂っているのはあなたよ。気持ち悪い。悔しいわよね?せっかくの跡取りを潰されたんだもの!嫌いよ!あんたなんか大っ嫌い!死ねばいいのに!こんな家、潰れてしまえ!呪われろ!』って言って、自分の、首を……」


母の言葉を必死に思い出すと蓋をしていた記憶が揺さぶられる、その光景は絶対忘れたくないのに忘れたい過去。僕はボロボロと涙が出てきた。

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