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第1話 気付いたら神社にいた

 気付いたら神社にいた。さっきまで蒸し暑いアスファルトの上を歩いて大学のキャンパスに向かっていたというのに!死ぬほどうるせえ蝉の鳴き声が急に止まったと思ったら、桜舞う神社の鳥居の下だ。どういうことだってばよ。


「嘘だろ...」


 思わず声をあげてしまったが、あまりにびっくりしすぎて鳥みたいに高い声が出てしまった。今ならソプラノ歌手になれるんじゃねえのかってくらい。


 なんだか見覚えのある神社...というか実家のすぐ近くの神社だった。え、なんで?あ、なるほど。これ夢か。多分歩いてる最中に熱中症かなんかでぶっ倒れて、おそらく夢を見ているのだろう。妙にリアルなのはこれが明晰夢というやつだからだ。俺はこれ以上深く考えるのをやめた。ここが夢であるならば、やる事は一つしかない。そう。パンチラだ。いくらパンチラしまくっても怒られる事はないし、警察に捕まってかつ丼を食べる羽目になることもない。俺は決めたぜ。夢の中で羽ばたくってな。


「よし、やるか」


 また死ぬほど高い声が出たが、興奮とワクワクで声が上ずったのだ。そうに違いねえ。一人納得して、鳥居に続く階段を走って下っていった。うおおおおお、足が動くぜ!春だからか涼しいぜ!涼しすぎてなんだか足がめちゃくちゃスース―するって......え?


「なんで俺スカートはいてるのおおおおおおおおおおおお?!?!?!」


 衝撃のあまり、俺はそのまま実家がある場所に向かってダッシュで駆けていった。

息を切らしながら(といっても神社の階段下りて100mもない)ようやくたどり着いた。なんでというか息苦しいんだ俺。ここ夢だぞ。はっまさか俺の熱中症がリアルだとヤバイとか?もってくれよオラの体。3倍パンチラ拳だ。みたいなくそしょーもねえ事を考えていたが、懐かしい実家をここまでリアルに夢で見るとかなりの感動モノだ。大学で他県に引っ越してから、全然実家に帰ってきてなかったからな。この柿の木とかうわっ。なっつー。


「ワン!!」


「うおっ、イヌスケ!!!お前生き返ったのか!!!」


 目の前でリードをピンと伸ばしながら尻尾を馬鹿見てえにフリフリしてる柴犬を見て、俺の涙腺は崩壊した。イヌスケは俺が大学に合格した後、こたつン中で静かに寿命で死んじまったんだよなあ。まだ元気な頃は庭で飼ってたんだけど。


「うおおおおおおお、よしよしよしよし。ん?首の下がかゆいか?ん?嬉しいか?」


「ヘッヘッヘッヘッ」


 俺はパンチラしまくるという当初の目的も、なぜかスカートをはいてるという事も忘れ、俺はぼろぼろ涙を流しながらイヌスケをなでまくっていた。イヌスケは嬉しそうに腹まで見せる始末だ。


「八夜、あんたなんで泣きながらイヌスケ撫でてるの?」


「か、かあさん。若返った?」


 玄関のドアがガラリと横に開くと、俺の母さんがそこにはいた。しかもなんか若返ってるし。子供の時に見たまんまだな。


「いきなりどうしたの?おだてようったって、お小遣い増やさないからね」


「こんな可愛い一人息子によく言うぜ」


「私は息子なんか産んだ覚えはありません」


「おいおい、それは酷すぎるぜ俺を忘れたのか母さん」


「だってあんたは私の可愛い一人娘だもん」


「....え?」


そういえば俺、声高いし、スカートはいてたよね。俺はイヌスケの腹を撫でるのをやめると、玄関に向かって猛ダッシュする。そして玄関入ってすぐ右にある、壁に埋め込まれたでけえ鏡を見て驚愕する。


「なんだこの鏡に映った『ぼくのかんがえたさいきょうのびしょうじょ』は....」


 そこにいるのはどこにでもいる大学生、犬山田 八夜ではなかった。そこにいるのは男ですらなかった。完全究極最強美少女だ。俺のじいちゃんが作る餅よりモチモチの肌。ぱっちり二重の猫みたいな目。筋が通った綺麗な鼻。思わず鏡にキスしたくなる淡い赤の唇。髪はつやつや黒一色で、前髪を綺麗に切りそろえたロングヘア。ていうか、なんで今まで気付かなかったんだ俺。あ、夢の中だったからか。納得。欲望が夢の中で具現化したのか。俺この子と付き合いてえもん。いや、ちょっと幼すぎるからやっぱなしだわ。そんなことはどうでもいい。今は夢の中でもイヌスケとの再会を喜ぶべきだった。


「イヌスケエエエエエエエエエ!!!!うわあああああああ!!!!」


 俺はさらにイヌスケをなでまわすべく、玄関から外に出ようとした瞬間、盛大につまずいてしまった。手をとっさに地面につく余裕もなく、俺は顔面から地面とぶつかった。ライフで受ける!!ピロロロロロロロロロリン!!!いてえええええええええええええええ。え、いてえ...?夢の中で痛み?......。



夢だとおもったら、夢じゃなかったーーーー!!!

となりのトットr♪


「八夜っ!あんたなにしてんの!」


母さんが慌てて俺の所に駆け寄る。いや、普通に転びました。

両手をついて、なんとか顔をあげる。


「顔こんなに怪我して...。もう、明日中学校の入学式なの分かってる!?あんたは昔からそそっかしくてほんとに...」


え、中学の入学式!?!?!?


俺は続々と迫りくる衝撃で、そのまましばらくオットセイみたいなポーズで停止してしまったのだった。

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