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022:冒険者ギルドに行こう

「さぁ、冒険者ギルドに行くわよ」


 俺はサンと一緒にネラレッドの町にやってきた。


 ナイトウルフを倒したことで森の呪いは解けたらしく、俺たちは無事に森から出てくる事ができたのだ。

 アンジュは綿部を連れて城に戻ったので、今はサンとの二人旅である。


「これが冒険者ギルドか」


 小さな町の中で一番でかい建物だった。

 魔物退治を始めとして様々な依頼が集まる場所であり、同時に冒険者が集う酒場にもなっているらしい。


「そう、ここがネラレッドの冒険者ギルド【ロールベア】よ」


 なんか可愛い名前だな。


「きっとみんな驚くわよ? わくわくするわね!」


 サンは心底たのしそうに言って、手にした小瓶を眺めてニコニコしている。

 採取したナイトウルフの血液だ。


 サンの楽しそうな笑顔につられて、俺も少しワクワクした。


 いつも笑顔でいてくれるサンの存在はありがたい。

 正直に言えば、クラスメイト達にも信用してもらえずに王国から追放された時にはショックがあった。

 これからこの世界でどう過ごすべきかと、暗い気持ちにもなった。

 でもサンの笑顔を見ていると、案外どうにでもなる気がしてきたのだ。


 狩りに行くときも帰ってくるときも、それに料理をするときも、サンはいつだって俺に笑顔を向けてくれる。

 まぁ料理の出来栄えはともかく、いつも楽しそうに作っている姿には好感が持てた。


 サンといるおかげで少し前向きになれた気がする。


「な、なに? クモル、そんなにジロジロ見て……私、ヘンだった?」


「いや、そんなことないよ」


 俺はほとんど無意識的にサンの頭をポンポンと撫でていた。

 それは感謝の想いからなのか、それとも別の感情なのか。


「あ……」


「おっと、嫌だったか?」


「い、イヤじゃない! イヤなわけない……でも、ここじゃ少し恥ずかしいから」


 サンは周囲を見渡してモジモジしていた。

 今は周りに誰もいないが、ギルドの前は大通りになっているから本来なら人目も多い場所だろう。


「ふ、二人きりの時が良い……」


「わかった」


 サンの火照った表情にこっちまで恥ずかしくなる。

 次からは気を付けよう。


「さ、さぁ! 報告にいくわよ!」


 サンは照れ隠しのように勢いよくギルドの扉を開ける。


「サ、サン!? 森から出られたのか!?」


「マジかよ!? 無事だったのか!?」


「サンだ!! サンが帰ってきたぞー!!」


 サンがギルドに入っただけでこの大騒ぎだった。


「うぅ、よっぽど無理だと思ってたのね」


 無事に帰ってきたことを歓迎されて、嬉しいような嬉しくないような。

 そんな微妙な気持ちが顔に出ている。


「これ、依頼に合った森の主……ナイトウルフの血液よ」


 サンがギルドの受付にそれを差し出すと、再びギルドの中が大騒ぎになった。


「ナイトウルフだって!? あれはただの噂話じゃなかったのか……?」


「それじゃSランク級の依頼だぞ!? それをあのサンがやったのか!?」


「あんな近くの森に本当に化け物が住んでたなんて……大きな被害が出てないのが奇跡だ!」


「森の主はただのブラックウルフの巨大個体だと思ってたんだが……良く生きて帰れたな?」


 あっという間にサンの周りに人だかりができてしまった。


 呪われた森なんていう危険な場所に一人で送り込むなど、もしかしたらギルドであまり良い扱いをされていないのかと心配していたのだが、どうやらそんな心配はいらないようだ。

 サンは頑固な所があるから「一人で依頼をやる!」と決めて譲らなかったのかもしれない。

 それだけ冒険者として認めてもらいたかったのだろう。


 そもそもあの笑顔を前にサンの事を嫌いになる人間なんて存在しないだろうしな。


 ギルドにいた連中は「祝いだ!」「飲むぞ!」とここぞとばかりに酒を注文しだしていた。

 酒場と一緒になっているギルド内は大盛り上がりである。


 お祝いムードの主役はサンだ。

 ギルドとは無関係な俺が邪魔をするのもヤボというものだろう。


「さてと……」


 その間に俺も目的をこなす事にする。


「俺も冒険者とやらになってみるか」

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「頭ポンポンはいいぞ……!」

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[気になる点] サンは心底たのしそうに言って、手にした小瓶を眺めてにやける。 にやける(若気る) 男性が女性のようになよなよとして色っぽい様子。 鎌倉・室町時代に男色を売る若衆を呼んだ言葉で、「男…
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