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アストラ先生のアストレア講座3

「慌てるでない。お主のことじゃ、住み慣れた家が、突然目の前に現れて、テンションマックスになったのじゃろう。

もしくは、外から見たらとても入りきらない家がどうしてこんな小さなスペースに入るのかと思ったのではないか?うりうり、どうじゃ?驚いたじゃろ。」


・・・自称神様、大丈夫か?


「自称ではない。本当に神じゃ。」


だからなんで、手紙で会話出来るの?


「コホン、もうこのパターンは一度やったからよいのじゃ。そもそもあいてむぼっくすも空間をちょっといじって、無限に物を保管しておく魔法じゃ。それからしてみたら、家ごときをテントサイズの空間に閉じ込めるなぞ、たやすいことじゃ。せっかくワシの眷属を助けてくれたお主をこの世界に転生させたのじゃから、あっさりぽっくりまた死なれても、送り込んだ甲斐がない」というものじゃからの。だからといって、テンション上げ上げで、すぐに飛び出していってはあかんぞ。まずはこの世界のことを正しく知ることじゃ。そうでないといくら命があっても足らんぞ。

ここまでで、お主が今居る世界はお主が元居た世界の常識がちょびっと通用しない世界であることが分かったじゃろ。剣と魔法のふぁんたじーな世界と一言で言うたが、はっきりいって魔法というものが大きな割合を占めていることをまずは心しておいて欲しい。

その上で、お主の隣に居る今は小さくなってしまったそのオオカミじゃが、本来の姿と力を取り戻すまで、お主に守ってもらいたいのじゃ。お主の居た世界に何の過ちか、飛ばされてしまい、弱体化してしまい、元の姿を維持出来ずに幼体化してなんとか生命を維持しておるのじゃ。それでも元を正せば、最強生物の一角じゃから、そんな感嘆にその辺の魔物に遅れをとることもないのじゃろうが、それでも全盛時とは比べものにもならんほど弱い状態じゃ。ワシの眷属ということを除いても、そやつに何かあるとお主の居る世界のパワーバランスが歪んでしまうのじゃ。

もっとも、異世界のひずみに落ちることなど予想もしなかった故、お主の世界でどのような影響を受けたのかも、どうやったら元に戻るのかも、正直分からんが、お主に命を助けられたことで、お主を主と慕っておる。迷惑でなければ、側にいてやってくれんか。」


・・・なんかこういう不意討ちで良い話をするのはずるいな。視界がちょっと歪んでしまう。


「・・・どうじゃ?感動したか?ええ話したじゃろ?」


・・・うん、何かと台無しだよ。さっきの感動を返してくれ。


「次に魔物について説明するぞい。

お主のいるこのアストレアという世界には、魔物と呼ばれる生物がおる。森に住む獣だけではなく、虫であったり植物であったり、その種類は多種に及んで居る。そして、それらの魔物は時に食用であったり、時には材料であったり、人が生きる上での資源でもあったりする。

したがって、人間の生命を脅かす存在でありながら、また不可欠な存在でもあるということが出来る。これはちょうどお主が生業としていた熊やイノシシを狩る生活と大体一緒だと考えてよかろう。つまり、お主の世界にマタギという職業があるように、この世界にも職業として魔物と戦う職業がある。一般に『冒険者』と呼ばれておるのじゃが、まあ『マタギ』と思ってくれておっていい。ちょっと規模のある町にいけば、このマタギの組合がある。『猟友会』みたいなものだと思ってもらえばいい。この世界にルーツをもたないお主には、必然的にこの冒険者になってもらうしか生きていく術はないのじゃが、幸いにしてお主は生来の冒険者すなわちマタギじゃ。必要な技能はマタギとしての今までの経験がそのまま役にたつぞ。

なお、異世界からの転生者にもれなく付いてくる『火世界言語翻訳くんソフト』じゃが、Ver2.0にアップグレードしたことで、東北弁に対応する他、 お主に分かりやすいように、ラノベ言語ではなく、マタギ言語に変換してくれるようになっておるはずじゃ。冒険者ギルドと言っても分からんじゃろうが、猟友会と言ったほうが分かりやすいじゃろ?いつか自分も交通事故にあって異世界に転生して、チートなスキルをもらって俺TUEEEするんだひゃっはーとかいう都会のラノベ文化の若者は白一色の空間に居た時点で全部理解して、じゃあ、俺転生したら賢者ね、とか言って、今までの説明全部省略出来る上に、ほっといても町に着いたら冒険者ギルドを目指して登録した上で、その日のうちにクエストを受けにいくのじゃが、お主にはこの話しても分からんじゃろ?まあそのうち分かるようになるで心配せんでもええ。」


何を言っているのか、全く分からなかった。


「それで、一番理解しづらいであろう、魔法なんじゃが、魔法って聞いたことはあるか。お主の世界に実在するもんではないが、どんなもんかくらいは、アニメとか映画とかで知っておるじゃろ?

お主の今居る世界では、空想の産物だったその魔法が実在するんじゃ。なぜ存在するのかはこの世界を創ったワシにも分からん。じゃがなんとなくわくわくするじゃろ?理由はそんなもんで十分じゃろ。

この世界の魔法というのは、万物の源と考えられている火、水、風、土の4つの要素と表裏を表す光と闇の併せて6つを根源として存在する。そこからさらに派生して存在する上位の魔法もあるが、元を正せばその6つのどれかをルーツとしている。

で、こう言っておいてなんじゃが、お主は、そのいずれも使えん。


・・・と、まあこれだけだと話が終わってしまうので、ちゃんと説明するが、魔法というのは、元々この世界の大気中にある魔素という成分を、体内に取り込み、制御しながら圧縮し、体外へと放出するときに、先の6つの属性による個性を与えて、その濃縮した魔素を魔力という言葉に置き換えて放出する一連の動作のことをいう。

魔法が上手に使える者というのは、この魔素を取り込む能力、体内で魔力として制御する能力、体外に放出する際に、属性のイメージを鮮明にすることで、効果的にそのエネルギーを変換出来る能力、にそれぞれ優れているかどうかで決まる。

もっとも、この世界のほとんどの人間が生活に必要な程度の魔法は使える。魔導具と呼ばれる魔力によって起動する道具は誰でも使えるし、照明や、コンロに点火するための火興し、うがい手洗いの水を出すくらいの魔法は、イメージも難しくない上に、魔力もほとんど必要としないからの。基本的にここでは、自らの身を守る、つまり攻撃や攻撃の防御の方補うとしての魔力の発動について説明する。

そこで、お主の魔法なんじゃが、元居た世界では、猟銃で獲物を仕留めるのがお主の職業の主なやり方じゃろ?転移するときもその銃を肌身離さず持っておったし。そこで、この世界でお主が冒険者としてやっていくのに、そのスタイルをどういかすかと考えたのじゃが、やはり、前世の経験や生き方を出来るだけ活かせるほうがよいじゃろということでな、お主の銃をちーとばかしこの世界用にいじらせてもらった。

この世界には、火薬とか弾丸とかがないのでな。そのままではお主の銃は使えん。そこで攻撃魔法の話に戻るのじゃが、攻撃魔法の初等中の初等に、フォースバレットとかマジックバレットとか言われているものがあるのじゃ、厨二病全開じゃから、必殺技に名前を付けるみたいなのはどうも生理的に苦手なんじゃが、要は魔力の密度を上げて高速で相手に衝撃を与えることを攻撃の方法とする魔法じゃな。どんな魔術師も一度は必ず通る道というか覚える魔法なのは、結局全ての攻撃魔法は、さっきも言ったが、体内の魔力を制御して放出することにあるからじゃ。基本のき、というやつじゃな。

その後で、魔力に属性を与えるのは、魔物の種類や魔法を使う場所なんかの関係で、属性を持つ魔法が有効なことが多いからじゃ。まあその辺は追々分かってくるじゃろ。

で、お主にはその属性魔法は使えないように制限させてもらった。というのも、そこにおるフェンリルがお主の従魔というだけですでにチート過ぎるのじゃ。パワーバランスが崩れてしまいすぎる。じゃが、属性を持たない攻撃魔法というのは角度を変えてみれば最強の魔法でもあるのじゃぞ。この世界の属性魔法には弱点も当然存在するんじゃ。純粋な魔力だけの攻撃魔法は長所もないが、弱点もない。突き詰めれば何者にも通用する攻撃方法になるかもしれんのじゃ。

そこでお主の銃じゃが、この世界の武器のジャンルでいうと魔術師の杖という扱いじゃ。銃口からマジックバレットが放出されるという扱いにしている。銃口を標的に向け、手元の引き金の部分に、体内の魔力を集中させ、放出のイメージと共に発射する、まあ何事も訓練あるのみじゃ。本格的に強敵と遭遇する前に使えるようになっっておくことじゃ。幼体とは言え、フェンリルは強者じゃが、その体格故、相手によっては太刀打ち出来ないこともあるじゃろ。お主の身を守るにはまだ不安が残る状態だけに、自分自身の身を守る術は早めに身につけておいたほうがよいぞ。お主がどこに飛ばされるのかも、ワシには調整できんし、いきなり強敵の居る場所に飛ばされてたら、ごめんね。」


 可愛くいっても気持ち悪いだけなんだが。


「・・・何か言ったか?」


「いえ、何も」

うん、もう慣れた。


「時には逃げることも重要じゃ。立ちはだかる敵は全部なぎ倒して俺TUEEEとか、面白くもなんともないわ。第一りありてーがなさ過ぎるじゃろ。

まあ、お主の小屋はちょっとばかし、チートに作ってあるから、ドラゴンの攻撃にも耐えられる状態になっておるぞ。見た目草木を寄せ集めただけの簡易テントが中は普通の家で、しかもドラゴンブレスに耐えられるとか、シュールじゃろ?まあその辺は遊び心ということで許してもらえるじゃろ。」


・・・


「最後に、技能のことじゃが、まあスキルとかいう言われ方もするんじゃが、ふぁんたじーにありがちでな、この世界も、人は5才になると、ワシ、アストラが人々に加護という名目でスキルを与えるということになっておるのじゃ。ワシ自身聞いてないんじゃが、永井歳月にわたる統計のデータから教会が、それっぽく民の職業を決めてまわっておるようじゃ。それで困ったことに、このスキルが一生の職業を決めるとかいう話にしてしまって、その後努力をしなくなるんじゃな。しかも高い技能をもつスキルに増長する輩も多くての。トラブルメーカーになりやすいんじゃ。この世界の常識を知らないお主には、生きていく上での必要不可欠な手段として、鑑定という技能を授けてある。分からないことがあったら、その分からないことを頭で疑問として描くがよい。大体のことは突然答えが浮かぶようになる。それが鑑定という名前の技能じゃ。正確には賢者の知恵というんじゃがの。ただ、どこぞのゲームみたいに、魔物の弱点だとか、攻撃力とか生命力を数値化して、あとちょっと、みたいなものはない。かといって、採取してもいないのに、希少な素材をピンポイントで示すようなチートスキルでもない。人生には適度な努力と苦労も必要なんじゃ。お主は綺麗な心の持ち主であり、今まで苦労してきた人生が清らかな性格をはぐくんできた。くれぐれも、チートスキルで無双じゃひゃっはー、などという人生は送らんで欲しい。

また、そのうち、追加で、いろいろこの世界について教えることもあるじゃろ、そのときは、あいてむぼっくすの中に手紙を入れるようにする。」


~ピロリーン ユーガットメール~

突然頭の中に音と声が響いた。


「という合図があったら、あいてむぼっくすを確認して、手紙を取り出すんじゃぞ。

それでは、第二の人生を存分に生きるのじゃ。

とりあえずアストラ先生のアストレア講座は一旦終了じゃ。」


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