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マタギvs初めての山狩り

前の晩、徹夜で歩き続けてようやく町にたどり着いた僕は、町の衛兵に盗賊を引き渡して,宿に着くと、そのまま倒れるように寝てしまい、起きたのは昼もとうに過ぎた頃だった。

夢で何度かうなされたらしい。起きると、ツガルが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。ツガルは鞄の中で寝ていたので、睡眠が十分だったらしい。宿に着くと僕とシラカミが寝てしまうのを、残念そうに見ていたが、それでも起こさないようにお腹がすいても我慢していたのが可愛い。

憂鬱だった。昨晩は襲われて返り討ちにしたことでアドレナリンが大量に分泌されていたのだろう。かろうじて生きていた盗賊まで引きずり回すなど、残虐以外の何物でもない。

何より生まれて初めて人を殺した。

盗賊に襲われたのは2回目だった。けど、宿での出来事で一対一だったし、殺さずに捕らえることができた。

しかし山の中では、手加減の方法も分からない。下手に取り逃がして、自分の命が奪われたら本末転倒というしかない。

考えても考えても他の選択肢はなかったと思うが、それでもこの手で人を殺めたというのは心に傷として残るのだろう。

口の中が苦い。

シラカミも僕が起きたのを確認し、酔ってきて足元で、自分の頭をベッドに腰掛けた僕の膝にすりつける。

寝ている間にうなされていたのがシラカミも気になったようだ。

ツガルとシラカミに、ローリングストーンで買った海鮮の串焼きをあいてむぼっくすから出して与える。

僕は、まだ食欲がない。

すぐに日没にはなりそうだけど、一応猟友会組合事務所まで足を運ぼうと思う。

盗賊を引き渡したその後も知っておかなければならないだろう。自分の気持ちにけちを付けるためにも。

階段を下りていくと僕を見つけた宿の女将さんが、「ようやく起きたかい。あんたが起きるのを待っていたお客さんがいるよ。」

僕は階段を最後まで降りて、玄関に向かおうとすると、そこに衛兵が一人いた。

「あ、シローさんですね。今朝引き渡した盗賊のことで、猟友会組合事務所にお越し願えませんか。」

まあ行くつもりではあったけど、何だろう、面倒事の予感しかしない。

僕は後をついて猟友会事務所に向かう。

今朝はもう一歩も歩けないほどに疲弊しきっていたので、組合のすぐ近くの宿を紹介してもらったので、あっという間に、組合事務所につく。

中に入ると、いつものように組合長の部屋に通される。

「来たか。この街の組合長のトーマスじゃ。此度は手配中の盗賊を捕まえてくれて助かった。」

「今朝の話では盗賊の拠点に盗品や捕らわれているかも知れない女性達などの話をされてましたが、場所は分かりましたか?」

「お前さんに来てもらったのは実はそのことなんじゃがの。」

組合長は眉間に皺を寄せながら、言いにくそうに言葉を続ける。

「衛兵の中にも、嫁を盗賊に殺され、娘を攫われた者がおっての、尋問は別の者がやっておったのだが、見張りの隙をついて、嫁の敵と全員斬り殺してしまったのじゃ。」

うわあ。まあでもそういう立場になったら冷静で居ろというほうが無理なのかもしれないが、僕はまた一つ重い十字架を突きつけられた気分になった。」

「おまえさんの責任じゃないぞ、3人生かして捕らえて来ただけでもすごいことなんじゃぞ。もちろん殺したことについても罪は問われん。もっともその衛兵は、相手は罪人とはいえ無抵抗の状態で斬り殺しているしな。情状に酌量の余地があるとは言え、処罰は免れんじゃろ。もし、これで拠点が分からなくなって助かる命が助からなくなると、徐奴を恨む者が今度は出てくるじゃろうし。」

重い。「で、私がここに呼ばれた理由というのは。」

「おお、そうじゃ。それでじゃの、申し訳ないんじゃが、儂らと一緒にあんたが襲われた場所に同行して、案内してほしいんじゃ。おそらく拠点もあるんじゃないかと思うのじゃ。」

「そういうことでしたら。」

「あと、これは強制ではないのじゃが、そこから町の衛兵と猟友会組合員の何人かで山狩りをすることになると思うのじゃが、お前さんにも参加してもらえんかの。」

「私は先日ひよこ組を卒業したばかりの雀組ですよ?」

出来れば断りたい。

「いやいや、お前さん一人で8人の盗賊を返り討ちにしとるじゃないか。雀組じゃっというのがむしろ信じられんわい。」

「それは細い道に誘い込んで上から岩を落としてつぶしただけで、別に実力ではないので。」

すると、組合長室に案内した受付嬢が泣き出す。

「お願いします。お力をお貸しください。私の姉ももしかしたら捕らわれて居るかもしれないのです。」

女性の涙って犯則過ぎる。これでいやだって言える人居るのか。

「とりあえず、襲われた場所までご案内します。その後のことはそのときになってからということで。」

僕にはそう答えるのが精一杯だった。

「うむ、ありがとう。では、明日の朝、門の前に来てくれ。あと、組合員じゃし、野営の準備はしてあるのじゃろ。」

うーん、人前でマタギ小屋を使うのはテント広場のときだけなんだよな。中に入るとか言い出さないかな。つーか、あれもそろそろシラカミのサイズより小さいんだが、どうしたらいいんだろう。怪しまれる要素しかないんだが。

外から見たら普通のテントサイズで、今やシラカミの方が下手したら大きい。もちろん僕とシラカミが入る大きさじゃなくなっているのに、普通に入っていくとどうかんがえても無理がある。

「大丈夫ですけど、僕の野営セットは特殊で僕と従魔しか入れないのと、従魔が入る時はサイズを小さくなるように効果があるので、他の人の野営には責任終えないのはご了承ください。また作った人との約束で、その人の名前は出せないので、詮索しないことをお約束して頂く必要があります。無理なら場所だけ案内して僕たちは帰りますので、今おっしゃってください。」

これだけは譲れない。マタギ小屋で悪目立ちするのは避けたい。

「ふーむ、そんな野営道具聞いたこともないが、大事の前の小事じゃし、構わんぞ。」

では、明日町の門の前で。

僕はそれだけ言って帰ろうとすると、

「まあ待て、盗賊の報奨金じゃが、朝方受け取っておらんじゃろ。確認と手続もあるでな。払い渡しは、この後受付によってやっておいてくれ。」

「分かりました。」

僕は、盗賊捕縛の報奨金を受け取ると無造作に鞄に入れる,振りをしてアイテムボックスに入れた。もうちょっとやそっとの金額で驚かなくなってしまっている。

この世界に来て、まだ3ヶ月にもなってないのに、日本でのマタギの年収で15年分くらいは稼いでしまっている。


翌朝

僕は町の門の前に行く。シラカミには昨日のうちに、「一応確認するけど、シラカミって小さくなれたりしない?」って聞いたら,答えの代わりに以前の秋田犬サイズになった。

これならまだ、マタギ小屋に入っても、それほど大きな違和感はないかな。

「じゃあ、その姿で今日はよろしく。」シラカミに伝える。ツガルはいつものポジションの僕の左肩に乗っている。

門の前には僕たちが一番乗りだったが、時を置かずに、組合長、衛兵団、組合員のチームが2つ,合計20人前後?集まった。

衛兵団と組合のチーム「白銀の剣士」と「炎の魔術師」だそうだ。

いや、正直背中がむずがゆいんだけど、そんな幼稚園児がヒーロー戦隊ものの、ごっこ遊びをするときの名前を真顔で付けるんだろうか。可哀想な人たちにしか見えないけど。

そして。お約束のように、僕のチーム名を尋ねられて、正直にありませんと答えたところで、またちょっとしたカルチュラルギャップが。そんなの名前いらないでしょうに。

いや、なければならない。今後連携を取るのに、声かけが出来なくなるなど。

うーん、ごめんなさい、もう帰りたいです。

「どうせ,僕にしか声掛けできないんだから、シラカミやツガルも含めたチーム名なんていらないでしょ?」

「いや,こういうのは雰囲気が大事なんだよ。なんかチーム名があると強くて格好いいだろ。」

全く賛同出来ません。

「じゃあ、シローと白い仲間達」で。

あ、咄嗟だったけど、僕今旨いこと言った。

「シローと白だって、きゃはは。はーあ」駄目だため息が止まらない。

園児じゃあるまいし。必殺技に名前を付けるの次くらいに恥ずかしい。

シラカミもツガルも輝くばかりの白というか銀色というかなんだよね。

雪の中だと保護色でどこにいるのか分からなさそう。

こうして「シロー&WHITIES」はここに、当人が強く嫌がっているのにも関わらず誕生した。

埒があかないので、強引に自己紹介っぽいものを打ち切って僕たちは歩き出す。

峠まで歩いて3時間はかかる、道中魔物なんかも出てくることはある。

今日は血の臭いを振りまいてないので大丈夫だとは思うが大所帯だと、それだけ気配が伝わりやすいので、その気配に誘われて魔物がおびき寄せられることもあるらしい。

ただ、盗賊の拠点を攻撃するとなると、それなりに町に居た組合員の中でも実力者だけが集められているらしく、白銀の戦士はチームとして白鳥級でメンバーの3人が白鳥級一人がカラス級なので、平均するとカラスよりは白鳥だということらしい。もう一組はカラス級だが、こちらはチームリーダと前衛が白鳥級で、後衛がカラスということで、平均するとちょうど真ん中になるので、カラス級ということらしい。階級じたいは一つ差があるけど、個人の実力差はほとんどないといっても過言ではない。

僕は雀級なので、完全に見下されている訳だが。

組合員というのは自分の腕に覚えがあるからか、前に出たがる性格が多いので、道中に出てくる弱小の魔物は見つけ次第、これらの二つのチームが先を争うように狩っていく。

そうしているうちに、僕たちは、一昨日に襲われた峠にたどり着いた。

僕は、峠の休憩していた大きな木の根元に立つと、ここで気配を感じた。

ローリングストーンの町の方向とローリングフラワーの町の方向から、4人ずつに分かれて接近してきた。人数が同じなので、ちょっと前から計画的にここで挟み撃ちにする予定だったのだろう。と説明し、

その後、誘い込んだ岩場を案内すると、雨が降らなかったからか、まだ岩に押しつぶされたところでは、岩に血のりがべっとりついていて、思わず目を背けたくなる光景だった。

僕は、その場所を案内しながら、シラカミに、「臭い残ってる?たどって拠点って突き止められる?」とこっそり尋ねてみた。

シラカミは「わふ?わおん」と吠えた。

なんとなく「任せて」って言っているような気がした。

そのとき、ツガルが僕の左肩から、嘴で僕の頬を突き「ほーほー」と鳴いた後、飛び立って空高く舞い上がる。

しばらくすると、どこかに飛び去っていった。

僕は慌てて「ツガル!」と呼んで、後を追いかけようとしたが、シラカミが服の裾を加えて引き留めた。

「何?」と僕が振り返ると、シラカミは加えていた服を話して「わふ」と吠えた。

衛兵達が現場を確認し、盗賊達が何か残していないかなどを調べて回っていた作業が終わったらしく、また岩場や林の中に盗賊の拠点がないかなどの捜索も行ったが、どうやらなかったらしい。

一旦街道まで出て峠の脇の僕が休憩しようとした大きな木の木陰付近を今晩の野営地にするらしい。

僕はマジックバックから取り出すフリをして、マタギ小屋を取り出して設置する。

傍目には小汚いテントにしか見えないはずだ。

夜間の警護だが、僕は雀級の組合員と侮られているので、見張りは免除になった。

強力な魔物に襲われた場合の初手が心許なく、また索敵の能力も低いだろうと思われての判断だった。

そこへツガルが戻ってきたので、僕たちは、小屋に入ってご飯にしようと思ったが、自分たちだけ暖かいご飯を食べることに少しだけ罪悪感を覚えてしまい、やむを得ず小屋の外で調理して、食べることにした。

20人分のスープも一応、王都でアリシア王女に出したスープストックの残りに、追加でイノシシの骨とアルミラージ丸ごとを2,3羽足して,水をつぎ足せば、2時間ほどで完成するだろう。

問題はご飯を作り始めてから2時間も掛かるところだが、衛兵団も他の組合員も堅パンと干し肉とチーズという,判で押したような異世界ファンタジーお約束的野営食だったので、やはり異世界ファンタジーお約束的、空間収納でたくさん物が運べると調理器具ごと野営に持ち込んで,その場で料理を作ってしまったら、周りの人たちにうらやましそうに見られて全員にお裾分けするよ、的展開でみんなの分も食事を提供して感謝されながら夜間の見張り免除の理由が「実力に不安があるから」だったのが「夕飯のお礼」に変更になった。

20人のガテン系おっさんがほとんどの集団だと相当でかい寸胴で作ったはずのスープが完食になってしまい、うどんの元も鳴くなってしまった。挽肉団子など作っている余裕はないので、ぶつ切りにしたアルミラージ肉を大量にスープの具にしたのだが、これも根こそぎストックがなくなってしまった。一人一羽くらい食べてないか?

明日の朝ご飯の分を心配する羽目になったが、明日は明日で。

夜間の見張りも免除されたことなので、ゆっくり休むことにした。

つーか帰っちゃ駄目なのか?







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