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マタギvs王女の病ふぁいなる

どこかの国別対抗大運動会の実行委員長の顔を思い浮かべながら、本作品の悪役の一人をとことんこき下ろしました。

この下卑た言葉遣いゆえに、本書はR15が相当ではないかと、決してエッティな内容故ではありません。ロマンス要素はどこかで盛り込みたいとは思いますが、そういう展開にする予定はございません。悪しからずご了承くださいませ。

王城のとある部屋

王家の人たちが一様にアリシア王女の快癒の喜びに浸っていた同じ刻

机の上にあったものに手当たり次第当たり散らし、臭く脂ぎった髪の毛をかきむしりながら、念仏を唱えているのか、認知症のおじいちゃんなのか分からないうめき声を出していたのは、ブ・・・男爵のトラッシュであった。

「くそくそくそくそ、何だ、何だというのだ。ワシは下賤の者をたたき出しただけだ。あのようなみすぼらしい者が、それも王城に魔物まで連れて立ち入ってよいはずがない。ワシは褒美を与えられてしかるべき行動を採ったというのに、なぜ侯爵様に怒鳴られなければならない。それも廃爵だと?そんなことがあってよかろうはずがない。」

歯槽膿漏の歯茎から血が出そうなくらい歯ぎしりをたてたブタがわめく。

「これというのも、全てあの平民風情が原因だ。このままでは許さない。おおそうだ。やつはホワイトアウルを連れていた。このたびの責任として、奴にはホワイトアウルを差し出させ、王家に献上しよう。さすればワシの覚えもめでたくなり、宰相様もワシを処罰するなどと言うことなど出来まい。」

このブタにちょっとでも人並みの教養があれば、そもそも王命を受けて王城を来訪した人物に仇なせば、王家の敵とみなされることくらい分かるはずだろうが、もはや完全にお門違いの逆ギレで正常な判断ができなくなってしまっていた。

「ワシの出世のチャンスはまだ残っている、ぐふぐふぐふ」


一方その頃、パレスキャッスルの旅人向けのお宿

初日以降は、王城の料理長にストックのスープとアルミラージ数体を渡し、あく抜きしたラビーとホイールウィードも多めに渡して、肉団子は、他の食材でも代用可能であること、たまたまストックの材料がアルミラージなので相性がよいと判断しただけであることを添えて、何かあったら城下町の猟友会事務所にと言伝て、猟友会には宿泊している宿を告げて、町の散策をしていた。あくまで何かあったときに連絡が付かないと逃げたとかややこしい話になっても、という理由でだった。

宰相以下国王まで、初日でめざましい効果が現れたことから、城に滞在するよう求めてきたが、落ち着かないにもほどがあるので、辞退させてもらった。

そして、今日、宿にアリシア王女の近況報告に来たのは、ランスロット様だった。

あ、ブルーフォレストの町では置き去りにしてしまって済みませんでした。

僕は一応、「急ぎの話だったと思うので、先に失礼しましたが、騎士様たちの面子をつぶすつもりはありませんでしたので、宰相様には必要であれば、私からもお口添えさせていただきます 。」とお伝えしたところ、「お気づかい恐縮です。私の言葉だけで、直ちに王都まで、それでも最速で行動して頂きましたこと、感謝に堪えません。アリシア殿下がご快癒なされたこと、そのことで全てが報われます。」

突然、ランスロット様は僕の前で片膝を地に着けた。

「私、近衛騎士団副団長ランスロットは、すでにアリシア様に騎士の誓いを立てた身であり、この命はアリシア様のために捧げております。それでも、この名に誓い、シロー様の身に何かありましたら、どこに居ても駆けつけ、その盾となりますことをここに誓います。」

「せっかくの申出ですが、お気持ちだけにさせていただいて、アリシア様の側にずっと居て上げてください。」

僕はなんとなく、最初にブルーフォレストにランスロットさんが来た時から、主君と臣下以上の感情の発露を感じ取ってたんだなあ。まあ詳細は知らないけど、頑張れ。

身分違いの恋とかろまんちっくじゃん。

「わざわざ、ご丁寧にご報告頂きまして、王女様のご快癒の一助となりましたこと、嬉しく思います。これで、私は王都を失礼させて頂きます。ブルーフォレストを慌ただしく飛び出してしまったため、やり残していたことがありますので。」そう、鉄鍋取りにいかないと。

「いえ、本日こちらに参りましたのは、王命によるものでして、国王様が、此度の王女殿下快癒の最大の功労者であるシロー様に直々にお礼と褒賞を下賜したいと申されまして、ご同行頂くために、参りました。」

「えーと、それ何かの冗談ということでいいですか?」

「何故私が冗談を。」

「じゃあ、・・・断っていいです?」

「国王直々の申し入れを断るのですか?人生苦労事が多いと張り切るタイプですか?」

「最大の功労者って、山菜持ってきただけですよね?結構どこの山にも生えていると思いますよ。時期はあれですが。」

「その山菜が病気に効能を有することを見つけられたのは、シロー様でいらっしゃいますし、そもそも食べられることも知られておりませんでした。是非、私とお城のご同行願います。」

うわーもう面倒事の予感しかしないよ。

「ちなみに、断って王都を出たらどうなります?」

「指名手配ってご存じです。」

何か感謝されている気がしない。なんなら犯罪者扱いされている気しかしない。

「・・・いつですか。」

「明日朝お迎えに上がります。」

「・・・」

なぜ、こうなった。


そして翌日、王城謁見の間

「そなたが、シローか。」国王であるアーサー・ドゥ・アストリアが壇上から声を掛ける。

事前に、跪いて声を掛けられるまで顔を上げないようにとか言われているんで、今の僕はフィギュアスケートの、なんか曲が流れる前のような感じ、あー早く終わってもらえんかな。

「ご尊顔を拝謁し恐悦至極にございます。」

もはや日本語なのかも分からない言葉が翻訳先生によって紡ぎ出される。

「うむ、苦しうない。」

「このたびは我が娘アリシアの病気を治してくれたこと、国王として、また何より娘の父としてお礼を言わせてもらう。大儀であった。」

大儀であったって本当にそんな言葉使うんだ。

「ついてはそなたに褒美を取らす。王女の病気を治したものには、金貨1000枚を褒賞とするというのをもう何年も前から、設定しておってな。何人もの薬師が褒賞に目が眩んで、効果もない薬まがいのものを持ち込んできた。それに引き替え、そなたの薬は本物じゃ。王女の快癒により、そなたに褒美の金貨1000枚を取らす。受けるが良い。」

え?いや、ただの山菜、材料費タダ、あく取りが大変だといったところで、100g1500円くらいよ、普通

なぜに、金貨1000枚とか。もう居心地悪くて仕方ないです。

「・・・・あり」がたくと言いかけたタイミングでそれは起こった。

謁見の間の扉の向こう廊下から騒がしい声が聞こえ、どんどんその声が近づいてくる

バンッ

謁見の間の扉が押し開けられ、銀色に輝く狼、シラカミとその頭上を白く輝くフクロウが飛び込んで来る。

僕は振り返って、二匹が飛び込んで来るのを確認すると、近衛騎士が剣を抜いて前に立ちはだかろうとするその間に割って入り、飛び込んでくるシラカミとツガルを抱き留める。

「お待ちください。」

僕は大声で、騎士達が飛びかかってこようとするのを制止する。

国王の前に魔物が飛び出してきたのであるから、騎士が危難に際し、そのように動くのは理解できない訳ではない。

けど、だからといって大切な仲間を無礼討ちにされるのを黙って見ているつもりはない。


国王謁見のちょっと前に時間は遡る。

ランスロットさんが宿に迎えに来て、荷馬車に乗せられる子牛状態で僕は城に連れて行かれる。どこかのテンプレ表現など維持でも使わない。BGMに何が流れようとそれは見ている人に委ねる。

城に入ると別室に案内される。その服は国王への謁見にはちょっとなどとけちを付けられ、用意されていた礼服に着替えさせられる。着の身着のままで遠方から着て王女の治癒に貢献したんだから、その辺はスルーしてくれるのが人の心というものだと思うのだけど、そういうのが通用しない世界だった。

前世でも来たことのない燕尾服なるものを着せられ、部屋で待機させられるが、シラカミとツガルは、謁見中も部屋で待機するように言われた。

確かに王の居る場所に魔物を連れて行くのはどうかと思うのだが、シラカミもツガルも、僕の姿が見えないと不安になるので、大人しくさせるから、せめて部屋の隅で僕が見えるところでは駄目かと尋ねてみる。

お連れの従魔は責任をもってお預かりするので、と騎士団長が言い張り、この件はそれ以上僕に言えることはなくなった。

シラカミとツガルには、「すぐに戻るから大人しくしててな」と告げて部屋を出た。

ところが、僕が謁見の間で国王の言葉を拝聴している間にその事件は起こった。

シラカミとツガルが居る部屋の前には、二人の騎士が待機していたのだが、その者達を所払いして、部屋の中に侵入してきたブ・・・者が居た。

騎士にとっては上位階級となる男爵、腐っても男爵、腐っている男爵である。

自分の配下を連れて、ここはワシが責任をもって監護に当たると称し、騎士を謁見野間の警護に向かうよう命令すると、さすがにその命令に背くことが出来ず、持ち場を離れることになった。

ブタは騎士の姿が見えなくなると、シラカミとツガルの居る部屋に入り、配下の男にツガルを捕まえるよう命令する。麻袋を構えてじりじりとツガルに詰め寄り、飛びかかろうとする男をツガルが避けると、シラカミは、体勢を崩したその男に背後から体当たりし、部屋の壁にたたきつけた。シラカミはすぐにブタに向き直り、助走を付けて走っていき、ブタの手前で飛び跳ね、前足でその醜く歪んだ顔を足蹴にすると、その勢いでブタは背後のドアにたたき付けられ、その衝撃で開いた扉からシラカミとツガルは飛び出していく。

大好きなご主人の下へとその気配をたどって謁見の間に向かうシラカミとツガルに、謁見の間を警護する騎士が立ちはだかるが、シラカミの目にもとまらぬ早さの動きに翻弄され、手薄になった扉を押し開けて、シラカミとツガルが駆け込む。

そして今に至る。


騎士が剣を抜いて立ちはだかる前で、僕はシラカミとツガルを庇うように両手を広げて、騎士の前に立つ。

ツガルは僕の肩に留まったまま、剣呑な雰囲気の騎士に羽を広げて威嚇する。足元でシラカミは、頭を低くしながら飛びかかろうとする姿勢で剣を抜いて詰め寄ろうとする騎士を威嚇する。

「やめんか!」

張り詰めた空気を切り裂く一声は国王のものだった。

僕はシラカミを右手で制止し、左手でツガルの首を前から押さえ江込み、飛び出さないようにブロックしたまま騎士の動向を見守る。

そのとき謁見の間に顔を真っ赤にして飛び込んできたブタが、シラカミとツガルがすり寄る僕を見つけると、怒鳴り声で、「徐奴を切り捨てろ!」と大声を上げた。

剣を抜いたままその場に居た騎士は立った今、この場の最高権力者である国王に行動を制しされたばかりである。当然のことながら、ブタの言うことを聞くはずもない。

するとブタはさらに怒りを増して、「聞こえんのか、その不敬の平民を切り捨てよと言ったのだ。」とさらに大きな声で命令する。

それを「陛下の御前であるぞ、控えよ。」とビスマルク宰相がブタ男爵を諫めた。

続けて、「何があった」と尋ねる宰相に、ブタ男爵が答えようとするので、宰相は「男爵、お主ではなく、そこのシロー殿の従魔を丁重に預かる身であった騎士に問うておる。」とツガルとシラカミが謁見の間に押し入った後を慌てて追いかけてきた別室の警護担当の騎士に尋ねる。

騎士の一人が消え入りそうな声で「私共が部屋の前で警護をしておりましたところ、トラッシュ男爵様がお見えになって、部屋の警護の任を解くので、謁見の間に戻るように」と告げられまして、その後騒ぎ声が聞こえたと思ったら、そちらの狼とフクロウが飛び出してきましたので、取り押さえようとしましたが、素早く、謁見の間に入り込まれてしまったのです。」とこの騒ぎの責任を取らされるのが分かっているだけに、項垂れながら答える。

その騎士の答弁を受け、宰相は改めて男爵に向き直る。

「そもそも貴殿は何故ここに居る?」 先日目の前のシロー殿への無礼を理由に謹慎を命じたはずだった。

「恐れながら、そのホワイトアウルは希少で、人気も高く、王女様にもきっとお気に入られることと存じます。そこの平民風情には過ぎたる従魔ですので、この私めが取り上げて、国王様に献上しようと思いまして。」下卑た笑いに揉み手をする姿まで浮かぶような露骨な擦り寄りでブタ男爵が答える。

宰相はめまいをこらえ、こめかみに青筋が浮かぶ自分の姿を頭に思い浮かべながら、怒鳴ろうとしたその瞬間「よい、ビスマルク、その先は余が言う。」宰相ビスマルクは国王に発言を遮られ、後ろに控える。

そして、国王から、ブタ男爵に死刑宣告が言い渡される。

「お前が平民風情と貶めた、そちらの者は余の大切な娘アリシアの病気を治してくれた余の恩人だ。その恩人にお礼を述べ、褒賞を与えようとする場に、許可なく乗り込んで国賓である余の恩人を余の目の前で貶すとは一体どういう了見だ。しかも国の威信に賭けて、その安全を約束した恩人の従魔を捕らえて私するとは言語道断」

国王の吐き捨てるような発言に、ブタ男爵は豚から陸に上がった河豚のように呼吸困難に陥り、「こ、この男がアリシア様のご病気を『誰がお前に発言を許した?そればかりか、娘の名前を口にする許可をお前に与えた覚えなどない!」ブタの発言を遮って、国王は「この痴れ者の顔など二度と見たくない。お前は、本日限り、国王の権限において爵位の降格を命ずる、おっと最下級の男爵だったな。従ってお前は廃爵となるが、加えてこの場での狼藉に対し、領置没収の他、金貨5000枚の罰を科す。この者を城の外にたたき出せ。」

こうしてブタ男爵は騎士に両腕を抱えられ、引き摺られるように謁見の間を後にした。

僕はその様子を毒気を抜かれたように見守るが、シラカミとツガルへの危害が止むのか不明のまま、その場で硬直しながら両手を広げて庇っていた。

「シロー殿、楽にしてもらえんか。余はシロー殿にもお主の従魔にも危害を加えるつもりはない。それにしても、フェンリルとホワイトアウルを従えるとは、名の知れた狩猟者なのだな。」

「は、はあ・・・」もう適当に相づち打っとく。

「このたびは余の臣下が迷惑を掛けた、臣下の非礼は余の非礼じゃ、代わりにお詫びする。」

「いえ、私はシラカミとツガルが無事ならそれで」

「で、話の続きじゃが、褒賞は受け取ってもらえまいか。本来なら、さらに此度の非礼にさらに賠償をせねばならぬところじゃが・・・」「あ、いえ、もう十分すぎます。お気づかいなく。ただの山菜ですから。」僕はもう王都に出向いて滞在する日数分の売上保障さえあれば十分だと思って居たんだよね。本当は人命救助だから、お金の話をするのも野暮なんだけど、一応生活していかなければならないからさ、一日代金か2枚で、まあ金貨2枚ももらえたらいいな、なんてね。

それがその500倍とか意味分からないです。なんか一生生活出来る分のお金じゃない?

僕は、居心地の悪い時間がただひたすら過ぎるのを待って、報奨金の受け取りの事務のため宰相様が別途その手続をすると、執務室に呼んだところで、報奨金の半分を国の各地にある孤児院のために使ってもらえないかとお願いした。元々山菜が王女様の病気に効能があるというなら、その発見は私一人の功績じゃない。ブルーフォレストのテレーザ院長の病気を治したい、その前にシスターマリアとの出会いがなければ、この国の孤児院の事情を知ることもなかったし、全ては複雑な人の縁が積み重なって今日この日があるのだから。

私の提案に一瞬驚きながらも、すぐに笑みを浮かべて、「シロー殿は昨今珍しいくらいに無欲なのだな。承知した、私の責任において金貨500枚は各町の孤児院に均等に寄付させてもらおう。」

「ありがとうございます。では、私たちはブルーフォレストの町に戻ります。」

「惜しいな。この街に残って狩猟者を続けてもらえれば心強いのだがな。それにしてもどうやってブルーフォレストの町からこんなにも短時間で王都に来れたのだ、ランスロットに尋ねても騎士の名にかけて交わした約束故に、申し上げられません、お許しくださいとしか言わんのだ。」

「頑張ってとんできました。」

うん、微妙に嘘はついてない。


僕たちは、ここまでの旅が無駄に終わらなかったことに大きな肩の荷を下ろし、パレスキャッスルを背に北へ向かう街道を歩き出した。

すぐにローリングストーンの町だ。


次回から舞台は次の町へ

ローリングストーン(石巻)は海産物がおいしいんでしょうねきっと。

ですが、明日は予定終日つまっているので、更新は週末かなと。

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