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マタギvs王女様の病4

王都の資料室はブルーフォレストのそれよりずっと大きかった。

魔物の資料もずっと分厚かったが、優先順位をこの世界の地理、取り分けブルーフォレストの町に戻るまでの経路を上と考えたことから、まずはこの世界アストレアの中の国の一つらしい、アストラル奥羽国、ん?間違えたアストラル王国について調べることにした。

アストラル王国は想像神アストラを信奉するアストラ宗の敬虔な信徒である王族が我こそはアストラの末裔と言い張って(?)アストラル王国と称するようになった。

王都はパレスキャッスルで、その南には魔族が住んでいるんじゃないかと言われている地があり、その地をThe Kingと呼んでいる。いかにも魔族の王が住んで居そうな名前だ。決してざ・おうと読むのではなく、ざきんぐと読むんだそうだ。広大な山容のその地の山頂付近には何体ものモンスターが出るという。勇者のパーティーは険しいThe Kingを上り詰めて、スノーモンスターと呼ばれる魔物達を討伐し、その先にあるブレスド・アイランドの地にたどり着くことを使命として冒険を続けている。

一方パレスキャッスルの北側には比較的のどか、といっても魔物と隣接する人々の緊迫した生活は避けられないが、王都がThe Kingの圧力の防波堤になっていることから、比較的のどかな町並みが広がっている。

王都を出ると,馬で一時ほどのすぐ近くにローリングストーンという名前の港町がある。

僕はブルーフォレストに帰るまえに、ここには立ち寄っておきたいと考えた。ブルーフォレストの北にも海はあるが、荒れた波と危険極まりないらしい魔物に行く手を阻まれ,近海の魚しか手に入らないらしい。この港町はどうなのだろうか。

そして、そのローリングストーンの町を抜けるとしばらく山間の田舎道が続くことになる、馬が走れる程度には整備されているらしいが、やはり馬の脚への負担は重いらしく、一定の距離ごとに宿場町があり、馬を乗り継いでもブルーフォレストまで3日で駆け抜ければ相当早いほうだという。

ローリングストーンからロックハンドの町までは人気の少ない街道のため、野党も頻出するらしい。途中ロックハンドへの道と分岐し、西にあるオータムフィールドの町に向かう街道がある。交通の要所となるこの分岐にあるローリングフラワーという町はブルーフォレストの町とパレスキャッスルの中間点にあり、規模こそ小さいものの、重要な村である。

ローリングフラワー村をロックハンド方面に向かうと、馬で半日くらいの距離にロックハンドの町がある。ロックハンドの町は、その東にある鉱山とその鉱山の麓の鍛冶の村キルンストーンの生産品をパレスキャッスルに運ぶ重要な拠点である。

ロックハンドの北にブルーフォレストはあるが、途中で山越えがあり、今の季節は特に苦にならないが、冬期は豪雪のため、交通が途絶えることもあり、ブルーフォレストの町は冬期に備えて、食料や燃料を備蓄するのが生活習慣となっている。

と、ここまで読み終わったところで、入り口の方がざわつきだした。

間もなく、レーナさんが僕を呼びに資料室に入ってきて、「すぐに来てください」と言われた。

僕は元の棚に資料を戻そうとしたが、レーナさんは,後で私がしておくので、今はすぐにお願いします、と僕をせき立てる。

その剣幕に驚きながらも資料室を出ると、先ほどの組合長が、すぐに部屋に来いと言う。

僕は2階の組合長室に後を付いて入っていった。

組合長室には、組合長の他、上品な老齢の男性が居た。服装は明らかにどこぞの貴族様という出で立ちだ。

僕が、その人を見ていると、僕の視線に気付いたのか、その人が口を開く。

「初めてお目にかかります。シロー様、私はこの国の宰相を務めるビスマルク・ドゥコンラッド様の執事のセバスチャンと申します。」なんでも剣と魔法の世界では、執事は全員セバスチャンという名前に決まっているらしく、聖剣がエクスカリバーという名前なのと同じくらい、避けようのない運命なのだそうだ。まあ余談だけど。

話が脱線した。

「このたびは、ブタが、あ、いえトラッシュ男爵が大変な無礼を働きまして、申し訳ありませんでした。こちらの推測では、まだ二・三日は王都にお着きにならないかと油断しておりました。早速にお越し頂き、ありがとうございます。それで迎えにいったランスロットはどちらに?」

あ、今ブタとか言ったよ。

まあさておき、

翻訳先生発動!「ご丁重な言葉遣い恐れ入ります。急を要する都のことでしたので、王都よりお出まし頂きました騎士様達には申し訳ないのですが、私共だけの方が早いので、先に参った次第です。ただ、騎士様にも申し上げましたが、手前は病気について何の知識もありません。修道院長様に差し上げた食事が病気の快癒の原因と確認された訳でもありません。」(まあ鑑定先生には薬効あるって出てたけどね。変に期待持たせると責任盗らされる世界みたいだしね。)

「承知しております。それでも今はその奇跡に縋るより他ないのです。シロー様、院長様にお出しした食事をどうかアリシア殿下にも御提供頂けないでしょうか。」

「もちろん構いません。そのために王都に参りましたので。それでは、」


僕はそういって、マジックバッグから出す振りをして収納から深皿に入れた肉団子とパスタ、そして蕨とゼンマイいりのスープを取り出して、机の上に置く。

セバスチャンさんは、僕がいきなり液体の入った容器を造作なく鞄から取り出したのを見て、節句したまま惚けてしまった。

「あの?どうしました。」

・・・

「あ、いや室礼しました。どこからというのもありますが、なぜこぼれずに鞄に入るのかがさっぱり分かりません。あと、申し訳ないのですが、王家の方の口に入るものですので、調理の段階から、監視を付けさせて頂いた状態でご準備頂く必要がありまして、無礼かと存じますが、ご配慮願えないかと。」

「えーとセバスチャン様、私は見ての通り一介の田舎者ですので、敬語はそろそろご遠慮頂けたらと存じます。また、料理の件につきましては、事情はよく理解出来るのですが、私に具体的にどうせよとおっしゃるのか、むしろ率直にお伝え頂く方がよいかと。」

「では手前共と一緒に王城にお越しください。」

セバスチャンさんはそういって立ち上がり、僕を事務所の外へと促す。

外には馬車が待機していて。僕とシラカミとツガルは馬車に乗り込む。御者の人がシラカミが馬車に乗ろうとしたとき、ちょっと嫌な顔をしたので、「済みません,お気に障るようでしたら、僕らは歩いていきますので。」と告げたら、セバスチャンさんに御者の人が睨まれ、そのまま馬車にのって移動することになった。

先ほどは門前払いだった城門は馬車を降りることもなく、そのまま検問を通り過ぎて馬車のまま城の中に入っていった。門をくぐると、そこにはさらに庭があり、馬車はさらに進んで建物の入り口で停車する。

僕が馬車を降りると、そこには高齢だが、歳の割には背筋が伸び、体格もがっしりした男性が出迎えていた。

同行していたセバスチャンさんは、その姿を見て慌てる。

「宰相様、なにもシロー様をお出迎え頂かなくても、連れて参りますのに。お立場もございます故、軽はずみな行動など。」

「何をいうか。わざわざ殿下のために遠方よりご足労頂いたのだ。身分の貴賤を問わず、人として義を尽くすのは武人としても、王家の代理たる宰相としても当然のこと。」

「此度は遠方よりよくぞ参られた。忝い」

「あ、いえ、滅相もございません。それで、先ほど調理済みの食事をセバスチャン様にお渡ししたところ、ここでは受け取れませんと言われましたが、私はどうさせていただけば?」

「なんともうご準備頂いているとは。ただ、ご理解賜りたいのですが、王家の者の口に入るものとなれば、相応の手順がございまして、後はセバスチャンが案内します、私は貴殿が参られたことを早速陛下に伝えて参りますゆえ。ではのちほど」

「シロー様、こちらへどうぞ」ビスマルクさんが言葉を終えて城の中に入っていくと、セバスチャンさんが僕に声を掛け、城の中を先導してくれる。

僕たちが向かったのはお城の調理室で、セバスチャンの後に続いて、僕とシラカミが続いて入ろうとしたとき、横にいた騎士が僕を静止する。

「そこの従魔を入室させる訳にはいかぬ。」

言わんとすることは分かるけど、シラカミとツガルだけ外に置いておく訳にはいかないんだよね。僕の姿が見えなくなると、シラカミが不安になるし、ツガルは落ち着かなくなる。

「おっしゃることは分かりますが、私にとって、シラカミとツガルは大切な仲間で、王都までの旅も一緒二してきたのです。調理中、衛生に問題の生じない距離で待機させますので、同室に居ることはご了承ください。無理だというのであれば、私もこのまま帰りますので。」

そうはっきり言うと、騎士は唸ってしまい、セバスチャンさんの顔を見る。

セバスチャンさんは、私に、「規則ですので、せめて部屋のすぐ外で待機という訳には参りませんか?」と訪ねるが、僕はシラカミが暴れることのほうが心配なので、「私は浄化の魔法が使えます。ご不安でしたら、調理後、浄化魔法を使うのでも構いません、がそれで料理が変質しても責任は負えません。院長様に召し上がっていただいた時はシラカミもツガルも横にいましたが、院長様に健康の問題は起きませんでした。僕としては、シラカミが縛の姿が見えなくなって暴れ出すことを懸念しています。どうしても無理だとおっしゃるのであれば、先ほどの料理だけおいて僕らは帰りますが、それでいかがでしょう?」

これについてはあくまでも譲らないという立場を示す。

騎士がついに爆発し「お前一体何様のつもりでいるのだ。ここをどこだと思っているのだ。」

言わんとすることは分かるけど、別の町に居たのを呼びつけて,あれは駄目、これをしろっていくらなんでも横暴すぎやしないかな。

「お怒りはごもっともです。これ以上ご迷惑をおかけする訳にも参りませんので、これで失礼いたします。」

僕もそろそろこの話なかったことにして欲しいなと思い始める。これ以上ヘイトを集めると、アリシア姫君の容態が良くならないってだけで責任追わされそうなんだよね。

そのときセバスチャンさんが「申し訳ありませんでした。それでは、お供の従魔は、そちらに待機して、シロー様は、こちらでご準備をお願いします。

こちらはこの城の料理長で、シロー様の準備を横で立ち会って拝見させていただきます。騎士はシロー様とシロー様の従魔の間に一人、部屋の入り口に2人待機することになりますが、ご容赦ください。」

「分かりました、私に異存はありません。」

僕は、組合事務所で出した,すでに完成しものと、さらに、収納からスープストックの大鍋を出し、アルミラージの肉を調理用のナイフで挽肉にしていく。塩と胡椒を加えながら捏ね、団子にしたものの表面を軽く焼いて、煮込んだときに煮崩れしないよう下処理しておく。次に、小麦粉に塩と水を加えて捏ねたうどんの元を取りだし、二人分を取り分けて、ひっつみの形にしていく。

その間、料理長という人に取り出したスープストックについて説明する。寸胴で、丸のアルミラージを水から野菜と一緒に一昼夜煮込み、アクをこまめに救って雑味を出来るだけ出さないようにしたあと、一人分を別の鍋に取り分けて、スープの脂を避けて一気に加熱して、スープの油脂分を乳化させることで病人にもくどくなく食べやすく、それでいてコクがあって栄養価の高いスープを作る事の説明をした。具には、主役のラビーとホイールウィードの茎を、事前に木灰で灰汁を抜いて食べられる状態にして用いること、ミンチ西垂水ラージの肉団子と小麦粉を練ってスープで煮込んだひっつみは添え物であることを説明し、毒物などが混入していないことを示すため、調理中の鍋から試食した後、添える具についても全部少しずつ試食した後、残りをスープに入れて完成させ、料理長に渡した。

「試食でも鑑定でも結構ですので、完成品をお渡しいたします。」

セバスチャンさんは、こちらが調理中に疑いを生じさせるような不審な動きをしないことを含め、王女毒殺の危険を気にしている事実二配慮して調理をしたことに感謝してくれた。

料理長も、その手順と自らの毒味と味見で納得し、騎士に殿下のところへ持って行くと告げて部屋を出て行く。

まあここまで来ればもう後は運を天に任せるしかないんだけど。



舞台は中世ヨーロッパ風です。

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