第183話 加速する現状 Ⅲ
エリスの願いに困惑するクライス。
神の方向を見れば神は未だに右腕を掴まれた状態でいる。
違うとすれば渦巻く魔力の奔流だろう。
穴から出てくる存在と神の魔力が反発と融合を繰り返し異常な程の乱気流を生み出していた。
それでも、神は右腕を振りほどけない。
「なんなんだよ・・・・・・・・。」
クライスの正直な感想。
それは仕方ないだろう。
戦場で状況が変わるのは仕方がないことだ。
しかし、ここまでの状況変化はありえないと言える。
もはや、クライスの考えでは動きずらい状況に陥っていた。
「お願い・・・・・・、クライス。」
息も絶え絶えのエリスが細い声でクライスに懇願する。
クライスは考える。
エリスの頼みは聞きたい。
しかし、あの正体の判らない存在と手を組んで戦えるのか?
クライスの懸念事項はそこにある。
穴の中の存在。
見ただけで全身を襲う不快感。
その様な存在と共闘を考えただけで嫌気がさしてくる。
しかし、ここは戦場。
自分勝手な感情は死につながる可能性が高い。
故に、一瞬の葛藤の後にクライスの考えが決まる。
「わかった。エリスはどうする?」
「ありがとう・・・・・・・・・・・。私は大丈夫、ここで見てる。」
「危険じゃないか?」
「心配しないで、障壁ぐらいなら張れる。それに勝ってくれるって信じてるから。」
エリスの激励と共に齎される接吻。
クライスは驚きで眼を見開く。
接吻と言っても軽い口づけ程度。
それでもクライスに活力が漲る。
「絶対に勝ってくる。勝てる気しかしない!!」
「ふふふ、現金ね。・・・・・・・・・、お願い。」
「ああ、任せてくれ。」
クライスはエリスに背を向ける。
目指すは神との決着。
高ぶる感情を抑えることもせずクライスは再び死地へと足を踏み入れる。
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